「ヤバい」がやばい

 娘から動画が送られてきた。
サークルの仲間が娘の誕生日を祝ってくれている動画。仲間が歌い出す「ハッピーバースデー」と大きなケーキに娘の声が響く。
「えー、ヤバーーい」とか
「やばっ」とか。
それしか言わない娘。

「いや、やばいだろ」と思ってしまった。
彼女は大学で日本語学、日本文化を学んでいる。それなのに、友達からのお祝いに「ヤバい」としか出てこないのだ。
驚きとか嬉しさとか感情的に表す言葉は他にあるだろう。それをひっくるめての感想が「ヤバい」なのがやばい。

 以前から、子ども達が多用する「ヤバい」という言葉が気になっていた。
息子の場合は「ヤバい」に「エグい」が加わる。

 「ヤバくね?」と息子がよく言う。
テストの点数が悪くても良くても、天気がよくても悪くても「ヤバくね?」と言う。もっと強い意味を持たせたい時は「マジでヤバくね?」だ。圧倒的に語彙力不足の息子にとって、「やばい」は便利な言葉だ。

 プラスもマイナスも「ヤバい」の一言で済まされる。それは、友達や家族など身近にいる人たちの間でつかわれる手軽な言葉だけれど、言葉というものがないがしろにされている気がして、少し抵抗がある。
 そういう私も、動画の中の娘が連発する「ヤバい」に真っ先に「やばいな…」と思ったし、
さっき友達が持って来てくれた手作りクッキーに「やばいね」と言っしまった。私だって便利につかってしまっている。

 いつからだろう。
こんなに「ヤバい」が浸透するようになったのは。そう考えていると「ヤバいよヤバいよ」を連呼する男性芸人さんが思い浮かんだりして…。

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