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OM式型取り複製覚え書き その7 冬の複製作業のポイント

 今この時期は、2月の冬のワンフェスにむけて複製作業に励んでいるディーラーも多いかと思います。そこで今回は冬場の複製作業について解説します。
 冬場はどうしてもシリコンやキャストの硬化が遅くなるので、いかにして硬化促進させるかが、量産効率上げる鍵になります。

1.冬場のシリコン型製作のポイント
・使用済みの油粘土は予熱する
・シリコンは湯煎して暖める
・硬化剤は規定量入れる
・加湿する
・電気カーペットなどで直に加熱するのは不可
・粘土剥がすときは要注意
・24時間硬化のシリコンは出来たら避ける
・石油ファンヒーター使っている部屋での作業は注意

1-1 使用済みの油粘土は予熱する
 粘土埋めに使う油粘土、特に何度も使った油粘土はカチカチで練るのに一苦労です。あらかじめストーブの前に置いて、暖めることで柔らかくなりスムーズに粘土を使えます。ただ熱々だと火傷しかねませんので、布手袋して作業するのをおすすめします。

1-2 シリコンは湯煎して暖める
 40度ぐらいのお湯(熱湯はダメ!)で、缶ごと予熱することをお勧めします。暖めることで、流動性が上がり気泡の抜けも良くなります。シリコン注入後は気泡抜きも兼ねてドライヤー使うのもありです。
 あと目薬型容器に入ったペースト状硬化剤も、湯煎することで出しやすくなります。

1-3 硬化剤は規定量入れる
 シリコンの硬化剤を規定通りに入れることは、あんまりないのですが、冬場は規定量入れます。
 ただし規定量以上入れるのはお勧めしません。たしかに規定量以上に硬化剤入れれば、冬場でも短時間で確実に固まりますが、その分シリコンが固くなり柔軟性が失われ、型保ちが悪化します。
 昔の失敗例ですが、ワッカーM8012を冬場に規定の4%より若干多めの5%入れたことがありました。通常なら40回ぐらい(徐々に型が破損していくものの)抜ける所が、5%では20回ぐらいで複製品が型に貼りついてしまい、完全に逝きました。
 このように硬化剤を規定以上入れるのは、スケジュール的に後が無いときの非常手段です。
 あと里見デザインではワッカー系の倍速硬化剤Tが販売されてます'(セット販売も有り)が、通常の硬化剤使用時と物性がどう変化するのか、不明なので判断は保留です。もし物性が変化しないなら、冬場に有効だと思いますが、使った人の話とか聞いたことがないので・・・。もちろん私も使用経験ありません。

1-4 加湿する
 シリコンの硬化促進要因は温度と湿度です。なので湿度を上げるのも重要です。
 塗れた新聞紙を被せる(シリコンに接触しないように注意)。
 風呂場に置く。
 シリコンがある程度固まった段階でぬるま湯を流す(枠に若干余裕がある子が前提)。
 加湿器を使用する。
 これらのポイントを全部で無くとも、幾つか実施するだけで違ってくると思います。

1-5 電気カーペットなどで直に加熱するのは不可
 これは私の失敗談なのですが、昔電気座布団敷いてその上に粘土埋めした枠を置いて、シリコンを流したことがありました。
 これが大失敗、たしかに硬化時間短縮できましたが、シリコンに気泡が盛大に入ってしまいました。
 おそらく直接かつ長時間にわたって加熱することで、シリコンに対流が発生したためではないかと思ってます。
 なので直接かつ長時間にわたって加熱することは、避けた方がいいと思います。

1-6 粘土剥がすときは要注意

粘土剥がすときは毎回緊張します


 冬場は粘土剥がすタイミングに注意する必要があります。
 一回目のシリコン流し終わって、シリコン面触って問題ない感じでも、いざ粘土はがしてみると、まだ完全に硬化していないケースがあります。
 ポイントとしては、粘土剥がすときに凸ダボ部分が異様に伸びたり千切れてしまう時は要注意です。あるいはシリコンが柔らかすぎる時。このようなケースだと、完全にシリコンが固まりきってません。強引に粘土を剥がすとダボが千切れて、切断面から未硬化のシリコンが現れます。最悪、原型も粘土に持って行かれます。
 なのでこのようなケースは、粘土を剥がすのは一旦中止して、お湯を張ったり、ストーブの前に置くなどして数時間様子見することをお勧めします。
 ダボが千切れてしまい、未硬化部分が露出している場合は、硬化剤を数滴垂らして、爪楊枝などで混ぜて数時間放置すれば問題ありません。

