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シャブ中の女の子/ポン中マンション

その日いつも通り16時半に出会い喫茶に出勤しました。

「おはようございます」
「おはよう。しんちゃん」

この頃には私の事をそう呼んでくれました。
店の中を掃除していると

「おはようございます」

人数は少ないけど早めに来る女の子も居てました。
夜21時頃、たまに来る女の子
Kさん
歳は25歳とプロフィールには
書いてありました。
いつもふらつきながら待合室に入って行き
そのままソファーで寝てしまってる事も
この日も気だるそうに待合室に
私は客引きに出ました。
この日は寒く通行人も少なめでした。
その中40代ぐらいの男性を店に案内でき
30分後
Kさんと店から出てきました。
私は男性に会釈をしKさんの様子を伺いました。
流石に男性の前なので腕を組み
会話をしていましたが
やはり体調は良さげでは無かったです。
1時間後、Kさんが戻って来ました。

「お疲れ様です」
私は挨拶をしましたがシカトされ
またビルの中に戻って行かれました。
この頃にはそんな事、もう慣れていました。
その後に案内所の人が来て声を
かけてきてくれました。

「おつかれ。しん」
「お疲れ様です」
私は頭を下げました。

「Kもう出禁にしろ」
「えっ?」
「あいつポン中やろ?どう見ても」 
「そっ……そうなんですか」
「別にあかん事でも無いからええねんけど」
「いやいや。良いんですか?」
「別にあかん事もない。
けどあそこまで切れ目が酷いとさすがにな」
「はぁー……店長に話しときます」
「頼むわ」
「はい」

ポン中……
勿論何をさすのかは分かりました。
けど、こんなに身近な所でとビックリしました。

切れ目
薬物が体内から抜けてしまい体がダルくしんどくて
動けないないです。
辞めようとしてもこの切れ目のしんどさから
また薬物に手を出してしまいます。

私は喫茶の店長に事情を説明し
店長も同じ考えだったみたいで
店長は控え室のKさんの元に行きました。
数分後、怒鳴り散らしながら物に当りながら
Kさんは店を出ていきました。

恐るべしポン中……

これから半年がたち
私は20歳になりました。
堂々とお酒も飲めるようになり
キャバクラやスナック、BAR等に
頻繁に通い遊べるようにもなりました。

この日、1年間お世話になった寮を出る日
賃貸も借りる事が出来ました。
もう既に、運命だったのかも知れません。
借りたマンション
別名
「ヤクザマンション」
「ポン中マンション」
そう呼ばれていた事を
まだ知りませんでした。

荷物は一年間で買った
服ですごい量に変わっていました。

しかし近場と言うこともあり
案内所の人のご好意で
運べる時に運ぶ事が出来たので
徐々に荷物の移動をしました。
やっと一人暮らし!
テンション爆アゲでした。
何しよ!何しよ!
浮かれ過ぎてました……

引越し初日、服屋の人達が祝いに来てくれて
楽しい時間を過ごし深夜回った頃
みんなが帰って1人になった頃
怒鳴り声と女性の鳴き声が隣の部屋から
聞こえてきました。
私は巻き添え喰らわないように
そっとドアを少し開け
隙間から様子を伺いました。
目の前に下着姿の女性…の髪の毛を
わしずかみにする
全身刺青の男性。
私はそっとドアを閉め
パニックになっていました。
警察!警察を呼んだほうが良いのか?
どうしよう?
その矢先ドアをドンドン!!
えぇぇーー

「すんませんな」

ドスの効いた声!

「あっはい。大丈夫です」

そう答えるしかありませんでした。
部屋に入ったのか
声が小さくなりました。
なんやったん!
えっ!隣……ヤクザ屋さん!
一人暮らしの楽しみが一瞬にして
崩壊しました。

翌日、案内所の人に昨日の出来事を話ししました。

「○○組の人やな。けっこう居てはるで」

けっこう居てはるで……
1人だけじゃないの……

「○○組の人もやけどポン中には気をつけや」

終わった……そんなデンジャラスな
マンションで優雅な一人暮らしなんて
出来るはずが無い……
前、店に居たKさんが頭によぎりました。

あんな美人で体調が悪いポン中なら
介護してワンチャン……
そんな馬鹿な考えが頭にありました。
馬鹿な考えだと
その日に教えられました。
仕事が終わり、気が向かない自宅に
帰りました。
風呂も入りビールを飲みながらミナミ界隈の
風俗の勉強をこの頃必死にやっていました。

深夜4時頃上の部屋からうるさくは無いけど気になる
音が聞こえだしました。
トントン・トン・トントン……

えっ!モーラス信号??
気になれば凄く気になる
そのリズムは永遠に続きました。
朝8時まだモーラス信号は止まりません。
我慢の限界が来てコンビニにビールを
買いに行き3本一気飲み
眠気のピークが来てそのまま寝れました。
起きたのは昼過ぎ
まだ寝たい……
ただモーラス信号の音が大きくなってる!
たまらず服を着替え
アメ村に出かけ服屋に行きました。
この事を話をし
笑われました。

「さすがポン中マンション!」

知ってたんです!
教えてくれたら良かったのに……

それでもこの1年
ほんとに面白い!
こんな日が毎日続いたら最高なのに
本気でそう思っていました。




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