世紀末トーナメントのオリカ運用考察
皆さん初めましての方は初めまして、そうでない方は前回までの記事を読んでいただきありがとうございます。その辺の決闘者の衣玖(いく)と申します。
今回は「本体」氏の投稿していた遊戯王ADS動画シリーズである『遊戯王ADSで世紀末トーナメント』で登場するオリジナルカード(以降オリカ)について現代遊戯王での運用を考察する記事です。
詳細なルールなどは元動画をご覧いただけると幸いです。
簡単に言うと、投稿当時(2016年10月末)の遊戯王OCGに存在した一部テーマに投稿者の考案したオリカ1種類のみを投入してトーナメント形式でデュエルしていく動画となります。
サイドデッキは存在せず、メインデッキのみで先攻と後攻を交互に繰り返し、2勝差あるいは同点の引き分け後の1勝差がついたところで決着という方式です。
それではテーマ毎のオリカを見ていきましょう。
「インフェルノイド」
《煉獄の癇魃》
永続魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
①このカードの発動時の効果処理として、自分のデッキの上からカードを6枚めくる。その中に「インフェルノイド」モンスターがあった場合、それらのカードを全て墓地へ送る。残りのカードはデッキに戻してシャッフルする。その後、この効果で墓地へ送ったモンスターの数によって以下の効果を適用する。
●1体以上:デッキから「インフェルノイド」モンスター1体または「煉獄」魔法・罠カード1枚を手札に加える。
●2体以上:相手フィールドの魔法・罠カードを2枚まで選んで持ち主の手札に戻す。
●3体以上:このターン、相手はモンスターの効果を発動できない。
●4体以上:デッキから「インフェルノイド」モンスターを4体まで墓地へ送る。その後、自分の手札・墓地から「インフェルノイド」融合モンスターによって決められた融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚できる。
②このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、「インフェルノイド」モンスターを自身の効果で特殊召喚する場合、墓地から「インフェルノイド」モンスターを除外できず、代わりに除外状態から墓地に戻さなければならない。
③自分メインフェイズに発動できる。魔法&罠ゾーンのこのカードをそのままセットする。
要約するとエクストリーム坊主めくりカードです。
まず①の効果により、ノーコストで発動した上で6枚までのランダムな墓地肥やしができます。
それに伴い、「インフェルノイド」モンスターの落ちた数によって効果が追加されていきます。
1枚でも落ちればサーチです。
めくった「煉獄」魔法・罠カードは墓地へ送られないため、欲しいカードはちゃんとサーチできます。
困るのは《インフェルノイド・デカトロン》が全て落ちてサーチできない場合くらいでしょうか。
2枚落ちれば相手のバックを飛ばせます。
バウンスですがそのターン中に勝負を決めれば関係ありません。
3枚落ちると禁止カードである《外神アザトート》と同等の拘束力を得られます。
これを止めるためにはこのカードの発動そのものを止める必要があります。
そして4枚以上落ちるとさらに墓地を肥やした上で「インフェルノイド」融合モンスターの融合召喚ができます。
出せるモンスターは《インフェルノイド・ティエラ》だけですが、そちらも強力な効果を持つため墓地融合ができるこのカードは立派な補助カードとなります。
自身の効果の最大値では当然ながら、《名推理》などの墓地肥やしカードと組み合わせることで容易に《インフェルノイド・ティエラ》のハンデス効果が狙えるでしょう。
狂った墓地肥やし性能に対して、代償が無いわけではなく②の効果が一応デメリットとなります。
本来ならば墓地から除外することで特殊召喚する「インフェルノイド」モンスターを、除外から墓地に戻さなければ特殊召喚できなくなります。
墓地リソースが回復する一方で、このカードを退けなければ墓地リソースが肥えていても役に立たないのでなんとかしてこのカードを退けたいですね。
③の効果がその自身を退ける効果です。
次のターンまで残り続ければ再発動によって①の効果によるエクストリーム坊主めくりが再び行えます。
徹頭徹尾デッキをぶん回すことのみに全力を注いだカードであり、ノーコストで発動するにしてはあまりにも強力な1枚でしょう。
元動画の企画段階では《煉獄の狂宴》がOCGに登場していたものの、【推理ゲート】が軸の【インフェルノイド】にこのカードを搭載したため不採用でした。
考察
ここからは現実に存在した場合の考察となります。
なおカードを作成した「本体」氏の考えも利用して考察していきます。
まず【推理ゲート】軸の【芝刈りノイド】を構築することを考えてみましょう。
《隣の芝刈り》は《煉獄の狂宴》と同期のため既に登場していますが、2016.4.1〜のリミットレギュレーションで《名推理》《モンスターゲート》の双方が制限カードに指定されているため、【インフェルノイド】は2016.1.1〜のリミットレギュレーションを選択しました。
それにより《隣の芝刈り》《煉獄の狂宴》の双方とも存在しないカードプールでの構築を強いられていました。
現在はどちらも無制限であり、《隣の芝刈り》が準制限であること以外はフルパワーのためちょっとは考えてみてもいいはずです。
元のデッキレシピですが、モンスターの採用枚数は《煉獄の癇魃》で「インフェルノイド」モンスターを4枚以上めくれる確率がギリギリ50%を超えるラインで考えられています。
具体的にはメインデッキ40枚に対して「インフェルノイド」モンスターの数が24枚ならば初手の「インフェルノイド」モンスターの数の期待値は3となります。
すると逆説的にデッキ内の「インフェルノイド」モンスターの数は21枚となり、デッキ枚数35枚から「インフェルノイド」モンスター4枚以上をめくれる確率は約54.4%となります。
これが1枚でも減ると、確率は約48.0%となるため1/2を下回り不利な運ゲーを強いられます。
この時から「インフェルノイド」モンスターは追加されていないため、採用できる「インフェルノイド」モンスターの数は全種類フル投入でも33枚となります。
これを基にデッキ枚数を考えると、最大でも56枚が限界でしょう。
しかしそれでは初手で引ける「インフェルノイド」モンスターの数の期待値が3を下回るため、実際には55枚デッキになると考えられます。
その上で一旦纏まったデッキレシピがこちらになります。
《煉獄の癇魃》は《スマイル・ワールド》で代用しています。
具体的には「インフェルノイド」モンスター全種類3枚ずつで33枚。
《煉獄の癇魃》とサーチ用の《煉獄の消華》が3枚ずつ。
《名推理》および《モンスターゲート》とそれぞれがサーチ可能な《左腕の代償》が3枚ずつ。
《隣の芝刈り》も2枚積めるだけ積みます。
あとは手札誘発を使われた時用に《三戦の才》をフル投入し、《煉獄の虚無》と《煉獄の狂宴》を挿せば完成です。
あとは《煉獄の癇魃》を含む坊主めくりカードをひたすら叩きつけて宇宙を目指すだけです。
簡単ですね。
現環境で戦えるかと問われると少々厳しいでしょう。
爆発力はあるので常に苦戦を強いられるようなデッキではありませんが、《灰流うらら》を筆頭に様々なメタカードが飛び交う現環境では上振れても快勝できるケースは珍しいと考えられます。
「エヴォル」
《進化の到達点》
フィールド魔法
このカード名はルール上「ジュラシックワールド」としても扱う。
①このカードがフィールドゾーンに存在する限り、以下の効果を適用する。
●自分が「進化」魔法・罠カードを発動する度に、デッキから「エヴォル」モンスター1体を特殊召喚する。この効果は1ターンに2度まで適用できる。
●自分が「エヴォルカイザー」XモンスターのX召喚に成功する度に、デッキから「進化」魔法・罠カード1枚を手札に加える。この効果は1ターンに2度まで適用できる。
②表側表示のこのカードがフィールドを離れた場合、以下の効果を適用する。
●自分の手札・フィールドのモンスターを全て墓地へ送る。
動く度にフィールドにカードが増えます。
まずは効果外テキストとして、カード名を《ジュラシックワールド》としても扱います。
《進化の到達点》と《ジュラシックワールド》の双方として扱うため、「進化」魔法カードである利点を失わずに《キラーザウルス》からサーチができます。
代償として本家《ジュラシックワールド》の採用枚数が減ってしまいますが、どうせちょっと強い《荒野》でしかないので誰も使わないですね。
①の効果に2つの効果が内蔵されており、それぞれが1ターンに2度まで適用できます。
前半の効果では「進化」魔法・罠カードの発動をトリガーに「エヴォル」モンスターをリクルートできます。
「進化」魔法・罠カードは基本的に「エヴォル」に関連するカードで占められていますが、「進化薬」カードも内包している他《神の進化》《進化する翼》《超進化の繭》《進化する人類》といったどうでもいいカードも含まれています。
なお《ミュートリア進化研究所》は同じフィールド魔法のため共存できません。
なぜかこのカードの発動時にもリクルートできる裁定のため、発動するだけで「エヴォル」モンスター1体をリクルートできます。
