ビアンバーやオフ会で感じたズレと、デミロマというセクシャリティとの出会い
社会人1年目の秋ごろになって、初めてビアンバーに行きました。
学生時代は地方に住んでいて、レズビアンのコミュニティも行動範囲内にありませんでした。
高校卒業前に初めたTwitterでは、世の中にはこんなに私と同じように同性に恋をする人間がいるんだというのが見えるようになって心強く思ったけれど、もともと文字での交流も得意ではなかったので、誰かと仲良くなったり恋愛の話をすることはほとんどできていませんでした。
初めて行ってみたビアンバーは、池袋にある落ち着いた雰囲気のお店でした。
初めから女性が好きというのを明かして話ができて、その空間にいる人たちも仲間で、私の持つ恋愛感情を理解なく否定されることはないことにすごく安心しました。
それから人と話したい気分になった日などに、その店に通うようになりました。
バーやオフ会で出会って彼女ができた人の話などを聞いたりして、私もそのうちこうなれないかな、なんて思ったりもしていたのですが、いろんな人の話を聞くほどに、バーやオフ会で恋の話をするほどに、自分の感覚とのズレを感じるようになっていきました。
それまで恋愛の話を避けて生きてきたので、世の中の恋愛感情を持つ人の言う「好き」の内容や求めているもの、気持ちを持つまでの過程、付き合うまで、付き合ってからの流れなど、ほとんどよくわからないままでした。
地方にいたころ、私が恋の話が苦手で混ざれないのも、パートナーになれる可能性のある人に出会いにくいのも、レズビアンのコミュニティに入れるようになれば解決するように思っていましたが、そうではなかったことをここで自覚し始めたのです。
好きなタイプとは?
これを聞かれるたび、困りました。これまで好きになった人の共通点は「仲良くなった人」という部分しかなく、好きになった人を見てかわいいなと思ったことはあっても、まだ仲良くなっていない人に対してそう思ったことはありません。
人があの人かっこいい・かわいいと言っているのを聞いてから注目してみて、たしかに、整った顔立ちをしている・愛嬌がある・お洒落だ などというのを理解したりすることはできるけれど、それだけでときめいたり恋愛対象になったりする感覚は理解ができないと思っています。
出会ってすぐ、この人は恋愛対象、この人は友達、というのが判断できるという人もいるらしいと聞いて、何をもとにそれを判断しているのかさっぱりわからなくて、本当に?と思いました。会ってすぐ判断できるのなんて、すごく苦手な人かそうじゃないかぐらいじゃないか?と私は思います。
世の中の恋のスピードについていけない
見た目で好きになることはないので、一目惚れをしたこともありません。
また、オフ会やバーでタイプの人に出会ってアピールして付き合った、3回目のデートで告白が世間ではちょうどいいタイミングとされているらしい、というような話を聞いて私は、どちらも展開が早すぎると感じます。
数回会って話した程度では相手への理解が足りていないと思うし、もっと時間をかけて仲良くなってからでないと好きになれない私は、そんな短い期間、少ない回数で好きになれるってどういう感覚なんだろうと不思議に思います。
これまで私が誰かのことを好きになったタイミングは、その相手に出会ってから1年~2年弱程度でした。
頑張って恋愛してみよう、好きになれる人を探そう、と意識して頑張ってみても、「気になる人」になるまでに4か月ほどかかりました。これでも私にとってはすごく早い方です。その間に脈なしと思われたのか、恋愛どころじゃない状況になってしまったのか、その人とは音信不通になってしまいました。もし関係が続いていたとしても、ここから「好きな人」になるまではおそらくあと数か月ほどかかったと思います。
好きになるのが早いからといって軽いとか愛が浅いとかいうわけではないと思うのですが、その感覚がどうしてもわからないので、仲良くなる前の人にアプローチをされたとしても私は疑ってしまうと思います。
一度友達になってしまうと恋愛対象として見れなくなるという人もけっこういるらしく、自分とペースが合う人を探すのは思っていたよりも難しいことなんだと気が付きました。
デミロマンティックという概念との出会い
周りが恋愛の話で盛り上がっている場所にいるとき、異性愛前提で話をされているときのような居心地の悪さを感じていることに気が付き、自分が感じている違和感などについて検索してみたり、セクシャリティ診断をしてみたりして、デミロマンティックという概念にたどり着きました。
私のことだ、と思うと同時に、でもそうじゃない人にそれを言っても「普通じゃない?」なんて言われてしまいそうだなと思いました。
おそらくこういう違いなんじゃないか?と想像したものを図にしたのがこちらです。出会ってすぐ→その後 って感じのイメージです。
たぶん、①も②もある人からすると、「自分も友達から好きになることはある」「よく知らない人よりよく知った人と付き合いたいと思うのは普通じゃないの?」となるのではないか?と考えます。
私からすると、①はできないし、②にかかる時間も頻度も違うと思うのですが。
さらに、重要だと思うのが、「信頼関係を築いてから付き合いたいと思う」と「信頼関係を築いてから恋愛対象になる」の違いです。言葉としては似ていますが、感覚としてはだいぶ違うのではないかと思います。
前者は「相手が恋愛対象に入る→信頼関係を築く→付き合いたいと思う」
後者は「信頼関係を築く→相手が恋愛対象に入る→付き合いたいと思う」
という感じでしょうか?
奥手とか真面目、草食系とかそういう理由で時間がかかっているのではなく、そもそも信頼関係を築くまで、恋愛対象として惹かれていないのです。
理解のない人が、「こんな普通のことにややこしい名前をつけるな」といったことを言っているのを見かけたこともありますが、私は自分と同じようなセクシャリティを表す言葉に出会えて楽になりました。
自分の「好き」と多数派の人たちの言う「好き」の違いを見つめ直すきっかけにもなったので、デミロマンティックという概念を発見して名前を付けた方にも、デミロマンティックの感覚を言語化してくれている方にも、とても感謝しています。
私も、私が考えてまとめた内容が誰かの役に立ってくれることがあれば、とても嬉しく思います。
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