髭で認識していた顔。
ふと、自分が小学生の時の事を思い出しました。
私の父は私が物心ついた時から口髭があった。
それはもう、マリオのようなもっさりとした密度の口髭があって、父の顔を形成するひとつだった。
小学2年生だったある日。
学校から帰った私はリビングで知らないおじさんに遭遇した。
私は(知らない人がいる、、)と思いながらも
「こんにちわ」と会釈しながら挨拶をして台所にいた母の所に行き、
母に「あのおじさん、誰?」と聞いた。
母は一瞬だけきょとんとした表情をした後に
「お父さん!!」と笑った。
私は「え?」となったが、よくよく見るとどうだろう?
確かに父っぽくもある。
でも、何かが違った。
そうだ!口髭が無い!!
あのもっさりマリオの口髭が無い。
そんな母と娘の会話を聞いていた父は項垂れていた。
私が父だと認識出来て無かったのが、ショックだったようだ。(そりゃそうだ)
私はこれは本当にお父さんか?と言う気持ちを隠しながら過ごした。
正直、口髭の無い父親にとても余所余所しい態度をとったうえに、話す時もやや敬語で過ごしていた。
慣れるのに1週間ほどの時間を要した。
子供にとって、親のイメチェンってあまり良くないのかな?
低学年だったし、他人が家にいる感覚になってて正直怖かった気もしてる。
生まれてからずっと見ていたはずの父の顔なんだけど、私の中では父=口髭だったみたいだ。
もしかしたら、少しづつもっさり具合から、うすぅ〜く髭がなくなっていけばそんなに驚かなかったのかも?
兎にも角にも、私は父の顔を認識ちゃんとしてなかったようにも思う。
口髭以外に外出時にはよくサングラスかけてたので、街中で父を探す時はサングラスで髭の男性を探し、たまに間違って父じゃない人に声をかけていた事もあったな〜と思い出したりもした。
母と兄はちゃんと「顔」全体で把握してたけど、父に関しては「髭」で把握してた事に気付いてしまった出来事でした 笑
ごめんね。父。