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バイオリン 弓が他人みたい

 ある日、気づいた。なんだか右手が痛い。あー、この間筋トレ行って、55キロを持ち上げてスクワットしたせいだ。60歳近いわたしが調子にのってしまったせいだ。がんばった達成感はその日の夜のご満悦気分を生み出し、次の日、またはその次の日の「わすれたころにやってくる筋肉痛」を生み出す。私はこれを「あいたた痛」と呼んでいる。歳をとった人が「あいたたた・・・」という無意識に発した言葉で気づく、筋肉痛って意味。どうでもいいが。

 その日は少々違った。筋トレはざっくりした痛みだが、これは繊細な痛みだった。おや?なにか非日常をやったっけ?心当たりをさぐってみてもうかばず、そういえば!で思い出したのが、「弓」だった。

バイオリンの弓のもちかた。どうしてみなさん、そんな体勢でひけちゃうの?不思議。手、だいじょうぶ?
・親指は、みぞに指先の爪の部分をあてて、第1関節は曲げる
・小指は、角っとなっている上のところにそっとのせてつっぱらない
・人差し指は、第1〜2関節の間をあてる
・中指は親指となかよし
・薬指は目の玉周辺でそわせる
・手はたまごか卓球のボールをもつような感じで丸く

 まちがっていないでしょう?なにもしなければこのかたちにできます。ところが、いざ、弦にあててボウイングすると、たちまちかたちがくずれます。

セットしたらこの形はできる

 崩れるのは、小指・親指・人差し指。まさに、父と母と末っ子問題です。小学校の理科は得意だったのでわかります。てこの原理。弦にあてずにセットするときは、親指と小指で、てこの原理で持つことができる。たまに、Youtubeで親指と中指で持てるようにっていっているけれど、どう考えても力学的に無理。なんとか鉛筆で練習して、なにもなければそのかたちはできるようになったわたし。よし、一歩すすんだ。

 ところが、弦にあてて開放弦をロングトーンでひいたりすると形が変わる。みてのとおり小指がピーーーン!と突っぱねる。曲げてね、って声かけるけれどだめ。ぴーんって爪先立ちしたふくらはぎがつったみたいなかたまりよう。こんなに指って言うこと聞かない部位なのね。いったん弓をはずして、手を振ってぶるぶるってやって、それから持ち直す。しかし、また同じことの繰り返し。

小指がピーーーン!

みんなこの道、とおってるの?

 そして次に来るのが、親指。こちらさんもつっぱる。しかも、親指つけねの筋肉がパンパンになる。え?なにこれ?どういうこと?力入りすぎ?けれど、弓おちるでしょ?ひいてると。最小限、どこかかで弓を保っていないと、ぽろりするでしょ?どこでもってるの?ねぇねぇ、おしえてほしい!

親指第1関節がのびてしまって、結局、筋肉痛に

 ということで、わたしの弓をもつ右手は他人の手のよう。ぜんぜん思う通りにならない。きっと、練習あるのみなんだろうと思う。あたまで考えるより、からだが覚えるほうが早いと、中野信子先生も言っていた。そういうエビデンスもある。
 プロはみな、驚異的な練習量をこなす。天才だけど練習の集中力も天才だ。だから、あれこれ思考せず、試行錯誤してみよう。それにかぎるな。けれど、同時にへんなかたちでおぼえてしまってはとりかえしがつかない。そういう恐怖はさんざんやってきた。独学で練習して、あとで直すのかなり苦労したから。



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