見出し画像

役になんか立たなくていいんだと思う。いま息をしているだけで。

【ピエロの手記  111】

  「大体 月丸が悪い。
   なんで役に立たないからって、消えるんだ!
   堂々と役に立たないまんま、
   生きてりゃいいのに」
   (畠中恵の小説『たぶんねこ』より)

パリを拠点に世界的に活躍している女流ピアニストと
こちらもパリで活躍している女流画家とは
お互い日本人だということでとても仲良しだ
ピアニストの方が一回りも歳上で耳も不自由なので
絵描きさんは何くれとなくお世話をしてあげた
演奏旅行の時は
飛行機のチケットやホテルの手配
留守中は10匹以上のペットのお世話
何年にもわたって無償の協力が続いてきた

ある時のお茶の席だった
ピアニストが「あなたは役に立つわね」と言ったそうだ
私の親友でもある絵描きさんは
「その時スッと心が冷めてしまって」
以来 縁が切れてしまった、と私に語った

ハサミならば紙が切れなくては困る
切るという役目をしてもらわねばいけない
つまりモノについては役立つ・役立たないは
重要な基準なのだ
しかし
人間については 役に立つ・役に立たない という
そんな視点で視ることが間違っているのだ

何かができるとか 何とかの役に立つとか考えるから
ほんとのことが見えなくなるんだと思う

今日一日なにしてた?
そうだなあ 息してただけかなあ
立派なもんじゃねえか
堂々と開き直ってしまおうぜ
役になんか立たなくても
ただ ある ことが尊いのだという思想
❛無用の用❜ という1句にちゃんと存在している

 
 ‟悲しいピエロ”
  (㊟グーグルの ❛無用の用❜ の解説は、2つの説の1つに
   偏していて不充分である)


いいなと思ったら応援しよう!