「エヴォル」というテーマはOCGには存在しませんが、「エヴォルド」と「エヴォルダー」、そしてテーマでも何でもない《エヴォルテクター シュバリエ》と《エヴォルテクター エヴェック》が該当しています。
基本的には《エヴォルダー・ウルカノドン》を使い回すことで盤面を広げて、「エヴォルカイザー」モンスターを並べる展開をすることになります。
後半の効果ではそうやって「エヴォルカイザー」を並べることで「進化」魔法・罠カードをサーチできます。
これも1ターンに2度まで適用できるため、最大で2枚までサーチできます。
サーチ先の筆頭候補は《進化の特異点》であり、X素材として使用した「エヴォル」を再びX素材にして新たな妨害を用意できます。
②の効果は明確なデメリットですが、《エヴォルダー・ウルカノドン》の展開のために一度フィールドをリセットすることが利点となることもあるため、一長一短でしょう。
世紀末トーナメントにおける基準となった強さのカードらしいですが、明らかにバグってる強さのカードがもっとあるので調整ミスのような気もします。
考察
まず《進化の到達点》の②の効果ですが、筆者としてはこれは任意効果にすべきだったかなと考えています。
自分から退けて展開する分にはメリットですが、《サイクロン》を連打されるだけでフィールドが壊滅する恐れがあるのはやはり危険です。
展開できるのが《エヴォルカイザー・ラギア》なので特別脆いカードというわけでもありませんが、それにしてもデメリットが強烈すぎて不安要素が残ります。
さて、現在では《魂喰いオヴィラプター》や《幻創のミセラサウルス》といった非常に強力な恐竜族が増えているため、わざわざ【エヴォル】で組む理由がほとんどありません。
冷静に考えてみてほしいのですが、
《エヴォルカイザー・ラギア》
《エヴォルカイザー・ラギア》
《エヴォルカイザー・ラギア》
《エヴォルカイザー・ドルカ》
《エヴォルカイザー・ドルカ》
による7妨害
《召命の神弓-アポロウーサ》ATK2400
《アーティファクト-デスサイズ》
《究極伝導恐獣》
によるEXデッキ封殺と4妨害
上記を比較した際、用意している妨害数だけで見れば前者の方が層が厚いですが、ここまで展開するためには手札5枚が噛み合った場合に限ります。
具体的には
・《進化の到達点》
・発動条件の無い「進化」魔法カード
・《エヴォルダー・ウルカノドン》以外の「エヴォルダー」1体
・《テラ・フォーミング》《化石調査》《強制進化》《多様進化》《進化の特異点》の中から2枚(《化石調査》《強制進化》のみダブってOK)
という手札である必要があります。
幸か不幸か《進化の到達点》の①の効果はどちらも永続効果でありチェーンブロックを組まないため《幽鬼うさぎ》も《灰流うらら》も刺さらないという強みこそありますが、除去されるとフィールドが壊滅する爆弾を残したままターンを返すことに不安が残ります。
それに比べると現在の【恐竜族】は《ベビケラサウルス》《プチラノドン》をなんとかして破壊できればそこから展開できます。
ある程度手札の自由度が高く、《墓穴の指名者》による手札誘発のケアも可能なため柔軟に動くことができます。
少なくとも手札5枚フルセットである必要はありません。
《進化の到達点》を中心とした【エヴォル】に新規カードを投入してみると、《エヴォルダー・リオス》は《進化の特異点》をセットできるため手札の1枠は誘発対策に割くことができるでしょう。
しかしながら手札4枚での展開では安定性も担保しにくく妨害に弱いため、《進化の到達点》を使用しない展開を考えた方が賢明ではないでしょうか。
まさか世紀末トーナメントのオリカでは力不足だと感じるとは思いませんでした。
元の地力が低いことに加えてフィールドが壊滅するデメリットを負わされていることを考慮すると仕方のないことなのかもしれません。
「Em」
《Emヒキグルミ》
ペンデュラム・効果モンスター
星4/水属性/魔法使い族/攻1000/守1000
【Pスケール:青3/赤3】
このカード名のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
①自分メインフェイズに発動できる。お互いのPゾーンのカードを全て破壊する。その後、この効果で破壊したカードの数によってそれぞれ以下の効果を適用できる。
●1枚以上:デッキから「Em」モンスター1体を墓地へ送る。
●2枚以上:デッキから「Em」Pモンスター1体を選び、自分のPゾーンに置く。
●3枚以上:デッキから「Em」モンスター1体を特殊召喚する。
●4枚:デッキからPモンスター1体を手札に加える。
【モンスター効果】
このカード名のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。
①このカードが特殊召喚に成功した場合、自分フィールドのカードを2枚まで対象として発動できる。そのカードを破壊し、破壊した数だけデッキから「Emヒキグルミ」以外の「Em」モンスターを特殊召喚する(同名カードは1枚まで)。
《EMペンデュラム・マジシャン》と《揺れる眼差し》を足したカードです。
元々【EMEm】として運用することを想定しているため、「Em」のオリカというよりは【EMEm】のオリカとなります。
P効果は《揺れる眼差し》の強いバージョンです。
1枚でも破壊できれば「Em」を墓地へ落とせるため、《Emトリック・クラウン》の自己再生や《Emダメージ・ジャグラー》によるサーチに繋げられます。
当然自身もカウントに含まれるため、このカード1枚だけでレベル4を1体フィールドに用意できることと同義となります。
2枚破壊できると「Em」PモンスターをPゾーンに置くことができます。
このカードを含めて3種類の「Em」Pモンスターが存在しますが、筆頭候補はやはり《Emヒグルミ》でしょう。
3枚破壊できると「Em」モンスターをリクルートできます。
《Emスティルツ・シューター》のリクルートから《永遠の淑女 ベアトリーチェ》に繋げる動きも組み込むことはできますが、3枚破壊のためには相手のカードも要求し、メインデッキ・EXデッキ共にスロットが足りないことから素直にレベル4モンスターを出した方が賢明です。
そして4枚破壊できるとあらゆるPモンスターをサーチできます。
万能サーチは強力ですが、【ペンデュラム召喚】のミラーマッチでなければ適用しにくい効果なのであまりアテにはできません。
モンスター効果は概ね《EMペンデュラム・マジシャン》ですが、なぜかサーチではなく「Em」をリクルートする効果になっています。
破壊された場合にカウンター罠をサーチできる《解放のアリアドネ》や、同じリクルーターの《Emヒグルミ》を破壊することで莫大なアドバンテージを稼げる意味不明な効果です。
総じて【EMEm】の潤滑油のようなカードであり、あらゆる手札誘発を貫通できるパワーを備えたカードと言えるでしょう。
考察
元のデッキレシピですが、《Emヒグルミ》《EMモンキーボード》が共存しつつも《星守の騎士 プトレマイオス》が禁止カードとなっているカードプールが選択されています。
その分《解放のアリアドネ》《神の通告》が登場しているため、先攻展開の圧は高めです。
およそ何を引いても展開できることが【EMEm】の強みですが、それはあくまで手札誘発があまり多くなく先攻展開に成功した者勝ちだった時代の勝者の理論です。
「エヴォル」でも似たようなことを論じましたが、手札をフルに使わなければ展開できないデッキは手札誘発による妨害を投げられるだけで機能停止するケースが散見されます。
Pテーマの強みはマストカウンターらしきものを連打することで手数による誘発の貫通を狙えることですが、単体では手札で腐る《ジゴバイト》《Emハットトリッカー》以外の非Pモンスターやカウンター罠がちらほらと採用されています。
それはつまり手札誘発による妨害を投げられた際にそれらの枚数分だけハンデスされているに等しく、良くも悪くもコンボパーツの域を出ません。
一方で《外神ナイアルラ》から《外神アザトート》の着地までをP召喚より前に行えれば手札誘発の山など無に等しく、《無限泡影》《タイフーン》など一部の罠カードだけに注意すればいいという強みもあります。
要は《外神アザトート》を立てる前にいかに手札誘発を踏まないかが鍵ということになります。
「本体」氏は安易にデッキ枚数を増やすことは事故率を上げることになるとしてデッキ枚数を40枚に絞っていましたが、OCG環境の頃の【EMEm】に40枚構築はほとんど存在せず、42〜45枚程度で組まれたものが多く見られました。筆者も44枚ほどで組んでいた記憶があります。
このカードを加えて現代風に【EMEm】を組みたかったのですが、いくつかの問題が発生しました。
まずは《EMモンキーボード》《Emヒグルミ》の双方が禁止カードである点です。
前者は海外で制限カードに復帰していますが、筆者は日本人なので日本のリミットレギュレーションを基準に考えます。
正直《EMモンキーボード》の存在は半分くらいどうでもいいのですが、《Emヒグルミ》が不在であることから相対的にこのカードのパワー自体も下がっています。
続いて制圧力に長けたランク4のXモンスターが軒並み規制されている点です。
《No.16 色の支配者ショック・ルーラー》はもちろんのこと、展開の潤滑油である《ラヴァルバル・チェイン》や《外神ナイアルラ》から出すことができ相手の手札誘発を全て踏み倒せる《外神アザトート》といったカードが使用できないことから先攻展開では主にリンクモンスターを展開することになるでしょう。
