見出し画像

「○○未遂を助けた話」


皆さん、こんにちは!

今回も前回同様、私が20歳になったばかりの頃に体験したお話です。

自慢の彼

私が20歳になったばかりの頃。

1つ年下の彼氏がいました。

私と同じホテルに勤めていた男の子で、彼も寮に入っていた為

彼の部屋でほぼ同棲状態。

今で言う「超絶イケメン」の彼氏。(これ本当です!)

私という彼女がいるにも関わらず、会社で相当モテてました。


しかもプライベートでバンドを組んでて、ボーカル&ギター担当だった為、
会社以外でもかなりのモテっぷりだったのです。

彼の秘密とは?

そんなモテモテの彼でしたが、家庭環境はなかなかに複雑でした。

その当時、彼の家族は母親と彼の二人だけ。

父親は彼が幼い頃に自殺。

また昔はお姉さんがいましたが、自分が運転する車で猛スピードを出した結果、道路から湖に車ごと転落して水死。

事故か自殺かは不明。

しかも母親は重度の障害があって、働く事はもちろん、日常生活も不便な程のひどい痙攣が手足にありました。

仕事が出来ない為、生活保護や彼のお給料の一部を実家に入れる形で生活していたんだろうとは思いますが、それでもお母さん1人での生活は本当に大変だったと思います。

でも彼の実家に遊びに行くと、彼のお母さんはいつでも優しく私達を迎えてくれました。

冗談が大好きで、障害にも負けず明るい性格だったのをよく覚えています。

お母さんの友達

彼のお母さんは明るい性格から、お友達が多くいました。

私と彼がお母さんの家に遊びに行く時も、お母さんの友人が来てる時が非常に多く、何回も会っている間に、結局お母さんのお友達と私も仲良くなる、という始末。

その頃はまだ携帯電話が無かった時代で、私とお母さんの友達でお互いの家の固定電話の番号まで交換していました。

さすがに彼のお母さんのお友達と20歳の私では年齢差がある為、実際に電話で連絡を取って遊びに行く、なんて事はありませんでしたが、実は後々
この彼のお母さんのお友達と電話番号を交換していた事が、1人の命を救う事になったのです。

留守番電話

先程もお話した通りその当時私は、会社の寮で彼と同棲状態でした。

なので普段の生活は全て彼の部屋で過ごしていて、自分の部屋には
1週間に1度部屋の換気をしに戻る位。

そしてその時も彼と一緒に休みを取っていましたが、昼間で非常に天気がいい日だったので、
「ちょっと部屋の窓開けて換気してくる!」
と、自分の部屋に一旦戻りました。

そして鍵を開けて自分の部屋に入った直後に、何か音が聞こえました。

「プー、プー」

留守電にしていた電話のメッセージランプが点滅しています。

さっき聞こえた音は、丁度留守番電話が入った音でした。

・・誰だ??

留守電のメッセージランプのボタンを押します。

耳を澄まして録音されたメッセージを聞くと、どこかで聞いた覚えのある声。

「あ!もしもし、○○ちゃん?(←私の名前)
私○○だけど、これ聞いたらすぐ電話ちょうだい!!」

その聞き覚えのある声と名乗った名前で、彼のお母さんの友達だ、とすぐ分かりました。

メッセージは今入ったばかり。

だけど、一体何事!?

しかも1週間に一度しか部屋に戻らないのに、このタイミング。

私は慌てて、すぐに電話を掛け直しました。

不穏な電話

私が電話を掛け直すと、お母さんのお友達はすぐに電話に出ました。

そして私の声を聞くなり

「ごめんね。すぐ○○さん(←彼のお母さんの名前)の家に行ってくれない?さっき変な電話が来たから気になって・・」
との事。

「・・変な電話ってどういう事ですか?」

と尋ねると

「急に電話してきたからどうしたのかと思ったら、
すごく弱々しい声で、今までありがとう・・、お礼が言いたくて。
ってそれだけ言って電話切られちゃったの。
すぐに掛け直しても電話に出なくて・・。
心配だしあなた達の方が家が近いから、すぐ見に行ってくれない?」

との事でした。

話しを聞きながら、胸騒ぎを感じた私。

「分かりました!!」と急いで電話を切り、そのまま自分の部屋を飛び出しました。

そしてそのまま彼の部屋へと戻り、今の件を説明。

彼も一気に顔が蒼ざめ、すぐに2人でお母さんの家に向かう事にしたのです。

人の優しさ

その頃私と彼の内、私だけが車を持ってました。

なので私の車ですぐ向かおう、となった訳ですが、いざ車に乗り込みエンジンをかけようとしたら、何とエンジンがかからない!

