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  スマホが欲しい

【ピエロの手記34  断章22】

課題は
「単語の意味をスマホで深いところまで調べてくる」こと
これは困った
スマホ持ってない
クラスで1人だけだ
みんな親に買ってもらったと言っている
こんな時 自分は施設にいるのだな、と思う

児童養護施設の高校生
スマホの所有率は69%
約3割の高校生は持っていないのだ

園長は言う
「一人当たり、国から支給される措置費(生活費)は5万円
 これで食費から交通費に至るまで、足りないのですよ
 とてもスマホ代は出してあげられません」

これは大きな問題だ
さしあたり私は地区の市議会議員の事務所を訪ねた
留守番の人が「市民の声を聴く日が〇〇日にありますから」と言った
私は、119番に電話したら「今日は消防署は休みです」と言われたくらい
拍子抜けした

市議は言った
「それは問題ですね
 まず実態調査をしなくてはなりません
 実態をふまえて議会で市長に提言すれば
 予算に反映されるかもしれません
 でも措置費は国の所管ですからね
 一応 議会の事務局に
 実態調査をするよう言っておきます」

またここへ返ってくる
私にできることは何か、と

ボクサーの武器がパンチであるなら
私の、武器ともいえない武器は、詩を書くことだ
頼りなげな、ささやかな、人目にもつきにくい
小さな詩を書くことだ

『スマホが欲しい』という声を大きく伝えるために


   "悲しいピエロ”



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