するとレベル4を横に並べられる【EMEm】の利点は小さくなり、わざわざ【EMEm】を組む必要性が乏しくなります。
さらに新マスタールールおよびマスタールール(11期)に移行したことが原因でエクストラモンスターゾーンの新設と同時にPモンスターのEXデッキからの大量P召喚ができなくなりました。
EXデッキを肥やしてまとめて展開してきた従来の【ペンデュラム召喚】にとっては大きな痛手であり、リンクモンスターの併用を前提とすることからEXデッキの圧迫が激しく、あらゆるランク4モンスターによる対処を図ることが困難になります。
そしてこれが一番の問題なのですが、そもそも現在の【EM】が単体でも戦えるほどのパワーを得ており、【EMオッドアイズ】や【EM魔術師】で組んだ方が【EMEm】よりも強く対応力も高いのです。
わざわざ「Em」を混ぜる理由が無いのです。
動画において「本体」氏は「竜剣士」カードを据えた【EM竜剣士】に近い形にアレンジしながらさらなるオリカを用意することで、相手を機能停止させようという方向に舵を切りました。
《EMファンタズム・マジシャン》
エクシーズ・ペンデュラム・効果モンスター
ランク4/地属性/魔法使い族/攻2300/守 0
【Pスケール:青5/赤5】
このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
①自分の墓地の魔法使い族Pモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを自分のEXデッキに表側表示で加える。
②このカードがPゾーンに存在する限り、お互いにP召喚以外の特殊召喚ができない。
【モンスター効果】
レベル4のPモンスター×2体以上
レベル4がP召喚可能な場合にEXデッキの表側表示のこのカードはP召喚できる。
①X素材を持ったこのカードはPモンスター及びPゾーンのカード以外のカードの効果を受けない。
②このカードがP召喚に成功した場合に発動できる。自分の墓地の「EM」モンスターを2体まで選び、このカードの下に重ねてX素材とする。
③Pモンスター以外のモンスターの効果が発動した時、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。その発動を無効にする。
④自分のPゾーンの「EMファンタズム・マジシャン」以外の「EM」カードが破壊された場合、EXデッキのこのカードを相手に見せて発動できる。このカードを自分のPゾーンに置く。
しかし現在のカードプールにこれを足しただけでは何の解決にもならず、《Emヒキグルミ》を中心とした【EMEm】が強化されるわけでもありません。
むしろ《Emヒキグルミ》を切り捨ててこのカードを中心とした【EM】を組んだ方が強いのではないでしょうか。
兎にも角にも《Emヒグルミ》が戻ってこなければ議論に値すらしません。
あくまで【EMEm】という土台で考えると《Emヒキグルミ》から引っ張ってこられる新たなバグカードを用意しなければ、【EMEm】に未来は無いでしょう。
「ガエル」
《屍汰ガエル》
効果モンスター
星2/水属性/水族/攻 200/守 0
このカード名の①②③④の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①手札からこのカードと水族モンスター1体を捨てて発動できる。デッキから「屍汰ガエル」以外の「ガエル」モンスター1体を特殊召喚する。
②このカードが手札・墓地に存在する場合、デッキから「屍汰ガエル」以外の水族・水属性・レベル2以下のモンスター2体を墓地へ送って発動できる。このカードを手札・墓地から特殊召喚する。
③このカードが除外されている場合、相手エンドフェイズに発動する。除外されているこのカードと自分の墓地の水族モンスター1体を選んでデッキに戻す。
④このカードが除外された場合に発動できる。デッキから「屍汰ガエル」以外の水族モンスター1体を手札に加える。
基本コンセプトは「征竜」であり、名前も征竜(従える)から命名されています。
①の効果は「ガエル」のリクルートです。
「征竜」がサーチだったのに対してリクルートであるため、召喚権を使わずに展開することができます。
捨てるカードも水族であれば種類を問わないため、《水精鱗-アビスヒルデ》の効果のトリガーにもなります。
②の効果は自身の特殊召喚です。コストとなるモンスターは「ガエル」を含めて45種類ほどありますが、いずれも汎用性の高いカードではないため「ガエル」をコストにすることが多くなるでしょう。
またデッキのリソースが尽きると自己再生できない点は「征竜」には存在しない欠点です。
③の効果は自身と墓地のモンスターを使い回せる効果です。
デッキに戻るため再び公開情報下に引き摺り出す必要はありますが、②の効果のリソースの回復にもなるためあって損する効果ではありません。
④の効果は自身の除外をトリガーとしたサーチ効果です。
「征竜」とは異なり同名カードをサーチすることはできませんが、《豪雨の結界像》や「ティアラメンツ」モンスターなど優秀な水族がサーチできます。
まさしく「ガエル」版の「征竜」であり、一度公開情報下に現れると八面六臂の活躍を見せるカードです。
現在では水族モンスターも種類を増やしたことで出張での採用も見込めるでしょう。
考察
一度公開情報下に現れると八面六臂の活躍をする《屍汰ガエル》の存在もあり、これにアクセスできる、あるいはこれからアクセスできるカードのみがメインデッキの必須枠であり、その総数はわずか18枚と全盛期の【十二獣】にも匹敵します。
つまり残った枠の全てが自由枠ということであり、そのスロットの広さが世紀末トーナメントにおける【ガエル】の強みでもありました。
この考え方は現代の遊戯王OCGにも通じる考え方であり、今でも【閃刀姫】や【召喚獣】などの前に出したモンスターを手札誘発で守るタイプのデッキが環境で頭角を現した理由でもあります。
【ガエル】も手札誘発で先攻の相手を転ばせることで実質的に先攻と後攻を入れ替えればいずれ勝てるという理屈を唱えて、デッキの4割を手札誘発に割くという構築を選びました。
現在の「ガエル」は《餅カエル》が禁止カードですが、《鬼ガエル》が無制限へ復帰したことに加えて「ティアラメンツ」という強力な水族モンスターのテーマと「スプライト」というレベル2を中心としたテーマが登場したことによって幅広いデッキ構築ができるようになりました。
無論、旧態依然としたデッキですが【バジェガエル】も「バージェストマ」Xモンスターを出しやすいという強みを残したままであることから一考の余地があるでしょう。
では【ガエル】を組むに際してはどうなのかというと、強烈な潤滑油である《屍汰ガエル》1枚では何も起きません。
少なくとも《餅カエル》という頭ひとつ抜けた絶対的エースモンスターが不在の【ガエル】は、【○○ガエル】という形でしか勝利を現実的に見据えられる構築にならないでしょう。
「ティアラメンツ」は墓地肥やし能力が《屍汰ガエル》の強力なサポートとなりますが、《屍汰ガエル》による墓地肥やしがコストで行われることから少々「ティアラメンツ」とは相性が悪いです。
コストでカードを動かせることが裏目になったレアケースと言えます。
一方で「スプライト」は《スプライト・エルフ》という強力なリンクモンスターが禁止カードとなった代わりに、《ギガンティック・スプライト》によるリクルートや《スプライト・スプリンド》による墓地肥やしができるため「ティアラメンツ」よりは好相性でしょう。
ただし既存の【ガエルスプライト】に組み込むことを想定すると、《屍汰ガエル》のコストになるカードの少なさから少々歪な構築を求められます。
いずれにせよ、《屍汰ガエル》そのものは紛うことなき壊れカードですが、《餅カエル》がいないことでエース不在の被害を直撃してしまっています。
もし1枚でも《餅カエル》が使えるようになった場合は、【ガエル】として日の目を見ることになるでしょう。
「クリフォート」
《回帰する機殻》
速攻魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
①自分フィールドの「クリフォート」カードが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。デッキから「クリフォート」カード1枚を手札に加える。その後、自分のEXデッキの表側表示の「クリフォート」Pモンスターの数×800LP回復する。
②自分・相手のメインフェイズに墓地のこのカードを除外して発動できる。デッキから「クリフォート」モンスター1体をアドバンス召喚する。
③自分のEXデッキに「クリフォート」Pモンスター以外のカードが存在しない場合、このカードはデッキから発動できる。
デッキから《アポクリフォート・キラー》が現れるカードです。
①の効果は万能サーチです。
《クリフォート・ツール》とは異なり任意のタイミングでのサーチはできず、「クリフォート」カードが破壊された場合にのみ発動できます。
サーチ後は多少のライフゲインも発生するため、《クリフォート・ツール》で失ったLPを少しでも取り戻すことができるでしょう。
②の効果はフリーチェーンで行える「クリフォート」モンスターのアドバンス召喚効果です。
