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OM式型取り複製覚え書き その14 夏場の複製作業
夏のワンフェスは7月下旬開催が定着してます。夏のワンフェスにむけての量産作業は、6月から7月にかけての高温多湿という、複製作業に不向きな環境で行うことになります。
今回のテーマはこれをいかにして克服するかというお話です。
1)夏場の複製作業のデメリット
1-1 シリコン注型
・混ぜているうちに硬化が始まってしまう
・気泡が抜けにくく、最悪原型周りに気泡が残る
1-2 キャスト注型
・注型中に硬化が始りがち
・微細気泡が発生しやすい
2)夏場の複製作業 シリコン注型
シリコンゴムの硬化促進要因は、温度と湿度です。ゆえに高温多湿下の夏場だと、あっという間に固まります。
固まりやすさというメリットを通り過ぎて、早く固まりすぎてしまうのが最大の問題点です。
下手するとシリコン計って、硬化剤入れて混ぜ始めた段階ですでに流動性がなくなりドロドロの状態になってしまいます。このような状態のシリコン流した場合、原型まわりに気泡が残ってしまい、気泡由来の丸いバリが付着した複製品が出来てしまいます。
これを避ける方法は、硬化剤を規定の半分にすることです。
規定では4%の硬化剤入れる銘柄なら、2%にする。これだけで、硬化が始まるまでの猶予時間も延び、気泡の抜けも良くなります。ワッカー系など12時間前後で固まるシリコンの場合、硬化剤を半分に減らしても夏場なら8時間程度で固まってくれます。
また硬化剤を半分にすると、シリコンが千切れにくくなり型保ちが良くなるのを経験上実感してます。あえて冬場も硬化剤半分にするという人の話も聞いたことあるくらいです。
なお硬化剤を1/4までに減らすのは、硬化不良のデメリットが出てくると思われますので、お勧めしません。
また古いシリコン使うもなるべく避けること。
古いシリコン(特にプラ缶のもの)は、未開封であっても劣化して流動性が落ちている可能性がかなり高いです。
流動性に難があるシリコンは、原型に直接触れる部分にはなるべく使わず、多少気泡が残っても許容できる、かさ増し部分に使う事。
また、なるべく回転が早い店で購入するのも重要です。
他にも、硬化剤を何回かに分けて入れて、そのつど攪拌する。また、何回かに分けて、シリコン注ぐというのも有効です。
硬化剤を全部一気に注ぐと、攪拌途中で硬化が始まってしまうリスクや、硬化剤がまんべんなく混ざらず硬化不良を起こすリスクがあるので要注意。
3)夏場の複製作業 キャスト注型
3-1)キャストが早く固まる
・漏斗などを用いて一気にキャスト注ぐ
・180秒タイプのキャスト使う
・大きすぎる型はなるべく避ける
・夜間に注型する
硬化が早く始まる対策は、このあたりが主なポイントです。
3-1-1 漏斗を使って一気に注ぐ
キャスト注型時に漏斗をはめて一気に注げば、その分キャストの周りも早くなります。型設計が適切であれば、120秒タイプのキャストでも問題なく抜けます。要は、キャスト攪拌開始後15秒以内に注ぎ終えることです。
注意したいのが、少しずつ慎重にキャスト注ぐやり方です。これだと30秒過ぎたあたりから硬化が始まってしまいます。型が大きい場合は要注意。
3-1-2 180秒タイプを使う
20年くらい前は、180秒タイプのキャストは造形村銘柄ぐらいしかありませんでしたが、現在はウェーブ・里見・ベルグなど普通に入手できるようになりました。
180秒タイプを使えば、その分硬化のスピードが落ちるので、注型に猶予時間が出来ますし、気泡が抜けやすくなります。
ただ180秒タイプだと、その分硬化時間が長く待ち時間が長くなるデメリットがありますが、夏場なら短縮されるので問題ないレベルでしょう。
夏場は180秒タイプを使うのも、一つの解決策です。
3-1-3 冷蔵庫で冷やすのはNG
冷蔵庫にキャスト入れて冷やすのは避けるべきです。
なぜなら、気温差で結露が発生してしまい、その結露(=湿気)が原因でッ微細気泡が発生するという、デメリットが大きいのです。
型を冷蔵庫で冷やすのも、同様のデメリットがありますので推奨しません。
3-1-4 大きすぎる型は避ける
大きすぎる型(=キャストが大量に注ぐ型)は、夏場は可能であれば避けたいところです。大きければ大きいほど、途中で硬化が始まるリスクが高くなります。
特大のパーツがあり、どうしても大きい型を作らなければならないのであれば、なるべくシンプルな配置にするのをお勧めします。180秒タイプを使うのも有りです。
3-1-5 夜間注型
気温が下がる、夜にキャスト注型するのも一つの解決策です。ただ手元が暗いとミスが発生しやすくなるので、作業用のライトを増設しましょう。
3-2 微細気泡対策
微細気泡は、空気中の水分がキャストに溶け込み、硬化時に反応して出来る小さな気泡のことを言います。多湿な夏場だと、特に発生しやすくなります。
