国の承認を受けた診断薬
1.診断薬
診断薬(体外診断用医薬品)は、厚生労働省のお墨付きを得た検査キットで、医師の判断で使用することになる。
大腸がんの治療に用いられる抗がん剤セツキシマブ(アービタックス)はKRAS遺伝子の変異を測定し、効果を予測した上で投与される。
近年は、マルチ遺伝子パネルという複数の遺伝子を同時に調べ、最適な抗がん剤の選択をできるようにする診断薬も承認され、使われるようになった。
2.使われ方
一般的に、診断薬が使われる流れは次の通りになる。
(1)受診
患者は、病院で医師の判断で遺伝子検査を受ける。検体は、体の組織や血液などが用いられる。
(2)測定
検体は病院内の検査室で、正確に測定され、検査結果がまとめられる。
あるいは、検査受託会社であるMBL、SRL、LSIメディエンスなどの検査会社が検体の搬送と、検査を請け負う場合がある。遺伝子検査の場合は、特殊な設備が必要であることと測定手順が込み入っているため、検査会社で測定されていると推測する。
(3)治療法選択
最後に、検査結果は医師の手元に戻り、患者に結果と治療方針が説明される。
3.保険適用
厚生労働省の承認を受けていることから類推されるが、診断薬は保険適用されている。例えば、EGFR遺伝子変異測定は2500点(25,000円)となっており、3割負担であれば、約7,500円かかることになる。保険点数が1万点を超えるような検査もいくつかあり、これは次世代シークエンサーと呼ばれる新しい測定技術を用いた診断薬だ。一度にたくさんの遺伝情報が得られるが、測定装置や測定試薬が高額になるため、高い保険点数が認められているようだ。
このような高額な検査がどれほど実施されているか、政府の統計情報公開サイトであるe-statに収録されている社会医療診療行為別統計を調べた。
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社会医療診療行為別統計は、毎年6月に保険請求された医療行為の種類と回数を集計したものである。最上段のEGFR遺伝子検査肺癌は、年々検査回数が減少している。その代わり、3段目の3項目の回数が増えていることがわかる。
推定だが、日本肺癌学会のガイドラインによると、複数の遺伝子を同時に調べ治療薬を選択することが示されているため、EGFR遺伝子単独ではなく、他の遺伝子も測定する流れになっているためと思われる。
もちろんこの表に記載の2項目、3項目、4項目以上のカラムは、他の癌の検査も含まれているため、あくまでも筆者の推測であることに留意していただきたい。
下段にあるがんゲノムプロファイリング検査は、複数の遺伝子を次世代シークエンサーを用いて測定するものだが、保険点数は4万点(40万円)を超えている。
今後、この検査方法に置き換わっていくことが推測される。生命保険会社がまとめたがんの治療費は約80万円であることからすると、占める割合が多いような印象を持つ。今後の医療費の推移を気にしておきたい。
4.法律による厳格な管理
これまで述べたように、診断薬の使用には、医師(医師法)、臨床検査技師・衛生検査所(臨床検査技師等に関する法律)、診断薬(薬機法)といくつもの法律で管理されている。これにより、正確な遺伝子の測定と医師を介した正確な結果が、患者の治療に活かされる仕組みが構築されている。