親ガチャ? それって真理かも!
【ピエロの手記89 断章77】(手記86を改題・一部を改変)
親ガチャなんてうまいこと言ったもんだ
自分の意思ではどうすることもできない荘厳な現実を
受け入れねばならない心の見事な表現だ
男であることとか女であることや
日本人であることやそうでないとか
そういった事実ならば
なんとか折り合いをつけられるかも知れない
しかし
誕生の時から身に負ってきたハンデは
それゆえに人生を残酷に傷つけても
それゆえに重篤な精神病を患っていても
死の時まで逃れることはできない
まこと 親ガチャは運命を支配する
でも 銀の匙を咥えて生まれてくる人もいる
自分が十指に余る非正規の労働をして
27歳で卒業した大学なるものを
バイトもしないで4年で卒業する人もいる
そういう人は たまたまそんな環境に生まれただけで
親ガチャという不条理がラッキーに作用したに過ぎない
不条理こそが全てを支配しているのだ
* * 白日夢 * *
私はゼロ戦の搭乗員だった
500キロ爆弾を装着し
出発の合図を待っていた
そのとき
勤労動員で飛行場に来ていた女子学生が窓に走り寄って
白い花の付いた1本の小枝を差し出した
驚いた私は押し頂いて微笑みを返した
そのとき 発進の合図が鳴った
風防を閉めて
私は思いっきりレバーを引いた
愛機は一路海に向かって爆走した
特攻という不条理の飛行
しかし 女子学生と交わした微笑みは
不条理を粉砕していた
‟悲しいピエロ”