アドバンス召喚する「クリフォート」モンスターはデッキから現れるため、相手の動きに合わせて《クリフォート・エイリアス》によるバウンスをしたり、リリース素材を揃えて先攻で《アポクリフォート・キラー》を構えるなど見た目以上に柔軟な活躍を見せます。
③の効果の存在により、EXデッキが「クリフォート」Pモンスター以外存在しない場合にデッキからこのカードを発動できるようになります。
言い換えるとこのカードを引くこと自体がディスアドバンテージになるため、できることなら引きたくないカードということになります。
また効果の都合上、《クリフォート・ゲニウス》は不採用、あるいは早い段階で場に出すことが求められます。
総じて、デッキの回転力を上げ、《クリフォート・アセンブラ》の効果による大量ドローを狙える【クリフォート】に足りなかったものを補ってくれるカードです。
考察
「本体」氏の構築では、全力でPゾーンの「クリフォート」カードを破壊することで《回帰する機殻》にアクセスしていました。
またその②の効果によるリリースを前提として《クリフォート・アセンブラ》で手札誘発を引き込む算段でした。
実際にはある程度想定通りの動きができていたものの、対戦相手だった【Kozmo】の手数の多さに妨害が追いつかずに敗退してしまいました。
無難そうな構築の裏には、《クリフォート・アセンブラ》で手札誘発をどれだけ引き込めるか、また初動で事故を起こさないかに関する確率論が存在するのですが、筆者は文系なので詳しいことは元動画を見ていただけると幸いです。
現代遊戯王で同様の構築を目指す場合は、真っ先に手札誘発の枠に《灰流うらら》が入るでしょう。
また【ふわんだりぃず】のように特殊召喚を全く行わないデッキも稀であるため、相手に対する牽制の意味も込めて《増殖するG》も3枚積むことになると考えられます。
手札誘発の中でも数を減らせないカードとして《幽鬼うさぎ》があります。
これは相手に対する妨害としての存在意義だけでなく、《クリフォート・ツール》に対して発動することで《回帰する機殻》を能動的に発動できるようになる役割も兼ねているためです。
別に《幽鬼うさぎ》ごときに必死にならなくても……と思う読者の方もいると思いますが、《サイクロン》や《嵐》を採用しなければならず《ツイスター》などが採用候補に上がっていたくらいには自分フィールドの「クリフォート」カードを能動的に破壊する手段に困っているのです。
また当然のことながら、《灰流うらら》は致命的なメタカードとしてこちらに牙を剥きます。
特に妨害を「手札誘発を引き込むこと」で用意する都合上、《クリフォート・アセンブラ》に対する《灰流うらら》はこちらの妨害を全て踏み潰す凶悪なカードとなります。
昨今の環境で《アポクリフォート・キラー》なぞ1枚棒立ちしているところで、特別これといった脅威にすらなりません。《トロイメア・ユニコーン》を当てられるだけで消し飛びます。
《回帰する機殻》自体は真っ当に【クリフォート】を強化する優秀なカードです。
しかしエースモンスターである《アポクリフォート・キラー》が現環境では力不足である点と、あらゆるメタカードが綺麗に刺さることから、【クリフォート】そのもののパワーが足りていないと言えます。
かつて環境トップを獲ったデッキですが、既に元ネタが尽きており新規カードも望めないことから衰退の一途を辿りました。
《クリフォート・ゲニウス》の登場は奇跡だったのです。
《クリフォート・ゲニウス》の存在を度外視してでも、リンクモンスターを拒絶するような強烈なカードがあれば、活躍の機会は再び訪れるかもしれませんね。
「Kozmo」
《Kozmotor》
通常魔法
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①手札の「Kozmo」カード1枚を効果扱いで破壊して発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。
②墓地のこのカードを除外して発動できる。デッキから「Kozmo」カード3枚を相手に見せ、相手はその中から1枚選ぶ。そのカード1枚を手札に加え、残りをデッキに戻す。
「Kozmo」版の《汎神の帝王》です。
①の効果は手札の「Kozmo」カードをコストにした2:2交換のドロー効果ですが、このコストは効果扱いでの破壊となるため、「Kozmo」機械族モンスターの破壊された場合の効果のトリガーとなります。
②の効果は《汎神の帝王》と同様に「Kozmo」カード3枚を見せ相手に選ばせたカードを手札に加える効果です。
「Kozmo」には万能サーチと呼べるカードが《Kozmo-ドロッセル》くらいしかないので、「帝王」のように事実上の一択サーチは同名カード3枚で行わなければなりませんが、①の効果や①の効果で破壊する「Kozmo」機械族モンスターのリクルートが通らずとも、この効果のおかげでアドバンテージは±0か+1となります。
《汎神の帝王》が壊れカードと呼ばれていた通り、こちらも常識外れの壊れカードです。
むしろ破壊をトリガーにすることで「Kozmo」機械族モンスターの効果に繋がることに加えてテーマ全体がコストになることから、こちらの方がぶっ飛んだ性能とも言えます。
このカードによって生み出される莫大なハンド・アドバンテージのおかげで、一般的に採用されない《Kozmo-ダーク・プラネット》をも気軽に採用できます。
考察
実のところ、《Kozmotor》そのものはデッキの回転力を高めるだけのカードです。
つまるところデッキのモンスターの攻撃力の高さやEXデッキによる突破&制圧に関しては遊戯王OCGで行える範囲のものとなります。
「Kozmo」のカードプールが「EXTRA PACK 2016」の登場以降一切増えていないため、ハンド・アドバンテージとボード・アドバンテージを稼げるカードであればほぼ何でもウェルカムとなります。
その観点で考えると《Kozmotor》はハンド・アドバンテージを稼ぎつつ、場合によってはボード・アドバンテージも稼げる素晴らしいカードということですね。
現環境で考えると、比較的扱いやすく優秀な《ドラゴニックD》が制限カードであり、デメリットを抱える《炎王の孤島》や一旦墓地へ落とさなければならない《ヴァレルロード・R・ドラゴン》などの競合相手よりも使い勝手が良いことから問題無く3枚積めるカードと言えるでしょう。
いくら対象を取らない破壊以外の除去が蔓延しているとはいえ、対象耐性持ちの3000打点や、対象耐性持ちの4000打点の《ナチュル・ビースト》がずらずらと並ぶのは今でも脅威となるデッキは多いです。
特に後者は返し札として優秀な《ライトニング・ストーム》や《サンダー・ボルト》などを全て無力化できる点が優秀です。
「本体」氏は他にもこんなカードを作っていました。
《Kozmorphose》
通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
①自分の手札・フィールドから「Kozmo」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを破壊し、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。EXデッキから特殊召喚されたモンスターが相手フィールドに存在する場合、自分のデッキのモンスターも融合素材とすることができる。
《Kozmoll Construct》
融合・効果モンスター
星8/光属性/サイキック族/攻2800/守2500
「Kozmo」モンスター+光属性モンスター
このカードは融合召喚でのみEXデッキから特殊召喚できる。
①このカードは相手の効果の対象にならない。
②このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「Kozmo」カード1枚を選んで破壊する。
③このカードが特殊召喚されたモンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に発動する。そのモンスターを破壊する。
④このカードが墓地へ送られた場合、自分の墓地の「Kozmo」魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。
「Kozmo」版の《影依融合》と《エルシャドール・ネフィリム》ですが、両者共に墓地へ送る部分が全て破壊に置き換わっています。
流石にこんなカードを使わずとも《Kozmotor》だけで十二分にアドバンテージは稼げます。
どこに《灰流うらら》を投げられても増える枚数がいくらか変わるだけという点は既存の【Kozmo】には存在しない強みです。
それを踏まえて現代風にアレンジするとこんな感じのレシピになるのではないでしょうか。
相変わらず《Kozmotor》は《スマイル・ワールド》で代用しています。
また《Kozmorphose》と《Kozmoll Construct》は採用していません。
世紀末トーナメントのルールが「オリカは各デッキ1枚まで」ということなので。
基本コンセプトはそのままに、特殊召喚封じに対抗すべく申し訳程度に《死皇帝の陵墓》をピン挿ししています。
余ったEXデッキの枠には使いそうなモンスターを適当に詰めています。
中でも《世海龍ジーランティス》は《アクセスコード・トーカー》1枚を変換することで出せ、フィールドの「Kozmo」モンスター全てを再び着地させることで再度特殊召喚成功時の効果を発動させることができます。
