「それぞれが自由に楽しんでいるから、参加したくなる」設立者がいなくなっても活動が続く、竹林をよくする会の在り方
古来より、暮らしの道具や工芸品にも使用されてきた、日本人にとって身近な竹。一方で、竹林は管理が難しく、繁殖力も高いため、管理ができなくなってしまった放置竹林が存在します。
加えて、竹は根が浅く、大雨などによって土砂災害が発生しやすくなる等のリスクがあるため、私たちの生活の安全を守るためにも継続的な管理が求められています。
「竹林をよくする会」は、ボランティアで放置竹林を伐採整備すると共に、伐採竹を活用した竹パウダー・竹炭焼き・竹細工等を行い、地域の環境保全と里山文化の継承に寄与するために活動している任意団体です。放置密生竹の伐採整備・枯れ竹の処分等をできる限り長期間継続的・積極的におこない、竹林の再生を目指して活動しています。
今回は、団体の会長を務める山中さんと事務局長大西さんに活動内容とZEN messengerを利用しての感想をお伺いしました。
最初は強い意志から始まり、今は縛らないから続く。
ー団体の活動が始まった時のことを教えてください
大西さん
2002年に定年退職をした人たちが4人ほど集まって活動を始めました。
私は2010年頃から活動に参加したので、人から聞いた話なのですが、最初は竹林の管理をするために立ち上がったのではなくて、広葉樹林の再生が目的で立ち上がったそうです。
しかし、広葉樹は成長速度の遅さなど非常にハードルが高いということで同時に始めていた放置竹林の伐採、伐採整備の方に主力が移ったそうです。
ー普段の活動内容について教えてください
大西さん
月の第二日曜日に竹林整備があり、その次の水曜日にパウダー等の竹を使用した加工品を作成します。会員になると、この2回以外にも草刈りや伐採整備を行うこともあります。
ポーラス竹炭を作っていて、地域の造園会社さんに使ってもらったり、近くの高校の生徒さんも定期的に行っている活動に参加しにきてくれています。
ー2002年からの活動とすると、20年以上も活動されていることになりますが、長く活動を続けていくための秘訣などはあるのですか?
大西さん
私が参加したのは14年ほど前からでしたが、それ以前は、中心になって活動している人の意思が強くて、熱心に周囲を巻き込みながら活動していたからかな。あとは、民間の会社が社会奉仕活動(ボランティア)を積極的に推進していたという時代背景もありますね。
私が事務を引き継いでからの5、6年間、なぜ続いているかというと、参加の義務化やノルマで会員を縛らないからかな、と思っています。
最初は少ししたら若い人に代わろうと思っていましたが、昔ほど社会がボランティアを後押しする状況ではなく、若い人たちが運営などを行う中心となる人として参加できる環境ではないので、今いる人が継続して参加できるようにに非常にゆるい縛りでやっています。
山中さん
私が参加したときには、活動初期から参加している中心になっていた人たちがいなくなって活動が縮小していたんですよね。それでも今活動が続いているのは、大西さんが書類の山に囲まれて頑張ってくれているおかげ、資金調達が比較的上手くできている方だからだと個人的には思います。
中心に立つ人にならなくても「楽しいから」参加したくなる活動。
ー活動をしていく上でどんなことが大変でしたか?
大西さん
一度、資金調達のためにノルマを課したことがありますが、それは大変でしたね。
山中さん
国から交付金をもらうための基準はノルマを課さないと達成できないんですよね。けれど、そのために一人当たりが竹を切る量のノルマを課すと大変になるのでみんなだんだん参加しなくなってしまいます。
大西さん
昔は潤沢な援助があり様々なことに使用できたそうですが、今は使用目的も制限があり、潤沢とは言えません。1年間活動資金を立て替えて活動して、最後に問題がないかチェックを受けて支払われます。
概算払いの申請もありますが、書類になりかえって負担が増える場合もあります。民間の助成金の申請など作業の絶対量も多く、小さい規模の団体だと、割り振れるほど潤沢に人材はいないので書類の山に追われてしまいますね。
ー竹林をよくする会の皆さんはどんな理由で活動に参加されているんですか?
