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熱可塑性【ショートショート】


 「学校に行くときつい顔になる」とよく言われる。
 これは、学校に行ってる間気を張りすぎて、目尻が吊り上がってしまうからだ。
 家にいる時は下がり切っている目尻も、委員会の仕事をこなしたり、心無い言葉に傷ついたりすればどんどんとキツくなっていく。
 辛い、悔しい、怒り…色々な感情があるが、温度で表すと「冷たい」なのかもしれないと最近感じる。
 怒りなんかは赤で表されることも多く、どちらかと言えば「熱い」感情かもしれないが、この状況自体が「冷たい」と感じる。
 こんなことをつらつらと考えるきっかけとなったのは、プラスチック製の筆箱を手に取ったことだ。
 ポリ塩化ビニルで作られた筆箱は、日差しの元に長い間置いておいた結果温まり、柔らかくなった。テロテロになってしまった筆箱を慌てて冬の廊下に持ち出し、冷やして元の硬さに戻した。
 私にとって家は、ひだまりのような場所だ。感情はいつでも抑圧されることなく、生き続けている。
 学校は、冬の廊下。感情は引き締まり、生きるために気を張らなければならない。

 「友」という疑似的な太陽が、それを照らすだけである。

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