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ダーク・ポップの女王復活。ビリー・アイリッシュ新作「HIT ME HARD AND SOFT」は暗くて踊れて最高!
Billie eilish(ビリー・アイリッシュ)といえば”bad guy”だ。
これは今でも間違いなくそうで、「今」の感覚からすると古かったり聞き飽きたかもしれないけど、後世に残すべき一曲なのは間違いない。
そして、このアルバムに”bad guy”以上の曲があるかと言われれば間違いなく、残念ながら、ない。
ただ、”bad guy”が収録されたアルバム「WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?」(以下WDWG)が全くキャッチーではなく、ただの異様に暗くて陰鬱なものでしかなかった(それゆえに鮮烈だったとも言える)ことに比べると、今作はかなりキャッチーだし、ダンサブル。踊れる。
前作「HAPPIER THAN EVER」がなんか薄味で、というか先行曲群を聞く限り時点でもかなり散漫な印象でいまもちゃんとは聴いてないんだけど、今作はかなり暗く雰囲気がまとまってて好印象。
“bad guy”のダブステップ、トラップ路線を継承しベースラインが印象的な”lunch”、”CHIHIRO”は本アルバムの白眉と言っていい。ダンサブルでポップ。
まさにダーク・ポップに相応しい。
少しソウルっぽい”skinny”や、荘厳さすら感じさせる”BLUE”もいい。僕としてはこの4曲が今のところフェイバリット。
アルバム全体として言えるのは、2024年の音楽でありながら、どこか70s、80sっぽい雰囲気があったり、時代をまたいだアルバムという感じがすること。
上述のトラップ、ソウル以外にもやはり前作に引き続きロックの影響も感じられ、シューゲイザー的であり、EDMさらにはクラシック音楽の要素すらあり、ジャンルレスにも感じられてWDWGより音楽的にもかなり幅が広く、暗くはあるもののかなりカラフルに感じられる。
また、ストリングスが多用とは言わないまでも効果的に用いられていることもあり、かなり荘厳というか、ある種の静謐さを感じられるアルバムになっている。
今年は欧米の女性アーティストのビッグネーム達、ビヨンセ、テイラー・スウィフト、アリアナ・グランデ、デュア・リパがかなりポップな傑作アルバムを出しているけど、ビリーがここまでポップではありながらもオルタナティブな内容に振り切っているのは本当に凄い。
ディーバ達のポップ天下取り合戦に
「わたしそういうのいいっすわ」
と宣言するかのごとく下りて(もともとそこで戦ってはいないけど)なおかつポピュラリティを維持するのはカッコいい。カッコよすぎる。
暗くてオルタナティブで、というとやはりRadiohead(レディオヘッド)が思い浮かぶけど、なぜ彼らが世界各国の音楽フェスのヘッドライナーをやれるほど世界的なアーティストでありながらもメジャーではない理由がわかる。
ポップでもなければ、ダンサブルでもないからだ。
その点、ビリー・アイリッシュは踊れる。やはり体に来る音楽は偉大だ。
ただ、日本でこのアルバムが当たるかと言うと微妙だと思う。日本はサビ音楽じゃないとウケない。サビやヴァースにフックがないと売れない傾向がかなりあって、そういう意味では地味なアルバムだから。
でも、そもそものビリー人気が破格なアメリカでは間違いなく当たるんじゃないかと思う。
正直、前作を出した時にはかなり苦しいのではないかと思っていた。音楽性だけじゃなく、ビリーのファッション、発言含めて迷走してる気がしたから。
最近でもバイセクシャルのカミングアウト(話題作りという話もあるけど)もありつつ相変わらず危なっかしいビリーではあるけど、傑作を作ってくれたことには感謝したい。
そして本作で荘厳さすら手に入れたビリーが次はどこへと向かうのか。楽しみにしたいと思う。
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