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出会い【スpラ二次創作・カナちゃんとガジェくんシリーズ】

※この小説は、splatoonシリーズの二次創作です。
 オリジナルイカ(オリイカ)とオリジナルシャケ(オリシャケ)が中心のお話です。



目覚めると


あたしが目覚めると、目の前にはシャケがいた。
もちろん全然知らないヒト。
あたしが起きたと知ったそのシャケは、怯えたような顔でビクッとした。
きっと全然知らない場所なのに、その時は驚くくらいあたしは冷静にシャケに聞く。

「あれ、君は誰なの?」
「ボ、ボクは…コウモリ デス。はぃ…」

コウモリ…そういえば、バイトの研修の時にもいたな。
そいつらは、普段は鋼鉄と呼ばれるすごくカチカチな傘から身を守ってるけど、アメフラシのような弾を出す時だけは姿を現す。
その時の姿は普通のシャケと少し違って金髪で、長い髪を前に垂らしてる。
普段驚いたような顔しか見たことないから、こんな怯えたような顔を見るのは新鮮だ。

その子はこれ以上話してもダメそうなので、さっさと他の先輩ベテランバイターさんたちの所へ戻ろうとして周りを見渡すと、今までいたところとは全然違う、全く知らない場所だった。
家の中っぽいけど、壁も床も少しボロボロで、他にはドア1つとキッチンとシャワーくらいしかない。
コウモリが良く使ってる鋼鉄の傘とイカやタコが掲載されてる本が数冊。本当にそれくらいだ。
天井は、あたしが背を伸ばして立ってもギリギリ頭に付かないだろうくらいしかない。
天井…。天井…?
思って気づいた。そういえば、あたしはムニ・エール海洋発電所ってとこにいたはず。天井なんてありえない。
少し思い出した。
あたしが初めてのバイトで、他のヒトたちはベテランだったけど。
WAVE3の時に満潮、というものになってて、オオモノシャケやシャケの兵士たちの数がすごく多くて、それで…。
あたしたちは負けたから、とっくにクマサン商会に戻ってるはず…
周りを見ても、あのシャケとあたし しかいなさそうだし…
どうしてあたしはここにいるの!?

「エ、えとですね…そ、そ、それは……」

あたしの気持ちを分かってくれたのか、そのコウモリはあたしがここにいる理由を話してくれた。
簡単にまとめるとこうだ。

彼は実はあたしたちイカたちともっと仲良くしたかったらしい。
だけど、彼の仕事は戦場でイカたちを倒すこと。
それに、戦場は仲間のシャケやバイターたちの顔が怖くて話す事すらできない。
だけど、あたしだけは彼には優しそうに見えたらしい。
だから、隙をついてあたしを気絶させて、傘も使いながらここまで移動させたらしい。

「…という事デス。はぃ…。べ、べつに…き、き、キズつけようとかは…、
 ぜ、んぜん…、思、って、なかったんです…。はぃ…」

顔とかも見たけど多分ホントだ。
話してる時も下を見ながら話してたけど、その時の気持ちも話したままだとあたしは思った。
だけど要するに、彼のしたことはいわゆる誘拐にはなる。
でも、これは彼と仲良くするチャンスではと思った。
だって、あたしは 友だちからずっと「あんたは一生恋人ができない」とか言われてたんだもん。
まあ仲良かったからそんなには怒らなかったけど。
でも、これでもし彼と恋仲になったら、あの子たちにもギャフンと言わせることができる!
まあ彼が男の子か女の子かは今は分からないけど、今のあたしにはそんなこと どうでもいい。
何か話さないととは思い、あたしは真っ先に思いついた話題をそのまま話した。

「じゃあ、君は本当にイカたちともっと仲良くしたいんだね?」
「はぃ…、そ、そうです…。だけど…、み、な、さん、は…、こわい、かをしてますし、近づい、ても、倒されちゃう、だけ…」
「うーん、じゃあ。あたしみたいに優しいイカたちの町とかあったら、
 住んでみたいと思う?」
「は、はい!…そんな、ステキな、場所が、あったら、住んで、みたい、です…」

彼の顔が少しだけ嬉しそうになり、そしてすぐに元の怯えたような顔になる。
もしかして、そんな場所ないと思ってるのかな?
だけど、あたしの住むバンカラ街は、結構いろんなヒトたちがいる。
イカやタコやクラゲは当然として、それ以外の種族のヒトたちも働いたり住んでたりしてる。
確か…、アタマ屋さんやクツ屋さん、それにザッカ屋のパル子ちゃんもそうだったかな。
それに、ロビーでいつもおいしいフードやドリンクを作ってくれるオバちゃん!
そして、バンカラジオをしてるアイドルグループ「すりみ連合」のマンタローくんもそうだ!
実は、シャケと似た小さな生き物もみたことあるんだよねー。
あのバイターさんたちも仕事場では優しくていいヒトたちだったし。
きっと、彼ひとりがバンカラ街に突然来たって全然驚かないし、むしろ歓迎すると思う。
だから、あたしはバンカラ街のことを話した。

「じゃあさ、バンカラ街に来ない?きっと君ならみんな歓迎してくれるよ!」
「だ、ダイジョブですかね…。ボクは、シャケですよ…?」
「うーん、実は『シャケ』を知ってるヒトは意外といないんだよね。
 君が今更バンカラ街に来たって誰も驚きもしないよ」
「そ、そうで、すかね…?そ、れ、と、ボクは、あなた、を、気絶、させちゃ、ったし…ウッカリ…はぃ…」

