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ドラマ「東京タワー」と『徒然草』

 江國香織さんの本が大好きで、よく読んでいた。言葉の選び方や登場人物がとても好きだ。
いちばん好きなの作品は?ときかれたら(きかれないけど)『きらきらひかる』と即答する。

 今クールのドラマに「東京タワー」を見つけて、思いがけず感じる江國香織の気配に
わくわくした。
 これは見ようと決めていた。

 原作の本がある映像作品は、読んだ人が
それぞれに感じ自分のものにしているので
それを背負いながら形にするのは難しいと思う。だから、みんながみんないいと思うものを作ることはできない。
 それはわかっているが、私はドラマの1話を見て、単純に「いい」と思った。セリフも世界観を大切にしている感じがしたし、ゆっくりと時間が流れるような…そんな感じがした。

 ドラマの中のセリフに、
「完璧さがつまらないの。
もっと欠けている部分に人はひかれるものな  のに…」とあった。
 原作に同じものがあるのかは確認していないが、なんだか印象的で江國作品らしいと嬉しかった。

 そして、
「ん⁇ 似たようなこと聞いたことあるぞ?」と思った。

「あー、『徒然草』だ」

『徒然草』に関しては学校の授業でやった冒頭部しか知らないけど、昨日解いた息子の実力テスト(国語)の古典の問題が『徒然草』だった。

「すべて何も皆、ことの整ほいたるは悪しきことなり。し残したるを、さてうち置きたるは、おもしろく、生き延ぶるわざなり。」
          (『徒然草』第82段)
何でも整っているのは好ましくない。し残した部分がある方が面白い…というところだろうか。

言葉は違うけど、言っている意味は同じではないか…?

 これに気づいた時、時代は違えど、人は同じような美的感覚を持って生活しているんだなぁと感動してしまった。いつの時代も人がひかれるものは同じで、いにしえの人の心を揺さぶったものは今も人の心を揺さぶる。だからこそ、古典文学は今も生きているのだ。

 昨日、テストを解かなかったら気づけなかったこと。

 最近、日常に埋もれて本を読むことが少なくなった。読まなくても困ることはないし、普通に生活しているけれど、それはとてももったいないことなのかもしれない。

『東京タワー』を本棚から引っ張り出して
久しぶりに読んでみよう。

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