【第2回】イギリスがTPP加盟へ 貿易自由化でGDPは増加する!

 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に、イギリスが加盟することで、3月中にも大筋合意するという報道があった。イギリスがTPPに加盟すれば、加盟国は12カ国になる。TPPは、加盟国の間で関税率の引き下げなどが行われる自由貿易を推進する協定だ。では、関税率を下げるとどのようなメリットがあるのか。

 ある農産品について国内供給だけの単純なケースで考えてみよう。上図は、関税がかかった場合である。その場合、価格はP1、取引数量はQ1となる。このとき、P1よりも高い価格でも買っていいと思う人もいる。そういう人は、P1の価格で買うことができると「得」をする。これを「消費者余剰」という。上図では、三角形A・P1・E1だ。

 一方、生産者にしてもP1よりも低い価格で出荷してもいいという業者もいる。P1で出荷できるため、そうした人にとっては「利益」になる。これを「生産者余剰」といい、三角形P1・B・E1で表せる。消費者余剰と生産者余剰の合計は、この農産品取引のメリットであり、三角形A・B・E1で表せる。

 次に、貿易制限を撤廃し、貿易自由化を行った場合を考えてみよう。そうすると海外からの安い農産物の輸入が増えて、価格はP2まで下がり、取引数量はQ2まで増える。

 価格低下のメリットによって、消費者余剰は、三角形A・P2・E2へと増える。貿易自由化前との差は、台形P1・P2・E2・E1だ。

 生産者余剰はやや複雑だ。国内生産者と海外生産者の合計では、三角形P2・C・E2となる。このうち国内生産者余剰は、三角形P2・B・Dだ。貿易自由化前と比べて台形P1・P2・D・Eだけ海外農産物の輸入に押されて縮小する。国内生産者の生産者余剰の縮小は、その生産者の所得減少になり、GDPを押し下げる。なお、海外生産者の生産者余剰は、三角形P2・C・E2からP2・B・Dを除いた四角形D・B・C・E2となる。

 貿易自由化によって、利益を受けるのは国内消費者と海外生産者で、打撃を受けるのは国内生産者だ。現実的には、国内消費者はメリットをあまり実感できない一方で、国内生産者はデメリットを大きく感じるため政治問題が生じる。

 しかし、国内消費者の利益額の台形P1・P2・E2・E1は、国内生産者の損失額の台形P1・P2・D・Eより必ず大きくなる。つまり、国内生産者の損失は、国内消費者の利益額の一部で必ず穴埋めできる。仮に全部を穴埋めしても、国内消費者は貿易自由化の前より状況は良くなる。要するに、TPPでGDPは増加するのだ。

 以上は国内に限った話だが、貿易自由化は相互主義なので、海外生産者が国内から受けた利益額の四角形D・B・C・E2に対応する利益額を日本の輸出業者も受けられる可能性がある。食の安全や環境面を考慮すると、供給曲線などに多少の修正は必要になるだろうが、それでも結論はそれほど大きくは変わらないだろう。

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