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2024年11月の記事一覧

[創作]影響

[創作]影響

かつて大学からの旧友だった社会人2人が再会した。

「よう、久しぶり。」

「久しぶり、元気してたか?」

「ぼちぼちやってるぜ。そっちはどうよ。」

「もうブログが軌道に乗りまくり。エンジョイ〜」

「ほう、いいな。うまくいってるんだな。」

「時代に恵まれたよ。そっちは公務員、どうよ。」

「今はまだ事務作業だから、そんなに困ることなくやってるよ。」

「ほう、でも事務も最初はむずかったんじゃ

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[創作]気品のある冗談を言う人

[創作]気品のある冗談を言う人

私は彼と恋に落ちた。

はじめて彼を見た時、深い顔をする人だな、と思った。

私は日頃より自分の限界や力不足を感じていて、どうしても高い壁を突き破ることができなかった。

でも彼は常に笑っていた。彼は常に笑っていて、そして彼が言う冗談の節々に感じる知性は、「すべて筋が通っていた」。

私はとても興味を持った。彼は何を見てきたのだろう、彼は一体その若さでその精神にどんな巨魁を抱えたのだろう。

ある

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[創作]か細く生きる花

[創作]か細く生きる花

僕は彼女と恋に落ちた。

彼女との出会いは大学の構内で、授業が被ったことによるものだった。

彼女は黙々とノートを取っていて、僕の大学では(というよりどこの大学でもだとは思うが)そんなすべての文字を書き取るような人は滅多にいなかったので、半ば僕は感心していた。

そのノートは色彩に富んでおり、綺麗な図解と、それでいて膨大な量の書き留めがあった。

それを見た時、「これが女の子なのか」と僕は思った。

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【詩】カタルシスという螺旋

【詩】カタルシスという螺旋

全人類が望む恋の行く先を誰が手に入れよう

罪悪感と連関したノイローゼに

それが自分の努力の証だと気づかされた時に

パッと浮き立つカタルシス

それは一瞬であり

またそして深い

誰もが望む恋の獲得は

社会不適合者のカタルシスにこそある

圧倒的に持たざる者に花開いた精神の世界は

その者に関わる者への心象に憧れを植えるだろう

憧れは"何かを見ている"ということ

彼は何かを見ている

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[創作]大学生男女の会話

[創作]大学生男女の会話

「人生苦なりについて、どう思う?」

その女の子は問う。

男は答える。

「人生苦なりは努力だね。努力したら苦なりになる。努力に目覚めてなければ、それは享楽になるよ。」

「享楽か、つまりは出会いということね。」

「うん。享楽は出会いで、出会いは痛みの感情に薄いことだ。痛みの感情に薄いということは、人生が苦なりではないということだ。」

「分かる、もし本当にその人が苦しんでいるのだとしたら、他

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