オリカ無しの【Kozmo】では《アクセスコード・トーカー》を出すことすらも身を切る思いで行わなければいけませんでしたが、《Kozmotor》によって雑にアドバンテージを稼ぐことでそれを補うことができます。
現代の【Kozmo】は登場からおよそ7年の月日を経て効果を知らない人も増えたおかげでわからん殺しができます。
対象を取る妨害に対してはそれなりの耐性をデッキ単位で持っている点も強みであり、最悪《Kozmotor》が引けずとも普通の【Kozmo】の動きができます。
召喚のコストが重い《Kozmo-ダークプラネット》と《サイバー・ドラゴン・ノヴァ》の素材用に採用されている微妙な効果の《Kozmo-デルタシャトル》がやや事故要因になり得るくらいでしょうか。
戦法そのものは約7年の間全く変わっていないため、シンプルに回転力が上がっただけです。
それで勝てるほど甘い環境ではありませんが、天敵である《灰流うらら》に対して耐性を得られるだけでも大きな前進です。
「蟲惑魔」
《サラの蟲惑魔》
特殊召喚・エクシーズ・効果モンスター
ランク4/地属性/植物族/攻2500/守 300
このカードは通常X召喚できない。
自分フィールドのXモンスター以外の「蟲惑魔」モンスターが攻撃・効果の対象になった際、それを無効にし、その無効にしたカードと対象となったカード全てを素材として特殊X召喚できる。
自分は「サラの蟲惑魔」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。
①X素材を持ったこのカードは罠カードの効果を受けない。
②このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いに「蟲惑魔」モンスター以外のモンスターを特殊召喚できず、フィールドの効果モンスターの効果を発動できない。
③1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、以下の効果から1つを選択して発動できる。この効果は相手ターンでも発動できる。
●デッキから「蟲惑魔」モンスター1体を特殊召喚する。
●デッキから「蟲惑魔」モンスター1体を召喚する。
オリカ随一のぶっ壊れカードです。
何やら謎の召喚条件が書かれていますが、要するに《青き眼の乙女》の効果の発動条件と概ね同じです。
ただしモンスタートークンや裏側表示のカードなど本来X素材にできないカードを含む対象の取り方をすると、「全てを素材」にできないため特殊X召喚できません。
①の効果は「蟲惑魔」Xモンスターの共通効果です。
何も知らずに《無限泡影》を投げてくる相手には一方的にディスアドバンテージを負わせることができますが、プレイヤーに直接干渉してくる《拮抗勝負》には無力です。
②の効果は概ね《虚無魔人》と《ウォークライ・ミーディアム》を足したようなものです。
「蟲惑魔」モンスターであれば特殊召喚できますが、【HAT】は既に過去のデッキであり、汎用の域で採用される「蟲惑魔」は存在しないため、ほぼ《虚無魔人》と同等です。
運良く《フレシアの蟲惑魔》を採用していても、《荒魂》《幸魂》を同時に引いているなどの状況でなければ素材を揃えることすら困難となります。
「蟲惑魔」モンスター以外のフィールドのモンスター効果の発動も封じるため、《荒魂》の召喚が通れば解決するという問題でもありません。
これが「蟲惑魔」モンスターを対象にとるだけで出てくるのですから、効果に対するお手軽さは異常です。
そして③の効果により盤面を横に広げることができます。
召喚時の効果も特殊召喚時の効果も優秀な《トリオンの蟲惑魔》や《ティオの蟲惑魔》の効果を状況に応じて使い分けることができ、特に前者のおかげで永続カードに対しても優位に立つことができます。
総じて単発の魔法カードを使われること以外にこれといった弱点も無く、制圧力が非常に高い文句無しの壊れカードと言えるでしょう。
カードプールも増えた現環境では文字通り最強クラスのデッキになり得ます。
考察
《M・HERO ダーク・ロウ》と《餅カエル》を構えていた頃の【HERO】と大して変わりません。
戦法は至ってシンプルで、「蟲惑魔」モンスターを一旦フィールドに置いてから、対象を取る速攻魔法で《サラの蟲惑魔》に変換して相手を封殺するだけです。
元動画内では対象を取る速攻魔法が一貫して《マスク・チェンジ》呼ばわりされていましたが、ただの《マスク・チェンジ》は妨害をも兼ねることができないので【HERO】よりずっと対応力が高いです。
通常、このような封殺系エースモンスター1体を棒立ちさせるようなデッキでは「壊獣」モンスターが解決札になりがちですが、《サラの蟲惑魔》は「蟲惑魔」モンスター以外の特殊召喚を封じるためそれすら効きません。
真っ当に《サンダー・ボルト》などを投げれば爆散しますが、横に《フレシアの蟲惑魔》を置かれるとそれも効かず、一旦《冥王結界波》で効果を無効にしてから全体除去を投げることが無難な解答になるでしょう。
《サラの蟲惑魔》に足りていないものがあるとするならば、打点に関してはやや物足りない数値である点くらいです。
攻撃力2500は頑張れば越えられなくもない数値であり、特殊召喚を介さずに攻撃力2500を超える数値を出されると普通に殴り倒されます。
【Kozmo】に《死皇帝の陵墓》をピン挿ししていた理由はだいたいこのためです。
またモンスター効果もフィールド以外の場所であれば発動できるため、《旧神ヌトス》や《彼岸の悪鬼 ファーファレル》などで場から退かすこともできます。
ただしこのカードの存在だけで「蟲惑魔」モンスターは軒並み戦闘破壊耐性を持っているに等しく、攻撃された瞬間に吸収して《サラの蟲惑魔》になることから、対象を取らない除去を連打して「蟲惑魔」モンスターを一掃しなければなりません。
《サラの蟲惑魔》の突破だけでなく後続の《サラの蟲惑魔》の対策もしなければならない点はこのカードの強みの1つでしょう。
《サラの蟲惑魔》では突破できない高打点モンスターへの解答として《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》が積まれていますが、《サラの蟲惑魔》の効果は自分にも及ぶため一度寝かせる必要がありました。
しかし現代ではリンク召喚が導入されたことで、この問題も解決しています。
それを踏まえてデッキを組み直したものがこちらになります。
《サラの蟲惑魔》は《虚構王アンフォームド・ボイド》で代用しています。
基本コンセプトはそのままで、《プティカの蟲惑魔》や《アティプスの蟲惑魔》によるモンスターへの対応力の底上げにより、ますます魔法カードの連打による全体除去以外の弱点が無くなりました。
《虚栄巨影》はネタ枠として入れていますが、打点補助と《マスク・チェンジ》を兼ねているのでそれなりに実用的です。
リンク召喚の導入で明確にテコ入れされたのは、《セラの蟲惑魔》の登場による《サラの蟲惑魔》を任意のタイミングでフィールドから退かす手段の確保です。
これまでは《月の書》あるいは《皆既日蝕の書》で寝かせる必要がありましたが、《セラの蟲惑魔》に変換するだけでその問題は解決し、棒立ちとなった《セラの蟲惑魔》も攻撃対象になると《サラの蟲惑魔》になるというシナジーを得ました。
ただし「蟲惑魔」モンスターの種類が増えたことでわざわざ《サラの蟲惑魔》を寝かせる必要性も少なくなったのも事実です。
実質的に《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》を出したい時専用の展開方法ですね。
一方で《墓穴ホール》を筆頭とした「落とし穴」カードおよび「ホール」カードは全く追加せず、《狡猾な落とし穴》のみが採用された状態となっています。
必要に応じて《ティオの蟲惑魔》によって墓地から回収し、相手モンスターを巻き込んで《セラの蟲惑魔》のX素材にすることができるためですね。
このことから《アティプスの蟲惑魔》による打点強化は機能する場面が少なく、効果無効のついでに破壊する効果も適用しづらいという問題が発生していますが、それよりも制圧できる《サラの蟲惑魔》を立てることの方が優先なので致し方ありません。
最新カードを取り込むことで現代カード群にも引けを取らない強さを手に入れました。
現在マスターデュエルで猛威を振るっている【ティアラメンツ】でさえも特殊召喚封じには無力化であり《壱世壊に奏でる哀唱》も罠カードであることから《サラの蟲惑魔》への対抗策になりません。
総じて《サラの蟲惑魔》は現代視点でも壊れている異次元のカードです。
遊戯王OCGで登場した場合は良くても制限カードまでは直行すると考えられます。
似たような制圧カードの《M・HERO ダーク・ロウ》は特殊召喚する手段が限られていましたが、こちらは特殊召喚する手段が非常に豊富であり相手のカードでも条件を満たせることから本体に規制がかかるパターンだと予想できます。
そもそもこんなカード刷るなって話ではあるんですけどね。
「シャドール」
《影依の廻転》
速攻魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
①このターン、自分は以下の効果を適用できる。
●墓地の「シャドール」モンスター1体をデッキに戻し、デッキから「シャドール」魔法・罠カード1枚を発動する(同名カードは1枚まで)。
謎の動きをする権利を獲得するカードです。
