
どうやればうまくいくのか
みなさん、こんにちは。
僕は先日、風邪をこじらせてしまい寝込んでしまいました。健康のありがたさが身に染みる今日この頃です。
皆さんは、いかがお過ごしでしょうか。
今年も早いもので残すところあと僅かですね。
さて、BBSGでは長かった第4章が終わり、第5章「どうすればうまくいくか」をディスカッションをしながら進めています。
お知らせ
翻訳を一部改訂したビッグブック日本語版第四版が、2024年11月に出版されました。巻頭に「日本語翻訳第四版への序文」が加えられ、ページ番号が一部変更になっています。翻訳も数十ケ所修正されています。今後BBSGでは、第四版のビッグブックのページ番号、翻訳に準拠して引用し、ミーティングを進めていきます。過去のBBSGだよりについては、順次修正していく予定です。

プログラムはまるのみ
私たちは、これらのステップの途中で立ち止まっては、もっとやさしい楽なやり方がみつかるかもしれないと考えた。だが見つからなかった。最初から恐れずに徹底してやるように、私たちは心からお願いしたい。私たちの中には自分の古い考えにしがみつこうとしている仲間もいたが、完全にその考えを捨てないうちは結果は何も生まれなかった。
「最初から思い切って」から「最初から、恐れずに」と訳文が変更になっていますが、要は「このプログラムを丸呑みできますか?」と問いかけていると解釈してもいいでしょう。「自分の古い考え」とは、プログラムに対して自分の都合の良いところだけを取り入れ、都合の悪いところは無視をして無かったことにする今までの生き方の再現を意味します。完全にその考えを捨てないうちは酒から解放されない、それは結果が証明しているというのです。
転機とは
中途半端ではどこにも行き着けなかった。私たちは転機に立たされていた。私たちはなんの条件も付けずに、神の保護と配慮を求めた。
原文の「complete abandon」について。
今回の翻訳では、「思いきって」から「なんの条件も付けずに」に変更してあります。初版訳は「すべてお任せして」となっていました。
完全な降伏をしてハイヤーパワーに自分の人生を引き継いでもらうのか、破滅へと進むのか2つに1つしかない嫌な選択をここでも迫っています。
自己放棄をする、その時がまさに転機なのです。
自己(self)=本能=意志
参加者から「自己(self)は意志とは違うものか。」という質問を受けました。「自己とは、常に本能を満たそうとして蠢く何か」と答えました。本能の充足に向かう願望の表れとも言えるでしょう。本能は、常に私達を駆動させているのです。
本能の説明は、12&12のステップ4の部分にあります。
創造主は、ある目的のために本能を与えた。本能なくして完全な人間などいない。もしも人間が、自分の安全を守ろうとしなかったり、食物の収穫や住まい造りに努力しなかったら、生き残ることはできなかったろう。もしも子孫を作らなかったら、地球は無人の境地となっていただろう。これらの欲求ー性的な関係、物質的感情的な安定、そして仲間作りの欲求は、本当に必要で正当なものであり、それはまぎれもなく神から与えられたものである。
本能の充足に逆らうプログラム
自助グループ界隈で、一時よく聞いた「自分の機嫌は自分でとる」「自分を大切にできる人が他者も大切にできる」等の言説を考えると、本能を自己意志によったいかに満たすかという営みと、本能を充足させる方向を諦め、ハイヤーパワーに導いてもらう営みとでは、向かう方向に矛盾を感じます。
「自分の機嫌は自分でとる」「自分を大切にできる人が他者も大切にできる」という考え方は、12ステップではないものからの流入によって自助グループ界隈に広まった言説の一つです。
最後に、回復の物語「南部の友」からの引用を紹介して終わります。
降伏をして、ハイヤーパワーに自分の人生を引き継いでもらう決心をシンプルに表現しています。
「祈りが飲酒の問題にどう効くというんだい?」「そうだな」と彼は答える。「多分、これまで君は私と同じように祈ったんだろう。困った時に『神様、こうしてください、ああしてください』と祈った。だが、祈ってもうまくいかなかったり、結局は自分で何とかするしかなかったりすると、『神なんて存在しない』とか『神は自分のために何もしてくれない』と言った。そうだろう」「そうだ」と私は答える。「そういう祈り方じゃないんだ」男は続けた、「酒を飲まないための正直な祈りというものは、こうなんだ」『神さま、ここにいる私は問題をいっぱい抱えています。私は何もかも滅茶苦茶にして、どうにもならなくなりました。何もかもおまかせします。どうぞ、私の困難を取り除いてください。私をあなたのお望みのままにしてください』
タイトルにある「どうすればうまくいくのか」の結論です。
ステップ1でもたらされる絶望の受け入れを前提にした、自己放棄(降伏)が出来ているかどうかで決まるといえます。
ステップのやり方より、知識より必要なのは「自分は本当に神に委ねられるか」と自問できる正直さなのでしょう。
次回はステップ3を取り上げる予定です。
参考文献
AA(2001)『12のステップと12の伝統』AA日本出版局訳 ,AA日本ゼネラルサービスオフィス
AA(2016) 『アルコホーリクス・アノニマス 回復の物語 vol.4』AA日本出版局訳 ,AA日本ゼネラルサービスオフィス
AA(2024) 『アルコホーリクス・アノニマス』AA日本出版局訳 ,AA日本ゼネラルサービスオフィス