Go North

最初にして最大のイギリス研修旅行は2016年の夏だった。あの時は、ブリストルを始点に、イギリス南西部各地を10日間くらいかけて800キロ移動したのであった。あの時もロンドンから日本に帰る頃にはへとへとになっていたが、移動手段は主にレンタカーだった。それはそれでかなりの苦労があったが、今回の大冒険では、移動手段が公共交通機関だ。列車、バスの運行キャンセル、遅延の繰り返しでほとほと疲れている。今、やっと最終段階の、スコットランド本島の北の果てスクラブスターからオークニーへのフェリーに乗って、オークニーに到着することができるなんて奇跡、とほっとして、船のレストランで温かい夕ごはんを終えたところ。

といっても、ここも出発時間を30分過ぎて出航。島に着くのが20時半過ぎとして、バスはあっても1時間待ちとかになってしまうかなあ。だとすると、宿のB&Bまで30分以上歩くか。真っ暗だろうなあ。

マンチェスターでの会議の後、ダーラム、リンディスファーン、エディンバラに立ち寄りながら、今日、エディンバラから12時間以上かかってオークニーに到着しようとしている。

ダーラムでもリンディスファーンでも、かなりのトラブルがあった。詳しくは今は疲れて振り返られないが、たとえばリンディスファーンでは巡礼路を想定外に往復4時間歩くことに。帰路こそは予約したUberタクシーにもキャンセルされ。(来ないなら最初から「無理です」といってくれ)一人っきりで島を往復し、「今心臓とか止まったら、ここが最期の地になるのか、それはそれで、ふさわしいな」と引き潮で道が出現するコーズウェイを何時間も渡りながら、ふと、そんなことも考えたり。

昨日のエディンバラでは、東京の同大からの、仲良くしていただいていた院生留学生と1日デート。大変楽しい時間を過ごせました。

今日のバスの遅延には、寿命が2年くらい縮まった思い。エディンバラからインバネスまで3時間半、そこから乗り換えて、さらにローカルのバスでフェリー港まで3時間半。最初のバスで、なんやかんやの小さい理由で少しずつ遅れていたのだろうが、「なんじゃそりゃ?」級の理由が、これ。ある停留所を出発直後、ドライバーからのアナウンス「ギアチェンジができないので、いったん引き返します」と。どうりで1キロくらい走ってもノロノロしか動かないなあ、と思ったら。

インヴァネスでの乗り換え時間はゆうに40分はあったので、田舎の、本数の少ないところでまさか乗り換えに間に合わないことはないだろう、との予想が甘かった。

2階建高速バスの2階席でグーグルマップと睨めっこしながら、「バスターミナルまであと10キロ、乗り換え時間まであと10分しかない、間に合わないよな」と諦めつつ、1階に移動。するとドライバーに
「走行中は席に着いててください」と言われ、ドライバーのジャケットが放ってある一番前の席に、ジャケットをよけて座りつつ、
「インヴェネスで2時20分発のバスに乗り換えたいんだけど、もう無理よね」と私。急いでる人もいるのよ、少しは配慮してね、という儚い願いを込めて。このバスを逃したら、北の港に向かう本日のバスはもうないことは、地元民なら十分にわかっているはず。

2時20分、ジャストに到着。
私に続き、ドライバーの兄さんも急いでバスを飛び降りたが遅かった。フェリー行きのバスは、定時で出発しているところだった。

Oh my Godと頭を抱える私と、別の黄色いジャケットの人に、大手を振って合図を送っている兄さん。兄さんの説明によると、すでに出発してしまったそのバスは、くるっと回って戻ってきてくれるという。そんなことがあるものかと半信半疑で、とりあえず30分くらい待とう、それでダメなら今晩の宿をキャンセルしてここで宿を探して…と諦めかけていたら、15分くらい経って、そのバスは本当に戻ってきてくれた。ほぼ満席なのに。…とにかく疲れた。

今度のドライバーはおばちゃま「あなた以外に乗り遅れた人、他にはいないわよね」と何とも頼もしくプロ意識高そうで、私には後光がさしているようにさえ見えたわ。

バスにトイレはついていたものの使う気がせず、9時間くらいトイレにも行けなかった。後半のバスの中でフェリーの予約を入れたが、送られてくるはずの確認メールは届かない。が、こんなことはお茶の子さいさい、もはやトラブルのうちにも入らない。案の定、フェリー港に辿り着いて「午後に予約入れたんだけどね〜」と窓口でいうと、「ノープロブレム!ちゃんとあなたの名前あるわよ〜」と笑顔で対応でっす!

いろいろとゆるい、ゆるすぎるイギリス。でも、最後の最後でなんとか帳尻をあわせてくる、というのもこの国の人たちのやり方らしいなあと思った次第。


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