大西さん
基本的な目的は、リタイアして自由な時間があるので、山の中を走り回って竹を切ってやろうとしか考えてないですね(笑)
WEBサイト等に目的や理念が書いてありますが、一番重要なのはそこではありません。
山中さん
会員の方々が余裕のある人が多いのは事実としてあるとは思いますね。
放置竹林を解決することを第一に考えてきてる人はほぼいないんじゃないですかね。楽しいから来てるんじゃないかと思います。体を動かしにきてる人やおしゃべりをしにきている人もいます。
これをやれとは言われないので、みんなが自由に竹林の中に散らばって竹を切りながら、楽しんで活動してもらっています。
大西さん
朝礼では、やる範囲や、やり方の指示、注意をするなど最低限のルールはありますよ。
そして、それぞれが気をつけて自己責任でやる。その中で自分たちの好きなことをする。自由な人たちが多いですね。
ーボランティアのため、というよりも憩いの場として集まっているのですか?
山中さん
その側面は結構大きいと思います。「竹林をよくしよう!」と強く言う人はいないように見受けられます。
大西さん
みんな「困っている人がいるから切った方がいい」というくらいの認識でやっているのではないかなと感じますね。気負って参加しても続かないので、それくらいの気持ちでの参加でいいと思っています。
ーみなさん問題意識からではなく、楽しいということが活動への原動力になっているんですね。
山中さん
そうです。役に立っているという気持ちもありますけどね。
大西さん
活動しても見返りがあるわけではないのに、参加して活動してほしいなんて指示できませんよ。
活動組織そのものや、活動の中心になる人たちも必要ですが、別に中心人物として関わるんじゃなくてもいいと思っています。行きたい時に好きなように参加するという関わり方でもいいです。私は活動に対してそんなふうに関与の仕方をしてきています。
難しく考えるのではなく、やりたいように好きな時に活動へ参加する。
そうすることによって結果的に誰かの役に立ちますし、続けやすいです。
なので、そんな関わり方でいいんだと思います。
わかりやすく、ためになる。だからやりたいと思える。
ーZENのいいと思うところはどんなところですか?
山中さん
単純に資金がいただけるのは、ありがたいですね。申請がないのもいいです。
大西さん
お茶をいれている冷蔵庫がフルに動かせる。小屋が直せる。使い道を指定されないお金は少額であっても非常に助かります。
ー会員の方々はZENに対してどう思っていらっしゃるんですか?
大西さん
みんないいねを押したがりますね。竹林の時と同じように押すだけでいいなら自分でもできる、やりたいという雰囲気はとてもいいなと思います。普通のアプリは興味なさそうだけど、自分のためにもなるからか、やってみたいと言っていました。
山中さん
わかりやすく自分たちのためになるというのが面白がって動きやすい。何になるのかが見えるというのが大事なのではないかと思いました。
さいごにーお話を聞いて感じたこと
私の中でボランティア団体の方は問題解決のために志を高く持って活動しているイメージがあったので、楽しいからというシンプルな理由で団体が続いていることに驚きました。
もちろん意欲や行動力がある人も必要ですが、少しだけでもいきたいと思った時に好きなように参加するという考え方は現実にある問題をみてみぬふりをしないためにも大切にしたいです。そうすることで活動に対するハードルが下がり、少しだけでも動くことができる人が増えることによって問題を解決へ導く力も大きくなると思うので、この考え方が広まってほしいと思います。
ZEN messengerを通して活動資金を得ることができるという単純なメリットだけでなく、竹林をよくする会で大切な「楽しい」につながる面白い、やってみたいという感想を持っている方がたくさんいることが、とても素敵だと思いました。