何が起こっているのか分からないほどの幸運〜ケンブリッジにて

今日は朝から、先週末初顔合わせを行った、私のカレッジの図書館員Tに引きつられて、ケンブリッジ中の図書館、主に私たちの専門に関連する図書館を案内してもらった。何ヶ所回っただろう、5、6箇所回っただけで午前中2時間くらいかかったわけで、それだけの時間を割いてくださったTに感謝。

最初に訪れたのがウェストミンスター・カレッジの図書館。ここは前回ケンブリッジを訪問した時にも、「本を返却するついでに」と、今の受入担当教授Rに案内してもらった上、ダイニングルームでランチをおごってもらったところでもあります。

2022年の晩秋でした
ダイニング。ほぼ変わってないです。そう、アドベント直前の時だった。

午前11時前頃、このカレッジを後にしようとした時、ここで行われていたセミナーの参加者がどっと玄関から出てきたタイミングと重なった。その人たち、記念に集合写真を撮りたいらしく。私に同行していたTが、シャッター押しに気さくに応じている間、何気なくその人たちを眺めていたら、な、なんとその人たちの中央に、尊敬するあの方が⁉️

え?え?なんでここにいるの?本当にご本人?うん、名札にもちゃんと、正解の名前が書いてあるよ。きっとそのセミナーの講師としてやってきたんだね。

「ドクター・スペンサーではありませんか?覚えていらっしゃらないと思いますが、えーっと、カンタベリーの学会でお会いした、いや、それより最近では1年半前にオックスフォードの学会でお会いして、その時ご著書にサインをいただいた者です」と、もうね、躊躇することなく歩み寄った私。

すると、なんと!「ああ、あなた、はいはい覚えていますよ、ええ、オックスフォードで」と。
うそーん😱 まじか〜覚えていてくださったんか〜〜〜🤩
その時の、私の質問が変、というか後で考えると失礼な感じになってしまったので印象に残っていたのかもしれません。要するに、イギリスの近代神学について結果的にディスっていたわけで。立ち話の中、私がその質問をした時、彼が片方の眉をピクッと上げつつも穏やかにお答えくださったのが、私の記憶にも鮮明に残っています。

お互いに後の予定がある身、最低限の挨拶と会話を交わしたら、別れ際に「何か聞きたいことがあれば、ランチの時にきてください」と言われました。

その後のTの案内はとてもありがたいけど、申し訳ないことに私は上の空。スペンサー先生には、いつか機会があったらこれを聞きたいあれを聞きたい、ということがずっとあったのに、いざそのチャンスが急に現れ、もう頭の中は真っ白です。

Tもこの出来事を一緒に喜んでくれて。「あんなにたくさん質問があったのに、ああ、全然思い出せないっ。どーしよー、いやいや、とにかくランチに行って、印象を強くしてもらえるよう普通におしゃべりすればいいのよね」と、やたら饒舌に喋りまくる私に、T、「そうそう、がんばれーとにかく行けー。ウェストミンスター・カレッジはこっちだからね」と念を押され。

そしてカレッジのダイニングルームでしばらく待っていると、先生は現れました。

私はご著書や論文を拝読しているから、アカデミック上、大体先生のことはわかっているのですが、あちら様にとって私は、少なくとも今日までは聴衆のone of themですからね、自分の関心事や博論について、簡潔に伝えるのです。
前にいただいたサイン本については、こちらにも書評があります。

トーニーとテンプルの似ているところと違い、平等観の違い、福祉国家とは、など、話は尽きません。学問の話も盛り上がりましたが、共通に知っている人物(3人くらい上がりました)についての話題は、やはりお互いを安心させますね。世の中は、改めて、狭い。

さてそろそろランチの時間も終わりに近づき、話をまとめる方向に、という頃に。
「あなたの博論のドラフトがある程度出来上がったら、私も読ませてもらっていいですか?」という先生。

「*+!@$?」
本当にこういう反応だったと思います私。
「ほ、本当ですか?(まさかここで社交辞令ってことはないだろうに?)本当ですね?本当に送っちゃいますよ?ある程度仕上がったら」
「ええ、的確なことを言えるかどうかは分かりませんが、読みたいです」と。

こういうところ、本当にスペンサー先生のお人柄が滲み出ているのです。いつも控えめでおとなしい風な先生、でも学問への情熱は半端ない。実は「あなたの博論が完成したら読みたい」と言ってくださる方は、こちらイギリスではもう何人かいらっしゃって、こう言っていただけると本当に励みになります。でも今日は、ずっとコンタクトを取りたいと願っていた先生と偶然に出会えて、それでこう言っていただけたのです。こんな幸運なことって、ある?

それだけに、今日はモチベーションがぐううっと上がっているのですが、ちょっと興奮しすぎて論文に手がつかないほど。というわけで、こちらのnoteに日記を書くことでクールダウン、これから研究に戻ります!



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