現在の【シャドール】では墓地に落とした《影依の偽典》を回収して構える動きが主流ですが、このカードを使うとデッキから直接発動できるようになります。
また《影光の聖選士》の①の効果による蘇生も展開に組み込むことができ、展開の幅が広がります。
加えてこのカード自体が速攻魔法であるため、《魂源への影劫回帰》のようなサーチの優先度が低いカードでも気にせず使える点も強みです。
考察
とりあえず《エルシャドール・アノマリリス》についてはレギュレーション違反ですが、元動画内で使用していないので気にしないでおきましょう。
その《エルシャドール・アノマリリス》と同期の《幽鬼うさぎ》すら生まれていない、《簡易融合》と《旧神ノーデン》のコンボが現役だった頃のレギュレーションで【シャドール】は戦っていました。
《影依の廻転》には無視できない大きな弱点があります。
それは墓地が肥えていなければ機能しないという点です。
そのため墓地を肥やせる初動札の《マスマティシャン》や《おろかな埋葬》、最悪の場合手札2枚を素直に融合してから動き始めなければなりません。
また融合に直接絡まない《影光の偽典》や《魂源への影劫回帰》などは墓地リソースが擦り減るため、考え無しの連打は禁物となります。
優秀な墓地肥やしである《堕ち影の蠢き》はなぜか「シャドール」カードではないため《影依の廻転》から即座に発動して墓地を肥やすといった動きができず、墓地肥やしの加速には《エルシャドール・ネフィリム》の連打が不可欠となっています。
しかし現代のカードプールでは墓地肥やしの手段が増え、「シャドール」モンスターの総数も増えたことで戦略の幅が広がりました。
戦略の幅が広がった結果、恐らく《影依の廻転》は不要だと筆者は考えました。
《エルシャドール・ミドラーシュ》の影響力は依然強く、《エルシャドール・ネフィリム》の連打が弱いわけではないのですが、それだけでは勝てないほど現代遊戯王がインフレしているという問題を《影依の廻転》1枚だけでは解決できないのです。
何よりも《影依の廻転》によってデッキから発動させたい「シャドール」魔法・罠カードがほとんど無いため、このカード自体が事故要因になり得ます。
カードプールの狭かった「世紀末トーナメント」内だからこそ輝けたカードと言えるでしょう。
「宣告者」
《極光の宣告者》
効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻 600/守1000
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか適用できず、このカード名の③の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①自分が「宣告者」モンスターの効果を発動するために手札の天使族モンスター1体を墓地へ送る場合、代わりにデッキのこのカードを墓地へ送る事ができる。
②このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「宣告者」カード1枚を手札に加える。
③墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の「極光の宣告者」以外の「宣告者」モンスター2体を対象として発動できる。そのモンスター2体を効果を無効にして守備表示で特殊召喚する。その後、以下の効果から1つを選択して適用できる。この効果は相手ターンでも発動できる。
●その2体のみを素材としてS召喚を行う。
●その2体のみを素材としてX召喚を行う。
未来の《イーバ》です。
①の効果により各種「宣告者」は事実上手札コストを1枚分軽減できます。
言い換えるとこのカードを引くことが実質的に1枚分のディスアドバンテージとなるため、できるなら引きたくないカードということになります。
②の効果はどこから墓地へ送られても発動できるため、当然①の効果から繋げて発動することもできます。
後続の「宣告者」モンスターを確保できるだけでなく、「宣告者」儀式魔法カードをサーチして次のターンに備えることもできます。
③の効果はフリーチェーンでのS召喚およびX召喚を行える効果です。
《朱光の宣告者》がチューナーであるため《虹光の宣告者》のS召喚も無理なく狙えますが、《崇光なる宣告者》は儀式召喚以外での特殊召喚ができないため《崇光なる宣告者》2体で《天霆號アーゼウス》を出すといったことはできません。
「宣告者」にとって問題だった手札コストとなる天使族をデッキから捻出し、後続まで確保する夢のようなカードです。
考察
戦法は至ってシンプルに《神光の宣告者》をポン置きして構えるだけです。
【ドライトロン】が《崇光なる宣告者》を置いていたのと変わりありません。
《極光の宣告者》の③の効果によって《神光の宣告者》と《朱光の宣告者》で《PSYフレームロード・Ω》を出し、その②③の効果で自分だけリソースを回復し続けるという持久戦には滅法強い構築となっています。
動画の投稿時期的に《崇光なる宣告者》も登場していましたが、《極光の宣告者》との兼ね合いで《神光の宣告者》に軍配が上がったものと考えられます。
現在の遊戯王OCGでは、「ドライトロン」によって《神光の宣告者》も《崇光なる宣告者》も儀式召喚のハードルはほぼ同じになっています。
したがってこの2枚の差によってどちらを採用するか決めることになります。
元の構築ではそもそも「ドライトロン」が存在せず、《サイバー・エンジェル-弁天-》1体をリリースするだけで出せる《神光の宣告者》が採用されており、《極光の宣告者》も《神光の宣告者》を素材にS召喚およびX召喚できる効果となっていました。
また《宣告者の預言》によって素材にした天使族モンスターを回収できた点も大きな差別化点でしょう。
一方で《崇光なる宣告者》にしか存在しない強みとして、チェーンブロックに乗らない特殊召喚をも潰せる点が挙げられます。
その代わり《宣告者の神託》は発動にチェーンできない以外は普通の儀式魔法と何ら変わりなく、《崇光なる宣告者》のレベルが高い分ディスアドバンテージが大きくなりがちです。
おまけに両者の攻守も200ずつしか違わず、出す際のディスアドバンテージの差と《極光の宣告者》で再利用できるか否か以外の違いはほとんどありません。
ここでは《極光の宣告者》というオリカを輝かせるために《神光の宣告者》を中心としたデッキを考えてみましょう。
《極光の宣告者》は《ダーク・プリズナー》で代用しています。
戦法は何一つ変わりませんが、《宣告者の神巫》の登場によって《神光の宣告者》は格段に出しやすくなりました。
元々そのためのカードなので当然といえば当然ですが、ここでついに原点回帰です。
横行するモンスター効果に対抗できる《朱光の宣告者》が制限カードに指定されている点が惜しいですが、早めに《神光の宣告者》を立てることであらゆる効果を潰せるように頑張りましょう。
登場当初はリソースが擦り減るだけの【神光の宣告者】でしたが、大幅に広がったカードプールによって、理不尽と呼べるほど無効を連打できるカードに変貌しました。
大元の効果は変わっていないため、《神光の宣告者》あるいは《崇光なる宣告者》そのものが規制されない限り、手を替え品を替え進化し続けるでしょう。
「HERO」
《E・HERO ソリッド》
星4/光属性/戦士族/攻1500/守1000
このカード名の①②の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できず、相手ターンでも発動できる。
①このカードが手札に存在する場合、このカード以外の手札を1枚墓地へ送って発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。その後、デッキから「E・HERO ソリッド」以外の「HERO」モンスター1体を特殊召喚できる。
②墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の「HERO」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
③このカードがモンスターゾーンに存在する限り、以下の効果を適用する。
●このカードを融合素材とする場合、「M・HERO」モンスターとして扱う事ができる。
●自分は相手ターンに「チェンジ」速攻魔法カードを手札から発動できる。
※《E・HERO ソリッドマン》とは別物です。
①の効果は特にこれといった条件も無くフリーチェーンで自身を特殊召喚する効果です。
さらに「HERO」モンスターのリクルートまでできるため、チェーン1で特殊召喚した場合は《E・HERO エアーマン》のサーチや魔法・罠カードの破壊が狙える他、《E・HERO シャドー・ミスト》によって「チェンジ」速攻魔法のサーチもできます。
②の効果は純粋な「HERO」モンスターの蘇生効果です。
同一ターンでは①の効果とどちらか片方しか発動できませんが、こちらもフリーチェーンのためバトルフェイズ中の追撃や緊急用の壁として運用することができます。
そして③の効果によって2つの効果が適用され続けます。
前者は《C・HERO カオス》の融合素材になれる効果です。
素材が重くて使われないのは仕方ないとしても、このカード自身もフィールドに存在しなければこの効果が適用されないため、《C・HERO カオス》の融合素材になることはほぼ無いでしょう。
