#冬の香り
※フィクションです
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死のうと思った
きっかけはなんにもなくて、なんでもあった
山の方に歩いた
もう使われなくなって、整備も立ち入り禁止もされていない小学校の階段を登った
一年だけ通って、合併して廃校になった
屋上への扉は鍵がかかっていた
近くの音楽室に入って校庭を眺める
死にたくても、死ぬのは怖い
それにたった3階の高さで死ねるのかも不安になってきた
持ってきたスマホで調べてみる
可能性があるだけで確実性は低いか
運が悪ければ重症で生きてるかもしれない
そうそう人が寄ってこない場所だから、そのまま放置して死ぬ可能性はあるけど、わざわざ長く痛い思いはしたくない
道具も持ってきてないけど、他の方法調べてみるか
って思ったのに
相談センターの電話番号とか、自殺しちゃいけない理由とか、馬鹿じゃないの
親が勝手に産んだんだから、私が勝手に終わらせていいんだよ
じゃなきゃ、不公平でしょ
もういいや
窓を開けた
一気に埃くさい室内が換気される
少し強い北風が冬の香りを乗せて入ってきた
開きっぱなしの校門を通るころには手袋もしてない指先がほんのり赤くなっていた