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「わ」の会コンサートvol.8 Fragen

「わ」の会コンサートvol.8 Fragen

12月15日午後7時~(6時30分プレトーク)
角筈区民ホール

午後4時50分に中大での演習を終え、モノレールの駅へ。高幡不動経由か多摩センター経由かちょっと迷っていたが、予定よりも一本早い多摩センター方面のモノレールに乗れたので、そちらを選択。すると、なんと多摩センターからは特急に乗れた。笹塚で各停に乗り換え、初台に着いたのは6時5分前。悠々と加賀でかき揚げそばを食べることができた。


そして徒歩で角筈区民ホールに移動。この辺りはウォーキングコースでもあるので、迷うこともない。6時25分頃ホールにつくと、かなり客席は埋まっていたので、右サイドの前方の通路側の席を確保。ホワイエを見たら、お金が戻るコインロッカーがあったので,コートとリュックをしまって、身軽に。

今年の「わ」の会は「問い」というテーマ。いろいろと予想していたが、概ねそのとおりだった。というかもの凄く美味しい場面の連続。


1 マイスタージンガー第2幕第3場・第4場
 ニワトコのモノローグからザックスとエーファの対話。クリングゾルでくせ者ぶりを堪能させてくれた友清さんと宮城さん。まずは比較的落ちついた対話から。
2 ワルキューレ第1幕第3場
 このところ、オペラや演奏会に足を運んでも、「いいなぁ」とは思うものの、以前のような「血が逆流して興奮する」ようなエモーショナルな衝動を感じられることがない。歳のせいなのか、この閉塞感にまみれた生活のせいなのか…。惰性で音楽を聴きに行くくらいなら、やめてしまおうかと思ったこともある。
 しかし、決してそうでは無かった。この場が証明してくれた。
 第3場は要するにジークムントの「ヴェルゼ!」の少し前から。まずこの伸ばしでグッと気合いが入る。片寄純也は愛知祝祭でジークムントを歌ったが、力強くワーグナーテノールそのもの。
 そして、ジークリンデを歌った鈴木麻里子。この人のリンデがもう感涙。二期会のパルジファルでは花の乙女を歌っていたのだが、こんなに凄いジークリンデがいた。新国立でワルキューレをやったときに小林厚子がジークリンデを歌って、その素晴らしさに驚いたが(イタオペの人と思ってたから)、この鈴木麻里子もそれ。ともかく声の「色」「味わい」がもうゾクゾクくる。伸ばすときにただまっすぐ伸ばすのではなく、じっくりと溜めてビブラートを架けて伸ばしていく。このつくりがほんとうにいいのだ。久し振りにジークリンデの「ああ。ここで巡り会えたら…」のところで涙腺が崩壊した。そしてジークムントの「冬の嵐は過ぎ去り」。もう夢心地である。この感触。この胸に迫り心躍る感触が欲しかったのだ。ノートゥングを抜くところもピアノ一台とは思えない力強い伴奏でクライマックス。そして幕切れ。本当ならば客席が重低音ストンピングブラボーになるところだが、声はだせない。でも足踏みはした。この場面で気持が完全に入った。
ここで休憩。

3 ジークフリートの第1幕第2場。
 さすらい人とミーメの対話というある意味地味なところ。ミーメの質問にさすらい人が難なく答え、さすらい人の3つめの質問にミーメが答えられない。この場面である。ここでは、さすらい人の大塚博章の朗々とした語りも良かったが、なんといっても、伊藤達人のミーメ。クセのある小人を見事に演じていた。こんな歌い方もできるんだと驚くほど。ともかく伊藤さんは逸材なので、へんな無駄遣いは絶対にやめてほしい。

4 ローエングリン第2幕第2場
 エルザがそよ風の歌を歌っているところに、オルトルートがすり寄ってきて絡む。二重唱なのだが、噛み合わせるのではなく、エルザは綺麗事、オルトルートはドロドロとした啖呵を歌いあげる。途中で「ヴォーダン!フライア!」とゲルマンの神に呼びかけるシーンがド迫力。
 今日はオルトルートを池田香織、エルザを渡邊仁美が歌った。池田さんのオルトルートは、凄まじい。最初出てきたとき、どこか悪いのかと思うような顔色でびっくりしたが、メイクだった( 笑)。

5 ローエングリン第3幕第3場
 「遙かな国に」のあと。ローエングリンが「あと1年はいたかった」と語りかけ、別れを告げる。そこにまたオルトルートが出てきて「ばーか、さっさといけ」と罵る。ここでのローエングリンは伊藤達人。先ほどのミーメとは全く違う歌い方。この歌いわけには驚かされた。そして最後のWehはローエングリンとオルトルート以外の歌手陣が歌い、これでおしまい。

こんな感じで、ともかく「好きなところ」を次々にやってくれたというのが今回のプログラム。そして、また、鈴木麻里子というワーグナー適性のある人を知ることができた。いずれワルキューレ全幕で聴いてみたい。

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