賢木⑱朧月夜との文の交換
🌷頭の弁の朗誦から 右大臣家の敵意を更に身に感じる
右大臣家の頭の弁が『白虹日を貫けり』と聞こえよがしに誦んじたことが心にかかり、改めて藤壺中宮との秘密が心に重くのしかかってくる。
🌷朧月夜からの文
何もかも煩わしくなって、朧月夜の尚侍とも疎遠になっていた。
頭の弁とも前の弘徽殿女御の皇太后とも同じ右大臣家の人である。
いつしか晩秋の時雨の季節となった頃に、朧月夜の尚侍から文があった。
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木枯らしの吹く度においでを期待してしまう、、お逢いしたさが募るばかりなのに、ああ、ただ日が過ぎていく…。
木枯の吹くにつけつつ 待ちし間に おぼつかなさの ころも経にけり
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🌷朧月夜への返信
何かと身に沁みて物寂しい季節でもあり、人目を忍んで書かれた苦労が偲ばれて、いじらしくなる。
文遣いを待たせて、
唐渡の紙など入れている御厨子を開けて特別上等な紙を選び、筆もいつもよりも念入りに整える。
何か恋らしさの漂うなまめかしい様子から、女房たちは、お相手はどなたなのかしらとつつき合う。
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お手紙を差し上げてもお返事もないのですっかり気落ちして、私だけがこんなに辛い思いをしているのだと思っておりました。
相手にもされない私だけが辛いのだと思っておりました。
📌つまらぬ我が身と思い堪えていたら いつかあなたから待たれる身になっていた という歌もありましたが。
私の涙はありふれた時雨などではないのです。(あひ見ずて しのぶるころの涙をも なべての空の時雨とや 見る) あなたと心が通うなら、長雨の物思いも(眺めの空) 忘れてしまいますのに。 …………………………………………………………………………………………………………………………
などと、つい情の籠った手紙を書いてしまう。
📌数ならぬ身のみ もの憂く思ほえて 待たるるまでに なりにけるかな
(後撰集 詠み人知らず)
しかし…。
女から来る恋文は多くて、その度に、どの女にも、薄情と思わせないような返信はしているのだが、
源氏の気持ちが揺さぶられることは、実は、あまりない。
(📖 情けなからず うち返りごちたまひて 御心には 深う染まざるべし)
Cf. 1 右大臣家の頭の弁
Cf. 2 右大臣家の子供達、 帥宮とは
Cf. 3 中弁から頭弁、蔵人頭へ
眞斗通つぐ美