宇都宮ビジネスホテル記2024年1月

宇都宮ビジネスホテル記2024年1月

私はその日、特に何をする気もなく、年末の気だるい騒がしさの中にいた。今年も紅白も大晦日特番も見ない。だってテレビがまず、ないんだもの。情報はどこから手に入れるのって。今はスマホが四六時中ニュースを更新し続けている。だから何にも困らない。だけど、とにかく暇だった。テレビじゃ到底癒せないくらいの退屈だった。飢えにも似ている。

午後になるかというくらいに冬の明るい床に寝そべって、何かどうでもいい考え事をしていた。そしてどこかに行こうと思いついた。どうしてもこうしてもなく、ただ思いついた。怠惰な人間というのはいつやる気が起きるかわからない。こうしているうちにもやる気、なくなっちゃうかも。

幸いすぐに旅行先は見つかった。宇都宮のビジネスホテルが5泊で3万円しなかった。朝食もついて破格だし、すぐ払える額だったから今日から泊まることにした。博打で当てていたから今月は100万以上の収入があった。

思い立ったら案外準備は楽しかった。ホテルにはコインランドリーがあったし、獣毛のニットは洗わなくていいから、ギリギリ、リュック一つで準備ができた。もう一つ小さいカバンに貴重品を入れて、その日の午後には電車に乗った。東北本線から鈍行を乗り継いで5時間。もっとだったかもしれない。Googleで経路を検索してそう出たときも、それを長いとは思わなかった。

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