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       春

 
 
 窓から見える梅の木に、小さな花が開き始めている。今年の冬は寒い日が続いたせいか、花が咲くのが、ひときわ待ち遠しい。毎朝、窓のカーテンを開けるとき、つぼみから花に、どれくらい広がっているのかを確かめるような気持ちになっている。
 
 時間の感覚も変わってきたようだ。以前は、事前にたてたスケジュールをきっちりこなしていくような生活だったが、今は、そこは融通無碍。
今日、できなければ明日でいい。
急ぐことはない。締め切りというものが、ほとんどないのだから。
 
 別に、ぼーっとしているわけではない。ゆったりとしながら、一瞬一瞬を大切にする感覚だ。追い立てられることがないだけ、今の時間を楽しんでいられる。もちろん、苦しい時間もあるし、つらい瞬間もあるけれど。
 
 自分のこだわりは何だろう。私たち、普通の一人ひとりが、今よりもっと自信をもって生きていける社会にしていきたい、もっと大事にされる社会にしていかなければいけないという気持ちがあって、鈍重ながら勉強しているけれど、もう一つ、身体とのつながりに重要な手がかりがあると思ってきた。
体を動かすことが苦手で、それを避けるように過ごしてきたのだが、中年になり、ちょっとしたきっかけで体を動かしてみたら、とても気持ちがよかった。体を動かすと気持ちがいいんだ、そういうことをはじめて知って、意外にものめり込んでいった。
それ以来、身体のメカニズムを知りたいという気持ちと、その奥深さを感じている。
 
 春を感じることも身体のことだ。その一瞬を感じて生きているからこそ、春の訪れを、より深く感じ、心から楽しむことができるのだとしたら、今にして、やっと深く生きることができるようになったのかと思うのである。
 
 
 

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