花降る夏
「夏ってさぁひまわりのイメージしかないじゃん、花」
「紫陽花とか桔梗とか百合とか」
「ぁ、ん言われてみればな、まぁあるけど」
「でなに」
「夏にも桜が咲くんだってさ」
「……聞いたことないけど」
「ここの裏の山にさ、年中咲いてる桜があるんだよ」
「へえ」
「今日行ってみる?」
「なんで?」
「僕今日いくから」
「……行ってみるだけだよ」
「ねぇ、こんな、山奥、て、聞いて、ない、っだけど」
「ごめんごめん、そんな体力ないと思ってなかったからさ」
「はぁ……っは、しかも、咲いてないじゃん」
「あそこ、洞穴の中だよ」
「そんなとこ?日光も入らなさそうなのに……」
「まぁまぁ」
「……え」
暑い、暑い、目の前の空気が歪むくらい暑い日だった
【桜の都市伝説】
『山奥の洞穴に年中桜が咲き誇っている
散っては咲き散っては咲く
日の光の届かない暗闇で幻の光を放っている
春でなくても桜に人は攫われる
昔、この山にはーーー』