イビツ

「君はさ、僕の母を殺したわけだけどどんな気分だった?」
 その顔は怒りでも、好奇心に満ちた顔でもなかった。雑談でもしているような力の抜けた言ってしまえば普通の顔、真顔であった。私は恐らくこれから罵詈雑言を浴びせられるのではないか、と思っていたのだが拍子抜けであった。
「ね、ね、どんな気分だった?早く教えてくれよ!」
 嬉々として話す彼を見て思わず私まで気が昂りそうになったが、冷静になればというか
紛れもなく私は殺人犯なのであった。
「どうだろうな、気が動転していてどういう感情であったか正しく表現できないな」
「え?だって殺したくて殺したんでしょ?だったら爽快だった、とか快感だったわけではないの?」
「いや、正常じゃなかったんだ。正常であれば人なんか殺せるもんか。」
「え!じゃ殺したくもないのに殺したんだ!馬鹿だねぇ。」
 彼は無邪気に笑って見せた。やはり私は気になった。どうも彼の態度が気になる。この私がこのような質問をするのは相応しくないのではないのかとも思ったのだが、彼の態度で場が話している内容に反して少しばかり緩んでいたからか思わず聞いてしまった。
「あなたは母が殺されて悲しくないのですか。」

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