長期間乗っていなかった為、このタイミングでバッテリーが上がってました。

まじか・・、と思いましたが、ここで諦める訳にはいきません。

速攻で私は自分の部屋に戻り、電話でタクシーを呼びました。

そして来てくれたタクシーに彼と急いで乗り込み、お母さんが住む町営住宅の住所を告げます。

そしてタクシーは走り出しました。


お母さんの家までタクシーで10分程の距離。

その到着までの間も、私と彼は先ほど来た電話の内容をもう一度話し合っていました。


そして


本当に恐れてる事態が起こってたらどうしよう・・。


あたしたちだけじゃ何も出来ないから、すぐに救急車を呼ばないと・・。

などと話をしていると

「あの~、すみません・・」

と、急にタクシーの運転手さんが話しかけてきました。


続けて

「ごめんね、話が聞こえちゃって・・。

もし良かったら俺待ってるから、そのまま病院に行こう。

救急車呼ぶより、その方が早く病院に行けるから」

との事。

ええ~、なんて親切な人!!と感激。

「すみません、ぜひお願いします!」

とタクシー運転手さんのご厚意に、甘えさせて頂く事にしました。


生まれて初めて見た○○未遂の現場

そんなやり取りをしている間に、タクシーはお母さんが住む町営住宅に到着。

運転手さんが待っていてくださる中、私と彼は走ってお母さんの住む部屋へと急ぎました。

「ピンポン、ピンポン」


玄関のチャイムを押しても

中からは何の反応もありません。


そこで

彼がポケットから合鍵を取り出し、鍵を開けました。

チェーンが掛かってなかった事は幸いでしたが、玄関を開けるとすぐに
物凄い大きないびきが聞こえてきます。


・・ん?寝てる??


とも思いましたが、とにかくお母さんの姿を確認しなくては、と思い

玄関を入ってすぐの茶の間へ。


すると昼間にも関わらずカーテンを閉め切り、

布団を敷いて横になってるお母さんがいました。


仰向けの状態で寝ているようにも見えましたが、

この不自然に大きすぎるいびきは、ただ事ではありません。


彼がお母さんに近寄って全力で揺り動かしますが、

目を覚ます事はなく、ただ大きないびきをかき続けるだけ。


ふと近くのテーブルを見ると、

空になった薬の瓶。


遺書なのか、何か文字が書かれた数枚の便せん。


生まれて初めて見る

目の前で自殺を図ろうとしている現場に、

急に足が震えてきて私は座り込んでしまったのでした。


お母さんを病院へ

急に恐怖心に襲われ、その場に座り込んでしまった私。

そんな私を見た彼は、今入ってきた玄関から外へ走って行きました。


そしてすぐに先ほどのタクシー運転手さんと一緒に戻ってきたかと思うと、

大きないびきをかいたままのお母さんを2人で抱え上げそのまま玄関へ。


「行くぞ!!」という彼の声に弾かれたように私も立ち上がり、走って後を追いました。


お母さんを抱えたまま、そのまま後部座席へ。


そしてタクシーは、そのまま一番近い総合病院へと向かってくれたのです。

現在の解釈


病院へ行った後お母さんは胃の洗浄を受け、大事には至らずすぐに自宅へ帰
る事が出来ました。


自宅に帰るまでずっと付き添っていた私達でしたが、お母さんも落ち着いた為一旦寮の部屋に戻る事に。


そして帰る直前、彼が怒ったように一言。

「何であんな事した?」

彼のその言い方に少し心配にはなりましたが、私も「なぜ?」という部分がやはり引っかかっていた為、静かにお母さんの言葉を待ちました。

すると

1人でこの先の自分の人生を考えていたら、不安でたまらなくなった、

との事。

・・・・・。

確かに

旦那さんや娘さんとの悲しい過去や現状の生活。


又、お母さんの身体が不自由な事も考えると


私はすごくいたたまれない気持ちになりました。


でもその後

お母さんはしっかり彼の顔を見て

「もうこんな事は絶対にしない。」

と、力強く約束してくれました。


あの時は、初めて目の前で見る○○未遂の現場に動転してしまい、

正直何が何だか分かりませんでした。


でも今。

自分があの時のお母さんと同年代になり

少しだけ、お母さんがあの時どんな心境だったかが、分かる気がしてきました。


寂しかったり不安だったり。

日に日に大人になっていく我が娘の姿に

頼もしかったり、又寂しくなったり。


今まで生きてきた年月より、この先の方が短いんだなあ・・、

なんて事を考えて

何とも言えない複雑な気持ちになったり。


確かに色々と不安定になりやすい年代、という事は体感しています。


でも

ネガティブな事に意識を向けても

正直終わりはありません。


だったら

いくつになっても、ワクワクする事に目を向けていたい。


意識して幸せを感じるようになると、

ほんのちっちゃな幸せでも

人はほっこりできます。


心穏やかに、毎日ちっちゃな幸せを感じて生きていきたい。


そんな事を改めて考えさせられた

今回の振り返りでした。





























この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?