
SS【生命維持活動】
太陽は平等に照らしていた。
「あ、少し離脱します。」
そう言って彼は、zoomミーティングから一時的に抜けた。
同僚たちは朗らかに彼に労いの言葉をかけ、会話を続行している。
彼は同僚たちの飛び交う声を背中で聞きながら、やや小走りでその場を後にした。
気持ちが落ち着かない。
血走った眼からは緊張感が感じられ、すれ違う人々は必然的に道を譲る。
彼の道を塞ぎ続けていたら舌打ちされそうだ。
怒鳴られるかもしれない。
そう思わせるほどの青白い顔を貼り付けていた。
そしてその身体を見れば、彼が焦っている原因は皆なんとなく察しがついた。
そうしてすれ違ってきた他人の生温かい目を肌で感じつつ、彼はとうとう
目的の場所に着いた。
肩で息をしながら、大きく息を吸い込み手を広げる。
降りかかる午後の陽差しが、青い空をバックに、その男の姿を浮かび上がらせる。
そこには、腕の片方、首から上が不自然に伸びて、緑色の皮膚をした男が
いた。
このように、
身体の一部分のみが不自然に伸びてしまう現象を『徒長(とちょう)』と
呼び、あるものに触れられる場所を探そうと、必死に伸びようとすることで発生する。
毎度のことだが、我々植物人間には日光が必要である。
おわり
今日のお題:太陽