【第15回】未成熟の脱工業化と言われるインド経済は今後どうなるか
中国を上回る経済成長を示し、グローバルサウスの代表格であるインドの経済が注目されている。インド経済の特徴は何か。また、インド経済の今後はどうなるか。
インドの経済成長の主因は力強い消費だ。インドの最終消費支出(年率成長率)の推移を見ると、7.6%(2017年)7.6%(2018年)4.9%(2019年)-4.5%(2020年)10.4%(2021年)6.4%(2022年)と、コロナショックを除くと非常に高い水準だ。また、半導体などの国際競争力の強いサービス産業もインド経済を牽引している要因の一つだ。
しかし、インドは製造業が他国と比較して弱い。従来の経済成長は、農業などの第一次産業から製造業などの第二次産業、さらにサービス産業である第三次産業へと主導役を代えていく。これを「ペティ・クラークの法則」という。
多くの労働者が労働集約的な製造業部門で分業や技術革新のノウハウを学び、それを知識集約的なサービス産業に活かしていくことが望ましいのだが、インドはしっかりとした製造業の成長を経ずに経済成長をしていることから、未成熟な状態で国際競争力を得てしまっている。これを「未成熟の脱工業化」という。
インド経済のこれからの課題は製造業だ。モディ首相は2014年に「メイク・イン・インディア」を掲げ、投資環境の整備を通じて、直接投資誘致を促進し、GDPに占める製造業の割合を15%から25%に引き上げる目標を示した。しかし、まだ目標達成には至っていない。逆に言えば、伸びしろは十分にあるということだ。
インドは民主主義国家だ。イギリスのエコノミスト誌が公表している各国の民主主義指数(0~10、10が最高)によると、インドは「7」程度とされており、民主主義指数の基準となる「6」以上を超えている。
民主主義と経済成長には強い関係がある。政治的な独裁は、自由で分権を基調とする資本主義経済とは長期的には相いれないというのは、ノーベル経済学賞学者のミルトン・フリードマンが『資本主義と自由』で喝破している。
ここ25年、中国が世界経済で台頭し、同時に安全保障でのプレゼンスを高め、民主主義対専制主義の対立になった。ところが、中国に代わってインドが躍進すると、専制主義が後退するので、未来は明るいだろう。
インドは民主主義国家なので、経済安全保障の考えをする必要はあまりなく、経済のデカップリング(切り離し)もなくなるだろう。インドは英国圏でもあり交易が容易に始められ、インドとの経済を深めると成長の果実を受けられるので、インドは中国に取って代わるのではないか。
安倍晋三元首相が最も早く打ち出した「自由で開かれたインド太平洋」を前進させて中国などの専制主義国家と対峙していくためにも、日本やアメリカなどの民主主義国家にとってインドは経済や安全保障の面で重要なパートナーといえる。