残念ながら常圧注型では、微細気泡をゼロにすることはまず不可能です。ゼロにするには、加圧か真空でないと難しくハードル高いです。
ですがエアインチョコと揶揄されるような、微細気泡だらけの複製品を避けるためのポイントを書いていきます。
・新鮮なキャストを使う
・紙コップの使用は避ける
・ベロに付着したキャストは拭う
・除湿機の使用
・A液に脱泡材入れておく
・雨の日の複製は出来れば避ける
・シリカゲルの利用
・汗に注意
3-2-1 新鮮なキャストを使用
シリコン同様、キャストも生ものです。なるべく新しい物を使うことで、微細気泡の発生を抑えられます。
ベルグや里見デザインなど、回転の速い通販サイトを利用すること。
開封したキャストもなるべく早く使い切る。その日のうちに使い切るのがベスト。どうしても使い切れなかったら、密閉容器に乾燥剤と一緒に保管する。ちなみに保管容器は米びつ使ってます。
3-2-2 紙コップは避ける
キャストの計量には紙コップを使わず、ポリビーカーを使う事。同様に割り箸を撹拌棒に使うのも、避けましょう
紙製品や木製品には、わずかながらにも水分が含まれてます。微量とは言え、微細気泡の元なので可能な限り避けたいところ。
3-2-3 ベロに付着したキャストは拭う
注型後、缶のベロに残ったキャストはいらない布などで拭っておきましょう。これを放置すると、空気中の水分と反応したキャストが次回分に混入してしまいます。
3-2-4 除湿機を使う
除湿機使って湿度を下げるのも、一定の効果があります。ちなみに夏場だと 半日くらいでバケツ一杯ぐらい水が貯まります。
もちろんエアコンの除湿モード使うのも一つの手です。ただし、クーラーつけてのキャスト注型作業は、換気扇などでちゃんと換気するのを忘れずに。
3-2-5 脱泡材の使用
古いキャストを使わないといけない場合は、A液に脱泡材を混ぜておくと、微細気泡を減らせます。使用する半日前にA液に投入、上澄みを使う感じです。
現在流通している脱泡剤は、ベルグ製とフィニッシャーズ製の二種類があります。
新しいキャストには、使う必要はほぼないでしょう。これは推測ですが、最近のキャストにはあらかじめ脱泡材が入っている気がしてます。A
液使い切ったとき、たいてい缶底に白い沈殿物が残っていますので。
3-2-6 雨の日の複製は避ける
湿度の高い、雨の日の複製は出来たら避けたい所です。湿度80%越えの日は量産作業休みたくなります。
とはいえ、スケジュールに余裕がなければ、そうは言ってられません。どうしても雨の日に複製する場合は、除湿機を使いましょう。
3-2-7 シリカゲルの利用
食品の小袋入りシリカゲルを、ポリビーカーに仕込んでます。カップの中の湿気を少しでも減らす工夫です。小袋入りのシリカゲルは、シモジマ系列などの梱包用品店で入手可能です。
![](https://assets.st-note.com/img/1719452613814-TMe9NWKJ4Z.jpg?width=1200)
残ったキャストが硬化して固定されます。
キャスト缶や、調味料入れに小分けしたキャストの中にもシリカゲルを入れてます。正直気休めかもしれないけど、やらないよりはと思ってます。
3-2-8 汗に注意
暑い中での量産作業で当然あせをかくことになりますが、この汗がキャストに入らないように注意を。万が一、汗が一滴でもキャストに垂れたら、盛大な微細気泡の元になります。
首にタオルを巻くなどして、汗対策を忘れずに。
4)その他の注意点
4-1 肌の露出に注意
暑さ故にどうしても半袖半ズボンという感じで、肌を露出して量産作業しがちかと思います。そうするとキシレンなどの有害物質を、吸収しやすくなりがちです。また、型を叩く時に発生する飛沫を素肌に浴びるケースもよくあります。
量産作業で肌が荒れがちという人は、出来たら長袖長ズボンでの量産をお勧めします。もしくは肌の露出部分に、ハンドクリーム類を塗ることで、有害物質の吸収をある程度下げる効果があります。もちろん、有毒マスク・ゴム手袋着用は義務です。
4-2 連続注型に注意
夏場の量産で注意したいのは、連続注型し続けると型が反ったり、熱で膨張するなどして、複製品の精度が落ちることです。最初は漏れなかった型が、キャストお漏らしするようになったり、バリが増えるケースがあります。
その原因はキャストの硬化熱が冷め切らずに、型に蓄積されてしまうこと。薄い型ほど反りやすくなりますし、大きなパーツのある型ほど硬化熱の負担が大きくなります。
連続注型を避けたり、一日の注型回数を10~12回程度に抑えることで、型の負担を減らせます。
5)まとめ
夏場の量産作業は、冬場とはまた違った方向で辛い物があります。なぜワンフェスがこの時期にと思ったり、高温多湿の日本の気候を何度も恨んだことか・・・。複製するときは欧米の湿度の少ない気候が羨ましく思えます。