チューリップの話
私には親友がいた。
彼女は毎年私の誕生日には色々なものをくれた。
大変まめなひとであった。
若い頃にもらったもので、大変印象に残っているものがある。
それはチューリップの鉢植えであった。
その頃私はチューリップに凄く凝っていた。
就職したてで、なけなしの給料で沢山球根を買って、実家の庭に植えていた。
その話を彼女にしたら、翌年の誕生日に彼女が、チューリップの鉢植えをプレゼントしてくれた。
彼女はサラリと、「自分で植えたのよ。」と言った。
鉢植えとはいっても、立派な細長いプランターである。
そこには可愛らしく芽を出したチューリップが並んでいた。
もう二十年以上も前の話である。
今になって私は思う。
彼女はわざわざプランターを用意して、そこに土を入れ、球根を選び。
私の誕生日まで丁寧に水をやり育てていたのだと。
ちゃんと芽が出るように心を砕いて。
その思い出だけで、私は強く生きていけるのだ。