【第24回】マネロン対策強化の背景は何か 暗号資産を規制すれば防止可能 

 金融庁は、2025年1月から全国の金融機関を対象にマネーロンダリングなどの対策の強化に取り組んでいるかを調査していくという。マネーロンダリングを防ぐにはどう対処すればいいのだろうか。

 金融庁がマネーロンダリング対策の強化に踏み切った背景には、2021年8月にFATF(金融活動作業部会)が金融機関などの監督・予防措置などに課題があるとして日本を実質的に不合格とする報告書を発表したことにある。

 FATFとは、マネー・ローンダリング/テロ資金供与対策(AML/CFT対策)に関する国際間協力を推進するために設置された各国政府間による会合・グループである。

 FATFは、1989年に薬物犯罪に関するマネー・ローンダリング対策における国際協力強化のため、先進主要国を中心として設立され、1990年に各国が刑事法制及び金融規制の各分野でとるべきマネー・ローンダリング対策の基準を策定した。これが現在のAML/CFT対策の基盤となるFATF「40の勧告」である。

 この「40の勧告」をベースに各国のAML/CFT対策への取り組みを審査・評価した結果、日本は実質的に不合格の「重点フォローアップ国」と判断された。

 では、マネーロンダリングを防ぐにはどうしたらいいのだろうか。結論からいうと、暗号資産を規制すればほとんど防ぐことが可能である。

 現在、マネーロンダリングの主流は暗号資産である。その理由は、暗号資産の匿名性と国境を跨いだ移動の容易さはマネーロンダリングにとって都合が良いからだ。

 伝統的なマネーロンダリング手法の工程は主に①プレイスメント、②レイヤリング、③インテグレイションがある。

 ①は、犯罪収益や脱税した資金を現在の金融システムに乗せる作業のことで、例えば、現金の売上が多い事業を利用してそこに犯罪収益などを混ぜる行為である。

 ②は、資金の源流を不明にさせる作業である。金融システムに乗った大きな資金は、原資が課税対象である可能性や犯罪で得た収益である可能性があるため必ず原資の追求を受ける。例えば、巨額な資金の場合は石油取引の決済などが利用され、100万ドルの取引の中に1万ドルを紛れ込ませるような作業をする。

 ③は、無事金融システムに乗って合法な金融取引に紛れ込ませることができれば、そこから正規の経済活動(事業・投資・決済)へ資金を使う作業のことである。その後、経済活動に投入した資金によって生まれた利益を正当な手続きに従って申告・納税を行えば、マネーロンダリングの完成となる。

 これらの伝統的なマネーロンダリングを簡単にしたのが暗号資産である。つまり、暗号資産を規制すればほとんどのマネーロンダリングは防ぐことができる。

 

 

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