後者は《神碑の泉》適用下での「ルーン」速攻魔法のように、「チェンジ」速攻魔法を相手ターンでも手札から発動できるようになる効果です。
①の効果から《E・HERO シャドー・ミスト》をリクルートし、その効果で《マスク・チェンジ》をサーチすることで後攻0ターン目から《M・HERO ダーク・ロウ》を構えることができます。
先攻1ターン目では戦闘破壊することすらできないため、非常に厄介な存在になります。
あらゆる手札誘発が刺さるという欠点こそあるものの、その存在そのものが脅威となる強力なカードです。
考察
リミットレギュレーションの時期的に、現在主流の融合軸ではなくランク4軸の構築となっています。
本来であれば先攻でなければ機能しない罠カードを積んでいる理由としては、言わずもがな《E・HERO ソリッド》の存在のためです。
《E・HERO ソリッド》によって《M・HERO ダーク・ロウ》まで繋ぐことで、相手は最初に《M・HERO ダーク・ロウ》の対処に専念しなければならなくなるため、実質的に先攻と後攻を逆転させることができるのです。
しかしこれは過去の話であり、《灰流うらら》は《E・HERO ソリッド》の①の効果にも《E・HERO シャドー・ミスト》のどちらの効果にも刺さり、《無限泡影》はどこに投げられても《M・HERO ダーク・ロウ》という脅威を潰されます。
手札誘発が増えた結果、弱点が増え、使えば通ると言えるほどのカードではなくなりました。
現在では《ティアラメンツ・ハゥフニス》を起点とした後攻0ターン目での《捕食植物ドラゴスタペリア》や《エルシャドール・ミドラーシュ》の展開が似たような存在ですが、握っていればとりあえず確実に発動できるという点では未だに《E・HERO ソリッド》に軍配が上がります。
現在の融合軸の【HERO】に採用できるかと問われると、採用自体は問題無くできると考えられます。
しかし《V・HERO ファリス》の存在もあり手札消費が非常に荒くなる点がネックとなるでしょう。
そのため一般的な手札誘発はほとんど採用できず、このカードを含めた後攻1ターンキルを前提とした構築になると考えられます。
《E・HERO ソリッド》は《プリズマン》で代用しています。
色々考えた結果、やはり融合要素はノイズだと結論付けました。
爆発力こそ高いものの、事故率も跳ね上がり手札消費の荒さも目立つことから《V・HERO ヴァイオン》を含めて丸ごとリストラしました。
基本コンセプトはそのままに、とりあえず《M・HERO ダーク・ロウ》を立てることに心血を注ぐデッキです。
現在でも《M・HERO ダーク・ロウ》の影響を一切受けることなく動けるデッキはほとんど存在せず、永続の除外効果とハンデス効果のいずれか片方は刺さるデッキが大半です。
だからこそ、融合要素を入れることによる《M・HERO ダーク・ロウ》の着地率の低下を避け、全力で《M・HERO ダーク・ロウ》を立てることにしました。
《E・HERO ソリッド》さえ引ければ相手ターンでも出せることから《増殖するG》くらいは入れてもいいかもしれません。
「彼岸」
《彼岸の到達者 ダンテ》
特殊召喚・エクシーズ・効果モンスター
ランク9/光属性/天使族/攻2800/守 0
このカードは通常X召喚できない。
自分フィールドのXモンスター以外の「彼岸」モンスターが墓地へ送られた際、そのモンスターと同時に墓地へ送られたモンスター全てを素材として特殊X召喚できる。
自分は「彼岸の到達者 ダンテ」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。
①1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、EXデッキから「彼岸」モンスター1体を墓地へ送って発動できる。フィールドのモンスター1体を選んで墓地へ送る。このカードが2種類以上の「彼岸」モンスターをX素材としている場合、この効果は相手ターンでも発動できる。
②このカードがモンスターゾーンに存在する限り、以下の効果を適用する。
●自分のデッキの上からカードを墓地へ送る場合、代わりにその枚数分の「彼岸」モンスターをデッキから選んで墓地へ送る事ができる。この効果は1ターンに1度しか適用できない。
③このカードが墓地に存在する限り、以下の効果を適用する。
●自分が戦闘・効果でダメージを受ける場合、代わりに自分の墓地の「彼岸」モンスター1体以上を、その守備力の合計がその数値以上になるように選んでデッキに戻す事ができる。
もう1体の特殊X召喚モンスターです。
フィールドの「彼岸」モンスターが墓地へ送られた際に、同時に墓地へ送られた全てのモンスターを素材に特殊X召喚できます。
単体の「彼岸」モンスターが墓地へ送られた際はもちろん、《ブラック・ホール》などで相手フィールドも丸ごと墓地へ送られた場合は相手モンスターも巻き込んでX素材になります。
①の効果は概ね《氷剣竜ミラジェイド》です。
コストが「彼岸」モンスターに限定されており、対象を取らずに墓地へ送ります。
X素材に「彼岸」モンスターが2種類以上存在する場合はフリーチェーンになるので相手ターンの妨害としても機能します。
②の効果はランダムな墓地肥やしを確定墓地肥やしに変換する効果です。
効果だけでなくコストもその範囲に含まれるため、《彼岸の旅人 ダンテ》の墓地肥やしが3枚分の《おろかな埋葬》と化します。
③の効果は墓地に置かれている間に適用される永続効果で、受けるダメージを墓地の「彼岸」モンスターで肩代わりできます。
墓地が肥えている限り事実上ダメージを受けることが無くなり、再び墓地を肥やすことで無限にダメージを抑えることもできます。
ただし守備力0のモンスターはデッキに戻せないので注意が必要です。
一見すると地味なカードですが、基本的にライフポイントを奪い合うゲームにおいてダメージで負けることが無くなるという点は非常に強力です。
最近では墓地に対するメタカードも増えていますが、そういったカードのケアさえこなすことができれば持久戦で活躍するカードでしょう。
考察
制圧プランも持久力もある代わりに火力が控えめなデッキです。
《ジ・アライバル・サイバース@イグニスター》や《炎斬機ファイナルシグマ》などの耐性持ち高打点モンスターを用意されるとデッキ切れ以外の勝ち筋が見えなくなります。
決して貧弱なデッキではなく、《儀式魔人リリーサー》を絡めた《彼岸の鬼神 ヘルレイカー》による特殊召喚封じや《マスク・チェンジ・セカンド》から出される《M・HERO ダーク・ロウ》などの対処に難儀するカードも入っているため、試合展開次第では不利な相手にも善戦できるでしょう。
とりあえず結論から言うと、【彼岸】としてはカードプールの増えていない現状では限界があると考えています。
《彼岸の黒天使 ケルビーニ》という優秀なリンクモンスターこそ手に入れましたが、結局それだけでは何の解決にもなりません。
一応《彼岸の黒天使 ケルビーニ》のコストで《彼岸の悪鬼 グラバースニッチ》か《彼岸の悪鬼 ガトルホッグ》を落とし、その効果で用意した別の「彼岸」モンスターと共にリンク召喚することで《彼岸の到達者 ダンテ》を2種類の「彼岸」モンスターをX素材にして出すことができます。
除去に巻き込む以外の現実的な召喚方法が各種召喚方法の素材にするくらいしか無く、それも事実上S素材くらいしかなかったため大きな進歩と呼べるでしょう。
しかしそうして得られるものは《氷剣竜ミラジェイド》もどきに無限ライフゲインがついているだけのカードです。
攻撃力も2800とやや心許なく、横にリンクモンスターが並んでいても特別強力な布陣ではありません。
むしろリンクモンスターの存在が「彼岸」下級モンスターの生存を許さないため、これ以上の展開ができません。
当時より純【彼岸】の構築はあまり見受けられず、【SR彼岸】や【幻影彼岸】といった他のギミックを取り入れた構築がメインでした。
元の動画でも【SR彼岸】の構築となっています。
現在では制圧要員の《儀式魔人リリーサー》も禁止カードであり、「彼岸」内における決定打となる存在がいないことから【彼岸】として現環境で戦うのは厳しいと考えます。
「ヴェノム」
《ナーガの存在》
融合・効果モンスター
星10/闇属性/爬虫類族/攻 0/守 0
カード名が異なる「ヴェノム」モンスター×4
自分の手札・デッキの上記カードを墓地へ送った場合のみ、EXデッキから特殊召喚できる(「融合」は必要としない)。
自分フィールドに「ヴェノム」カードが存在しない場合、このカードは永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠ゾーンに表側表示で置かれる。その際、自分フィールドに「ヴェノム」カードが存在している場合にこのカードはモンスターゾーンへ戻る。
①「ナーガの存在」は自分フィールドに1枚しか表側表示で存在できない。
②このカードは他のカードの効果を受けない。
③相手はこのカードを攻撃対象にできない。
④このカードがフィールドに存在する限り、以下の効果を適用する。
●自分は爬虫類族モンスター以外のモンスターを通常召喚できず、1ターンに3回まで爬虫類族モンスターを通常召喚できる。
●自分の「毒蛇神ヴェノミナーガ」がフィールドを離れる場合、代わりにこのカードを墓地へ送る事ができる。
●自分は手札・デッキから「蛇」罠カードを発動できる(同名カードは1ターンに1枚まで)。
