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アリの後ろ姿
ベランダで、小さい何かの死骸に小さいアリがむらがっているのを発見した。雨の日の早朝だというのにアリは働き者だ。ひまでたまらないのでしばらく見ていることにした。死んでいる小さい何かは多分クモだと思われたが、そのからだが隠れてしまうほどにアリがたかっている。と、少し離れた所からぽつりぽつりと同種のアリが現れはじめた。ぞろぞろでないのがまた面白い。
しばらく見ていると、何匹かは帰りはじめた。来るのと帰るのとが同じくらいの数になったなァと思っているうちに、その数はますます増えてにぎやかになった。途中ですれ違ったりコッツンコしたりする。「一体どうなってるの?」と、本体のかたまりを虫眼鏡でのぞいて見たが、ここのアリ達はクモに取りついているばかりで何をしているのやらわからない。
でも、よくよく見るとどうやら持ち帰らせるためにクモのからだを小片にして運搬役に渡しているようだ。手ぶら(口ぶら)で走って来て、荷物をくわえて走り去る姿を虫眼鏡で確認した。大きすぎるんじゃないのと思うようなのをよろめきながら運んでいくのもいる。走って行く姿が急に小さくなるので驚いたが、はたと思いあたった。横から見ればアリの身長だが、むこう向きになればからだの幅を見ることになるのだから当然なのだ。
しばらくつき合ったが、しびれをきらして観察は中止。昼食後見に行ったら、クモはあとかたもなく消えていてアリの姿もなかった。今日のアリ達は大きい獲物をエッサエッサと力を合わせて運んでは行かなかった。
最後をどうするかを見たかったのに残念だった。多分、最後の最後まで小さくして運んだのだろう。「これでいいな」「ウン」とか云いながら、リーダー格のアリ達が確認して帰って行ったに違いない。彼等の後ろ姿はさぞ格好よかったことだろう。