はじまり
目が覚めた
まだ暗くて、脳は起きていなくて
それなのに足は彼女が見たいと言ってた海に向かっていた
海がよく見える近くのベンチに座ってただ眺めていた
風が吹いてきて、桜が時々目の前の空気を泳いだ
どれだけ時間が経ったのか、空が黒から藍色に、藍色から水色に変わって、海と空の境目にオレンジの挿し色が見えはじめた
名前を呼ばれた気がした
重い腕がなにかに引っ張られた
今日から通う学校の、夏の制服を着た彼女がいた
寝てる脳が夢を見させているんだと思う
彼女はなにかを言っていた、泣いていた
彼女に手を引かれ、立ち上がったとき、目が冴えて彼女は消えた
着た覚えのない制服を着て、さっきまで座っていたベンチには鞄が置いてあって、握りしめられていた右手には彼女にあげたネックレスがあった