うーん、まだまだ不安みたいだ。
彼はまだバイターみたいな怖いヒトたちが自分をボコボコ倒すと思ってるのかな。
バンカラ街だったら全然大丈夫たと思うけどな。
もし、ここにバイターさんたちが入ってきたら、自分はその時点でもボコボコ倒されるとも思ってるかも。

実を言うと、あたし自身は彼に対しては恨みとかは全然持ってなかった。
むしろ、あたしも彼ともっと仲良くしたいとも思ってさえいる。
だけどそういえば、だいぶ時間は経ってると思うけど、他の生物の話し声どころか波の音さえ聞こえてこない。
たぶん、あたしたちの仲間が来れるとしたら、大きな船とか、ヘリコプターぐらいだろう。
だって、窓はあるけど街は全然見えないし。
それに、船がこようがヘリがこようが、このままだと
きっと彼は『シャケで誘拐犯』だとして、本当にボコボコにされちゃう。
どうしようと考えてると、あたしはひとつ思いついたことがあった。
それを彼に話す。

「じゃあこういうのはどうだろう?実は…」

最初彼は驚いてたが、色々と話して納得してくれた。
よし、これならふたりでバンカラ街に行けるかも!


それから、と作戦


それから、彼は色々な事を教えてくれた。

例えば、どうやってこの本を手に入れたのか。
例えば、シャケたちが戦う理由とか。
そして、多分何年か前の雑誌も見てさらにイカ語を勉強したらしい。

あたしはシャケもこうして当たり前に話せるものだと思ってたけど、
どうやらシャケたちは独自の言葉というのがあって、他の言語で話せるものと言えば貿易相手のタコの言葉くらい、ということだった。
イカ語はコウモリくん以外ではほとんどおらず、話すどころか覚えることさえしない者が大多数らしい。

タコが貿易とかするのはあたしにとっては意外だったが、おそらく学校で見たことある
「オクタリアン」とかいうヒトたちなのかも。
…実際に目の前で見たことは一度もないけどね。
何より、シャケたちがどれだけ覚悟して戦っているのかというのがはっきりと分かった。
どれだけの鍛錬や演習を重ねて、自分たちが強くなろうとするのか。
実は欲しいアタマギアがあるから、って理由でバイトをしてたあたしがちっぽけに感じてしまうくらいには。
コウモリくんは「素敵な理由だね」とは言ってくれたけど。
だからと言って、コウモリくんがダサい奴とは全然思わない。
むしろ、イカたちと仲良くしようと努力してる姿は凄いイカしてるとあたしは思ってる。
だからこそ、なんとしてでも『あの作戦』を成功させないと…!

―――

おそらく、たったの3,4日経った。
外には出れなかったけど、濃密な時を過ごした。
コウモリくんも少しスラスラと話せるようになった。

その日はやってきた。
向こうでほんの少しアラームの音がする。
コウモリくんは嫌そうに傘を持ってそちらへ向かおうとする。

「じゃ、いって、くるね……。ご飯は、いつものやつだけど…」
「うん!気を付けて、ね…?」

あたしが挨拶をしようとしたとき、アラームよりも大きな音が聞こえてきた。
あれは…、ヘリコプターの音だ!
あたしはそれを言って、コウモリくんは傘をそこらへんに放り投げた。
そして、一目散にあたしに近づく。
さて、作戦開始だ!

扉が開いた。そこには、バイトの時と変わらない赤いバイト着を着た3人のヒトたちが入ってきた。

「カナくん、無事か!あれ、そこにいるのは…」
「あ、あたし『たち』誘拐されたんです!彼もです!」
「そ、そうで、す…!ボクたち、『ゆーかい』された、んです!!」
「誘拐…?そいつもか?」
「はいそうです!あたしたち誘拐されてました!犯人の顔は覚えてません!」
「そう、です!そうです!ボクも、覚えて、ません!!」
「…はあ」

あたしたちを救助に来たヒトたちは少し疑問を持った顔になりながらも、
あたしもコウモリくんも、ヘリコプターに乗った。
その時、彼の大切にしてた数冊の本やフライパンは持って帰ることにした。
よし、『実は誘拐犯が別にいる作戦』は大成功した!
あとはこのままふたりであそこよりも遠くまで行けたらいいんだけど…。

そして、あたしたちは少しの間病院にいた。
その間にあたしの両親や一緒にバイトをしたヒトたちも来てくれた。
バイトをしたヒトたちは申し訳なさそうに謝ったけど、あたしはそんなの全然気にしなかった。
むしろ、あのコウモリくんが無事にこれた事が嬉しかった。

体調はふたりとも思ったよりも良好だとして、すぐに退院した。
今回の誘拐事件については分からないことがたくさんあったけど、
シャケたちが関わってるかもしれないと、下手に深追いすると大変なことになるかもしれないとして打ち切りになったらしい。
その後、あたしはクマサン商会からお詫びとして10万ゲソのお金と全てのギアを貰った。
あたしは一緒に働いたバイターさんたちや救助してくれたヒトたちにいくらか渡そうとしたが、
みんなとっくにお金は貰ってて大丈夫だよ!カナちゃんで使って!と言われた。

コウモリくんは、両親に説得してバンカラ街から少し離れたあたしの家で一緒に住むことになった。
おどおどしてるけど誠実そうなコウモリくんに、お父さんもお母さんもすぐにOKしてくれた。
やったー!本当に嬉しいな!♪

そして、あたしは二度とバイトをしないと誓った。
勝っても負けてもバンカラマッチで稼いでいくと誓った。

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