人形癖〜リナリア〜

去年書いた小説のようなものです
続ける予定でサブタイトルをつけたけど結局続いてない
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   人形癖〜リナリア〜

僕は父が好きでした。
僕が何かして母に怒られても必ず庇ってくれました。
母も優しかったですが、母以上に僕に優しい父でした。
好きなものを沢山食べさせてくれました。
嫌いなものは皿からこっそり取って食べてくれました。
そして母にバレてよく一緒に怒られました。
よく一緒に寝てくれました。
僕は幼い頃暗いところが怖くて大嫌いでした。
でも父に抱き寄せられると安心してよく寝られました。
そんな優しい父は僕が小学生の頃、交通事故で亡くなりました。

僕は母が好きでした。
父が亡くなってからはヒステリーを起こしてよく僕を叩きましたがすぐ正気に戻って抱きしめて撫でてくれました。
ふわふわしてる母の髪はいつもいい匂いがしました。
母はよくお菓子を買ってくれました。
ある日いつものヒステリーを起こしました。
その日は包丁を取り出して僕たちを刺そうとしてきました。
幸い僕たちに怪我はありませんでしたが、母は精神病院に入れられました。

僕は一番目のお兄ちゃんが好きでした。
実柘(みちあ)お兄ちゃんは父と同じくらい優しくしてくれました。
その頃はもう中学に入っていたのでちょっと過保護過ぎないかと思ったほどでした。
でも僕は泣き虫で怖がりだったので父の代わりに一緒に寝てあげると言ってくれた時には嬉しかったです。
僕が落ち込んでいたら優しく撫でてくれました。
実柘お兄ちゃんは就職のために都会へ言ってしまいました。

僕はお姉ちゃんが好きでした。
紫苑(しおん)お姉ちゃんは髪が綺麗で結ばせてもらうのが好きでした。
お姉ちゃんが彼氏さんとデートに行くとき髪を編み込みすると「可愛いねって褒められた」とにこにこしていました。
お礼にクッキーを作ってくれました。
お姉ちゃんが作ったものは何でも美味しかったです。
お姉ちゃんは彼氏さんと結婚して彼氏さんの家へ行きました。

僕は二番目のお兄ちゃんが好きでした。
ちょっとツンデレっぽかったですが一緒にゲームしたりアニメを見たりしました。
どれも楽しくて、時間を忘れるほどでした。
家に菫お兄ちゃんと三番目のお兄ちゃんだけになったときには三人で川の字になって寝ていました。
菫という名前が女の子らしいから嫌いらしいです。
僕たちが綺麗な名前だから好きだと言うと、複雑な表情をして黙ってしまいました。
菫お兄ちゃんは短大に行くために下宿してしまいました。

僕は三番目のお兄ちゃんが好きです。
緑お兄ちゃんは僕より泣き虫で怖がりで菫お兄ちゃんが家を出てからは僕にひっつき虫でした。
一つ上で同じ高校なので登下校でも離れません。
学校では授業以外一緒ですが、家では全く離れません。
ご飯は椅子をくっつけて食べるし、お風呂は一緒じゃないと入らないし、トイレの時もドアのすぐそばで座り込んで待っています。
寝る時もくっついて離れません。
夏はちょっと暑いけど、冬は暖かくて好きです。
休日は菫お兄ちゃんが置いて行ってくれたゲームで遊ぶことが多かったです。
緑お兄ちゃんは家族の中でも一緒に過ごす時間が一番多いです。
ずっと一緒にいてくれます。

僕は幸せです。
僕を想ってくれる人がこんなにいるんです。
母は見舞いに行くといつも果物を切ってくれます。
かなり回復してるようです。
お姉ちゃんからは時々写真が送られてきます。
子供もできたようでどの写真でも楽しそうです。
実柘お兄ちゃんと菫お兄ちゃんはお盆やお正月に帰ってきて一緒に遊んでくれます。
泊まるときは四人で一緒に寝ます。
流石に四人も一緒に入れるベッドはないのでリビングで机や椅子を寄せて布団を敷いて寝ます。
僕はこうしてみんなと一緒に寝るのが大好きです。
寝る前のふわふわした時間が一番好きです。
僕は幸せです。
あったかい中で生きられます。
僕は幸せなんです。
……だから、どうか

壊さないで

僕の××を

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名付けメモ↓
実柘(みちあ) 柘榴の実 六月二十八日生まれ 六つ上
紫苑(しおん) シオン・紫苑 九月二十八日生まれ 四つ上
菫(すみれ) ラベンダー・菫色 五月十九日生まれ 三つ上
緑(みどり) アイビー・ヘデラ・西洋木蔦・黄緑、緑色 一月二十一日生まれ 一つ上

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