1-7 24時間硬化のシリコンは出来たら避ける
 ワッカー系やベルグなど8~12時間で硬化するシリコンをお勧めします。
 ウェーブやボークス透明などの24時間で固まる銘柄だと、それ以上の硬化時間がかかる可能性があり、複製に倍の時間が要ることになります。
 これらの銘柄をどうしても使うのであれば、その辺をあらかじめ見越してスケジュールに余裕を持たせるのが大事です。

1-8 石油ファンヒーター使っている部屋での作業は注意
 冬季のシリコン型製作時に注意したいことに、石油ファンヒーターがあります。シリコンからの揮発成分は、石油ファンヒーターの故障に繋がります(説明書にシリコンスプレー使用するなと書いてあります)。シリコン流す作業場は持ちろん、離型剤塗りや湯口掘りといった作業でも影響が出ます。なので石油ファンヒーター使っている方は、型取り作業中は作業部屋から撤去しておくことをお勧めします。
 うちのファンヒーターがすぐ止まってしまう原因、実はこれだったみたいです・・・。新品に買い換えたのが、あっという間に壊れました。

2 冬場のキャスト注型のポイント
・ベルグの硬化促進剤がお勧め
・120秒タイプのキャストを使う
・作業開始時に型やキャストを予熱する
・使い捨てカイロでキャストの温度管理
・床を段ボールなどで断熱する

2-1 ベルグの硬化促進剤がお勧め

ベルグのキャスト用硬化促進剤

 RCベルグさんで取り扱っている、キャスト用硬化促進剤を使うと硬化時間が短縮できて、複製のペースが上がります。一度に流す型の数にもよりますが、上手くいけば冬場でも30分に一回のペースで流せます。
 使い方は、A液缶にあらかじめ混ぜておけばok。120秒タイプを90~30秒に代えることが可能です。ただし、注意したいのは入れすぎると、キャストの弾力性が失われて、脱型時にポキポキ折れるケースがあることです。薄物や細かいパーツが破損しやすくなります。個人的には90秒ぐらいに留めておくのがいいと思います。

2-2 120秒タイプのキャストを使う

里見のノンキシアイボリー120秒タイプ

 冬場は120秒タイプのキャストを使うのが、少なくとも常圧注型では大前提です。たまに気泡抜けが良くなるといって、冬でも180秒タイプを使う人が居ますが、量産効率から考えるとあまり意味は無いと思います。

2-3 作業開始時に型やキャストを予熱する
 シリコン型やキャストが冷えていると、その分硬化に余計に時間がかかります。
 そこで作業スタート前に、型とキャストをストーブの前などに置くなどして、予熱するのがお勧めです。ただしキャストの予熱は要注意です。ストーブからある程度距離を離したり、5分程度に済ませるなど暖めすぎに注意すること。暖めすぎて缶が膨らんでしまったことがありました。最悪破裂して火事に繋がりますので、放置しないように注意すること。
 ちなみにキャストは湿気厳禁(微細気泡のもと)なので、湯煎で暖めるのは不可です。
 また型は、キャスト注型を何回か繰り返せば、自然に型は暖まっていきますので、(長時間放置しない限り)最初だけ暖めればokです。

2-4 使い捨てカイロでキャストの温度管理

キャスト小分けした調味料入れをカイロと一緒にペットボトル入れに入れている図

 キャストの液温を、気温より高めに維持することが大事です。そのために手っ取り早いのが使い捨てカイロをキャスト缶に貼り付けること。キャスト缶は密閉容器に入れておくと効果が高いです。私の場合は、100均のアルミ製保温容器に収納して、使う時だけ出してます。
 調味容器に小分けした分のキャストは、100均のペットボトル入り(内側がアルミの物が望ましい)に、ミニサイズのカイロと一緒に入れます。これで換気のために吹きさらしの作業場でも、キャストの液温をある程度は維持できます。
 理想は電気式の保温庫があればいいのですが、なかなかそこまで投資できないものです・・・。

2-5 床を段ボールなどで断熱する

作業場に100均の断熱マットをしいている図

 作業環境にもよると思いますが、基本的に換気のために窓全開の作業場の床は冷えます。床に段ボールや保温マットを敷いて、その上で複製作業をすることをお勧めします。汚してもいい電気カーペットがあるなら、有効利用しましょう。また、(レジンで汚れてもいい)暖かい格好で作業しましょう。

 冬のワンフェスに参加されるディーラーの皆さん、風邪などひかないよう頑張って下さい。

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