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書籍紹介 澤田英輔,仲島ひとみ,森大徳編 『中高生のための文章読本』 筑摩書房
前回の投稿でthe Bridge of Reason(理性の橋)というマガジンを作った理由について書きました。今日は書籍の紹介をします。
評論を読むことに慣れる
小説は好きだけど、かたい内容の本は苦手という人がいます。
ビッグブックは気楽に読めるエッセイや、感情移入して入り込める小説のようなテキストとは違いますね。その違いは何でしょうか、ビッグブックの書かれた目的を考えてみましょう。
ビッグブックは12ステップの成り立ちと、実践のための指示が書かれているテキストです。僕もビルの物語には絶望から回復に向かうドラマとしてのカタルシスが感じられ、読んで感動しましたが、そのほかの部分は小難しくてなかなか内容が頭に入りませんでした。
ビルの物語には彼をモデルとして12ステップを伝えるという目的があることに気がついたのは、スポンサーとステップワークに取り組んでからでした。
ノンフィクション、とりわけ評論を読むことに慣れていないといきなりビッグブックを読んでもつらい作業になりがちです。
入門書を馬鹿にしてはいけない
ある時『諸相』スタディのメンバーにこんなことを言われました。
入門書を馬鹿にしてはいけない。でも入門書で満足していてもいけない。
自分が思っているより、自分のできることは少ない事を認めて初めて取り組めるもの、それが入門書なんですね。
前置きが長くなりましたが、今回の紹介書籍はこちらです。
中高生のための文章読本
僕はタイトルが「中高生のための」となっているので書店で買い求めるのは恥ずかしく、ネットで注文しました。(笑)
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「なんだ中高生向きかよ!」という声が聞こえてきそうですが、なかなかどうして読めば味わい深いものです。はじめにこんな言葉が書かれています。
私たちの暮らす世界についての事実や考えを書いた本にも、読書の楽しみは存在します。(中略)これらの「物語」を旅するうちに、私たちはやはりそこに深く潜り込んで、動植物について、人間について、社会のあり方について以前とは違う角度から深く出会い直すことができます。
そして、その経験によって、今いる世界の見え方や感じ方がまるで変わってしまうことすらあるのです。
今いる世界の見え方や感じ方が更新されていくことが評論を読む効果だと主張しています。これはビッグブックを読む時にも当てはまると思います。
知っている言葉でも定義することは難しい
この本の中には難しい言葉、聞きなれない言葉の意味を下段に書き記してあります。これを見てあることに気づきました。
例えば文中にニヒリズムという言葉が出ています。
自分でその言葉を定義しようとすると「なんか世の中を斜めに見ている人の気分」というボヤーとした定義しか出てきません。文中の注釈によると
ニヒリズム
確実かつ価値があるとされるものを無価値として否定する立場。
虚無主義。[英語]nihilism
とあります。辞書を引くことって必要なんですね。
評論と楽しく付き合う4つのコツ
巻末には評論を読むためのコツと簡単なエクササイズが書いてあります。
コツを紹介します。
① 一般的な見方や思い込みの揺さぶりを楽しむ
②逆説的な発想を楽しむ
③見えないものが見える事を楽しむ
④複数の文章の関連を見つけて楽しむ
コツだけ読んでもわからないと思いますがエクササイズと合わせて読み、考えてみるとなるほどと思えるようになります。
入門書で満足していてはいけない
この本にはさらに詳細なブックガイドと読書の手引き、図解ノンフィクションレーベルがついていてここを入口としてさらに読み進められるような案内がついています。そこから興味のある本を読んでみるのもいいと思います。
『諸相』スタディでは12ステップの理解を深めるための書籍が沢山紹介されています。このマガジンは『諸相』スタディの紹介する書籍への橋渡しをするという役割を担いたいと思い作りましたので、この本を入り口に次は難しい本を読むためにはに進むといいでしょう。
参考文献
澤田英輔,仲島ひとみ,森大徳編 (2022) 『中高生のための文章読本』 筑摩書房