![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/111493055/rectangle_large_type_2_143266a093c5e2d7ffa9dd95d528a022.png?width=1200)
Photo by
a7_nanago
儚くも
日曜日の昼間。
誰もいない静かな神社の参道に、
一匹の蝉が、仰向けになっていた。
近づくと、もう腕は閉じられていて、
どうにもならない事がわかった。
蝉を手に取り、裏返してみたら、
緑色の体に、透き通った羽を持つ、
ミンミンゼミ。
傷ひとつ無く、美しい。
その姿は、今にも掌から飛び立って
いきそうな程だった。
境内の、黒松が立ち並ぶ木陰。
その根元の、落ち葉が溜まっている場所に、
そっと亡骸を置いた。
蝉はいつも仰向けで死んでいて、地面しか
見る事が出来ないから、亡骸は脚を下にした。
空が見えるように。
近くに蟻が何匹かいたから、
今頃は彼らが群がって、
食料になってしまっているかもしれない。
でもそれが自然の摂理だし、
蟻を責める気持ちはないよ。
『お疲れさま。』
亡骸に声をかけ、その場を後にした。
いいなと思ったら応援しよう!
![昴瑠](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/129908048/profile_7ae9bcf1f0715895dc7dcf176f54dd42.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)