
【詩】近づいてみたんだ
彼は一つの白い四角い箱 あるいは白い球に向かって首を垂れている
白い四角い箱も白い球も"真っ直ぐ"を表す
その彼の背中からは荘厳できめ細やかな翼が生えている
そこから"今"という"時"に合わせて変化する虹色の輝きが放たれる
その美しい輝きとあまりの高貴さに人々は多幸感を覚える
とある女の子がその過酷な眩しさになんとも耐えて 彼の翼に触れてその姿を目の当たりにした
彼はまったく箱にお辞儀していた
脳天を真っ直ぐ白い箱に向けていた
その時女の子は知った 人々が翼のまばゆさに満足しているのは嘘だということ
そして彼はまったく人々を見ていないということを
その事実に女の子が涙した時 その涙が白い球となった
女の子はその球を抱きしめている
女の子の背中には尊くて長い整合的な翼が生えている
その翼をとある男の子の瞳孔が捉えた
男の子は一歩を踏み出した
その男の子の親や兄弟や先生や教師はふわりと浮かぶ羽を捕まえて「これは俺が掴んだのだ‼︎」と話す
男の子は一歩 また一歩と 女の子の翼に近づく
羽は取らない
ジリジリとするような怖さだ
胸が苦しくなる尊さだ
男の子は息を呑んだ
「こんな眩しさの中にいるのは嫌だ‼︎」
男の子は今もその少女の翼に近づき続けている
少女の翼とその翼を生む縁となった涙の原因である「彼」の翼
ひいては少女と「彼」にとどまる事を知らない一筋の白い光だけが
男の子の道のりの成否と善悪を知っている