BPD「ボーダー」の早期警戒サインは「操作性」 操作的言動に気づく BPDその4
前回までで、BPD:境界性パーソナリティー障害での中核的な行動が「理想化、しがみつき、こき下ろし」の行動化であり、
まず最初に起きる「理想化としがみつき」のフェーズに気が付くサインが「操作性」だと書いてきました。
相手を理想化し、しがみつくための手段が「操作」という行為です。
<操作しようとしてんな―>と感じる要素が「操作性」。
操作、操作的言動、操作性
「操作」とは、
英語で行けばManipulation
より正確に言えば、
「操作」とは「相手を自分が思う通りに動かそうとすること、誘導しようとすること」です。
「操作的言動」ですね。
BPD者の場合、典型的には支援を求めるような行為、素振りです。
良くあるのは不調を訴えること。
「調子が悪い、こういうのは苦手―、だめー」と不調を訴えます。
明確に「助けてほしい」と助けを求めるのではなく、
ただ問題を訴え、言下に相手が助けてくれることを要求します。
人には「惻隠の情」「忍びずの心」がありますから、
困った状況に気づくと、自ずからその困った人を助けようとしてしまいがちです。
そしてこれを誘い、相手を利用しようとするのが「操作」です。
相手がその操作に応じてくれて、言下の欲求を叶えてくれた時、
BPD者はとても感謝し、「あなたしかいない」と称賛します。
そして、また自分の窮状を理解してくれるものがいないことを訴えて依存し、しがみつきます。
相手は感謝され、頼られれば心地よく、
貴方しかいないと言われれば自分が何とかしなければならないと思い込みます(思わされます)。
弱者とそれを救う救済者という関係で、しばらくハネムーン期が続きます。
そして何らかのきっかけでハネムーン期に終わりが来ます。
要求がエスカレートして叶えられなかったり、
タイミングが合わないこともあるでしょう。
すると、期待に応えられなかった時にこき下ろしが始まります。
「貴方しかいないのに、裏切り者!」
そしてBPD者の相手は自分を責め、いっそう依存が深まる。
というBPDの関係性のアップダウン。ジェットコースターのような関係の変化と二人の依存-共依存が深まるサイクルについては前回触れました。
それって「操作」?甘えじゃないの?
「そんなの操作と言わず、ただの甘えと言うんじゃないのか?」
という見方もあろうと思います。
そうなんです。
自然な誰にでもある、誰でも子供の時にはやったような甘えの行動の延長線上に操作という行動はあるんです。
でも、子供も取るような未分化な行動だからこそ、惻隠の情をかき立てやすい。
つまり相手を動かす力を持っています。
そして、大人になれば、そう簡単に他人に対して「操作」を使おうとはしません。
意識的にも無意識にも。
それが大人になっての自制心というものです。
その自制心のリミットが外れてしまうことがBPD者の病理というか、特徴です。
身内には「退行」しやすい
他人に対して、と書きました。
身内には出やすいのです。依存も、甘えも、操作も。
つまり子ども返り、「退行」が可能にする行動です。
そして身内に退行するのはある程度自然なことです。
性行為なんて、裸で抱き合うわけですから、退行していなければ到底できません。
その身内にしかしない「退行」を他人に出してしまうこと、
これが「操作」「操作的言動」です。
そして、身内でもないのに、相手に親身になりやすい人、
そんな人が BPDの依存相手になりやすい人です。
隙が多いというか、スケベ心があるというか。
典型的には、医療者ですね。
この話はまた別の機会に。
操作的言動と男女関係
話を戻します。操作的な行動についてでした
直接助けてほしいと言わないで助けてもらうこと、要求するような行動というのは、やはり程度問題です。
その2人の関係性にもよります。
やはり家族であれば甘えは出やすいし、
恋人関係なのか、夫婦なのか、親子なのかでも甘えや退行の出やすさは違います。
夫婦にしてもハネムーン期であるか、倦怠期であるか、安定した関係であるかによっても違うと思います
BPDにおける操作性というのは、
その2人の間柄での適切な関係性よりもちょっとだけ逸脱した、
なんか妙に近い少しだけ過剰な要求、
といったところから始まります。
「親しき中にも礼儀あり」の、その礼儀を踏みにじるような関わり方というか。
他人同士であれば、すこしだけ要求がましさが過ぎる、なれなれしく、失礼に感じる少しだけ手前の行動。
微妙なのは男女間の恋愛が始まる場面。
他人行儀から一歩踏み込まなければ親密になんてなれませんしね。
ほとんど区別ができないかもしれません。
だから恋人関係がBPD者とその相手の依存-共依存関係になりやすい。
傍目には痴話げんかのこじれたものか、それにしてはおかしいな、くらいに見えたりしていることもあると思います。
対人関係の境界を越えてくるのがBPD者
とまあこのように、
対人関係の距離、人の対人境界を一歩踏み越えてくるような、
そんな操作的な行動がBPD者の「依存、しがみつき」の第一歩であり、
それが「この人はもしかしたらBPD者なのではなかろうか?」と思って警戒をすることが対応の第一歩ということになります
もう一つは、
そもそも自分がそのBPD者のターゲットになりやすい、
依存や操作の対象にされやすい存在であると気づいておくこと、
これもBPD者の操作に気づきやすくなる第一歩かもしれません。
これはまたの機会に
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