#40 〈金地金編〉なぜヒトは金(ゴールド)を選んだのか
自然界には多くの物質が存在しますが、なぜヒトは金(ゴールド)をお金の材料とするようになったのでしょうか?(1)
自然界に存在する物質のうち、常温で気体・液体の物質は目に見えないものが多く、また、所有者が意図せず拡散してしまったりするので、お金の材料として取り扱うことができません。
常温で固体であっても水に溶けてしまう物質もまたお金の材料として不適格です。
お金の材料とするには少なくとも常温で固体であり、さらに滅多なことで溶けない物質であることが最低限の条件となります。
しかし、そのような物質であっても人体に有害な放射性物質のようなものはもちろんお金の材料としては不適格です。
また、昔から使われている鉄や銅、鉛などの金属は腐食するので長期の保存に適しません。
お金の材料である以上、長期にわたり安定的であることが求められます。
この条件に適する物質は現代において貴金属と呼ばれるものに絞られます。
すなわち、前回取り上げたイリジウム、オスミウム、ルテニウム、プラチナ、パラジウム、ロジウム、銀、金(ゴールド)です。
このうち、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、プラチナ、パラジウム、ロジウムは融点が高く、昔の技術では取り扱うことができませんでした。
残るのは銀と金(ゴールド)の2種類だけとなります。
実際、この2種類の物質は宝飾品やコインとして用いられ、古代から珍重されていました。
このうち銀は大気中の硫黄に反応し黒く変色するので、輝きを維持するためには絶えず磨くなどメンテナンスをする必要があります(2)。
もう一方の金(ゴールド)は、特にメンテナンスを必要としません。
金(ゴールド)は、古代・中世においても取り扱うことができた物質で、常に輝きを維持する唯一のものでありました。
だからこそ、ヒトは金(ゴールド)をお金の材料とし、特別な感情を抱くようになったのではないかと考えられるのです。
(1)今回の話は、ジェームズ・リカーズ 『いますぐ金を買いなさい』朝日新聞出版(2016)を参考にしています。
(2)銀貨や銀メダルは磨くと市場価値が著しく下がる。輝きを取り戻すためであっても、絶対にしない方がよい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?