⑤このカードがモンスターゾーンに存在する限り、以下の効果を適用する。
●自分が爬虫類族モンスターを召喚する度に、そのモンスターと同じレベル・ランクの爬虫類族モンスター1体をEXデッキから特殊召喚できる。
●自分が爬虫類族モンスターをアドバンス召喚する場合、デッキの「ヴェノム」モンスターをリリースの代わりに墓地へ送る事ができる。
●自分・相手のエンドフェイズに、自分の「毒蛇神ヴェノミナーガ」1体を選び、そのモンスターに自身の効果扱いでハイパーヴェノムカウンターを1つ置く。
初手で《毒蛇神ヴェノミナーガ》を降臨させるカードです。
融合モンスターですが、《融合》を必要とせず、融合素材となるモンスターを手札・デッキから墓地へ送ることで特殊召喚できます。
また召喚制限はEXデッキからのみとなっているため、蘇生制限を満たせば蘇生・帰還は可能です。
容易に特殊召喚できますが、「ヴェノム」カードがフィールドに存在しない場合は永続魔法として魔法・罠ゾーンに置かれます。
「ヴェノム」カードを要求しているため、《ヴェノム・スワンプ》の他《覇王紫竜オッドアイズ・ヴェノム・ドラゴン》がPゾーンに置かれていてもモンスターゾーンに残り続けることができます。
①の効果は同名カードの着地を許さない効果です。このカードが複数枚存在しても特別な効果は無いので、雑に無条件でレベル10モンスターを連打できないくらいの感覚です。
②の効果によって完全耐性を得ています。
殴り倒すかコストでの除去以外でフィールドから退かすことはできません。
③の効果により攻撃対象にもできませんが、攻撃対象にできない効果はモンスター効果に耐性があれば無視して攻撃対象にできるため、棒立ちではうっかり痛いダメージを受けることがあります。
「攻撃対象にされない」であれば耐性持ちのモンスターからも攻撃されなかったため、このカードの数少ない欠点と呼べるでしょう。
④の効果ではこのカードがモンスターゾーンにいても魔法・罠ゾーンにいても3つの効果を適用し続けます。
まず爬虫類族以外を召喚できない代わりに爬虫類族を1ターンに3回まで通常召喚できる効果です。
このカードを出す前に爬虫類族以外のモンスターを通常召喚したり、爬虫類族であってもセットしたりした場合はこの効果は適用されません。
次に《毒蛇神ヴェノミナーガ》の身代わりとなる効果です。
コストにすら対応するため、「壊獣」モンスターのリリースや《閉ザサレシ世界ノ冥神》のリンク素材でも身代わりになれます。
そして「蛇」罠カードを手札・デッキから発動できる効果です。同名カードは1ターンに1度ずつですが、全カードを1回ずつ使えるため《影依の廻転》に近い効果だと捉えてください。
なお厳密には「蛇(じゃ)」罠カードのため、発動できるのは以下の4枚のみとなっています。
《蛇神降臨》
《毒蛇の供物》
《毒蛇の怨念》
《蛇神の勅命》
最後に⑤の効果ですが、こちらは「ヴェノム」カードが存在しこのカードがモンスターゾーンに存在する場合にのみ適用される効果であり、こちらも3つの効果があります。
まず爬虫類族モンスターを召喚する度にそのモンスターと同じレベル・ランクの爬虫類族モンスターをEXデッキから特殊召喚できる効果です。
現在は融合2種類、シンクロ5種類、エクシーズ3種類、ペンデュラム4種類となっており、非常に種類は少ないです。
しかしこの効果処理そのものはチェーンブロックを作らず、中には《レプティレス・メルジーヌ》や《覚醒の勇士 ガガギゴ》といったカードも含まれているため現存する種類の数に反して面白い動きを見せます。
次に爬虫類族のアドバンス召喚のためのリリースをデッキの「ヴェノム」モンスターに肩代わりさせる効果です。
フィールドに「ヴェノム」カードを要しますが、手札の上級・最上級モンスターを墓地を肥やしながらずらずらと並べることができます。
そしてお互いのエンドフェイズ時に《毒蛇神ヴェノミナーガ》に自身の効果扱いでハイパーヴェノムカウンターを乗せる効果です。
1往復半で勝利となりますが、《毒蛇神ヴェノミナーガ》自身が凄まじい攻撃力となって襲いかかるためこの効果が決定打になることはほとんど無いでしょう。
遊戯王OCGにおけるテキスト最長記録をおよそダブルスコアで更新するテキスト量ですが、カードプールの乏しい爬虫類族を「ヴェノム」を中心に全体的に底上げするような効果となっています。
考察
《ナーガの存在》が無ければただの紙束同然のカード群です。
まず罠カードについてですが、【セフィラ】における罠カードの採用枚数と同じく、デュエル中に使い切ることを想定した枚数となっています。
先攻で《蛇神降臨》、相手ターンで《毒蛇の供物》と《蛇神の勅命》、返しの自身のターンで《毒蛇の供物》を使ってゲームエンドです。
先攻展開で《毒蛇の供物》を使う場合は《ブラック・ガーデン》による展開をしているため、リンクモンスターの存在を考慮しなければ相手フィールドが「ローズ・トークン」で埋め尽くされて制圧できます。
次に「ヴェノム」モンスターの採用枚数ですが、先攻展開の時点で8枚を使いますがこの枚数が限界です。
そもそもフル投入しても12枚にしかならないので、あと1枚貧弱なモンスターを入れるか汎用性の高い爬虫類族モンスターを入れるかで考えたら後者一択になるでしょう。
最後に展開ルートについてですが、基本的には先攻で《毒蛇神ヴェノミナーガ》を出すことを前提に考えられています。
要求される初手は以下の通りであり、それなりの確率で出すことができるでしょう。
改めてこれを現代のカードパワーで練り直すとすると、「ヴェノム」の地力が低すぎる点が足を引っ張るため環境で活躍させることは難しいでしょう。
基本的に《毒蛇神ヴェノミナーガ》さえ出せれば《ナーガの存在》の身代わり効果もあり概ね勝ちが確定しますが、《蛇神降臨》に対して《灰流うらら》を当てられることで敗北に直結するレベルのディスアドバンテージを負います。
また《超量機獣マグナライガー》による破壊を《無限泡影》で止められるなど汎用性の高い範囲の手札誘発だけで《毒蛇神ヴェノミナーガ》の着地を封じられてしまいます。
そもそも《毒蛇神ヴェノミナーガ》を中心に据えて勝利を目指すデッキであれば【溟界】というほぼ完璧な解答を持つテーマが存在しています。
各種手札誘発の当てどころを備えていることから《蛇神降臨》に対してピンポイントでカウンターを用意していない相手には《毒蛇神ヴェノミナーガ》を立てられるデッキであり、墓地肥やしの速度も展開力も申し分ありません。
事実上カードプールが増えていない「ヴェノム」で【ヴェノム】を組み上げて【溟界】を超えることはほぼ不可能と言っても過言ではないでしょう。
【溟界】に《ナーガの存在》を添えるにしても「ヴェノム」カードのパワーが低すぎてノイズにしかなりません。
言い換えれば強力な爬虫類族テーマが出たことを喜ぶべきなのでしょうが、【ヴェノム】を組みたい人にとっては残念な結果となってしまいました。
「帝王」
《帝王の重圧》
永続魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
①このカードの発動時の効果処理として、以下の効果から1つを選択して適用できる。
●デッキから攻撃力800/守備力1000のモンスター1体を特殊召喚できる。
●デッキから攻撃力2800/守備力1000のモンスター1体を手札に加える。
②1ターンに1度、相手がモンスターの効果を発動した時、そのモンスターのレベルまたはランクの数値以上のレベルを持つ手札のレベル5以上のモンスター1体を相手に見せて発動できる。その見せたモンスターをアドバンス召喚し、その相手が発動した効果を無効にする。
③自分のEXデッキにカードが存在せず、自分フィールドのみにアドバンス召喚したモンスターが存在する場合、相手はカードをセットできない。
初動札兼制圧札です。
世紀末トーナメントでは「帝(みかど)」でしたが、ここでは所属するテーマである「帝王」として紹介します。
発動時の効果処理として①の効果により攻撃力800/守備力1000のモンスターのリクルートか、攻撃力2800/守備力1000のモンスターのサーチができます。
【帝】にとって重要な初動札である《天帝従騎イデア》をリクルートできるカードであり、召喚権すら割かずに出せることから《増援》以上に優秀な初動札になります。
一般的に【帝】に採用されるモンスターの他には《エキセントリック・デーモン》や《幻影騎士団ダスティローブ》といったモンスターも含まれるため、これを目当てに違うデッキに採用することも検討できます。
攻撃力2800/守備力1000のモンスターでサーチする筆頭候補としては《天帝アイテール》が挙げられますが、サーチ先の中には《ダーク・アームド・ドラゴン》や《クシャトリラ・オーガ》など自身を特殊召喚できるモンスターだけでなく「クリフォート」最上級モンスターも含まれるため、これらを目当てに採用してもいいでしょう。
②の効果は限定的なパーミッション効果です。
大前提として自身がモンスターをアドバンス召喚できる状況である必要があり、その上でそのアドバンス召喚できるモンスターのレベルが相手の発動したモンスターのレベルまたはランクより上である必要があります。
またアドバンス召喚に成功しなければ効果の無効化もできないため、この効果にチェーンされてハンデスや除去をされると効果を止めることもできません。
そして③の効果によって自身のEXデッキが0枚の場合に全てのアドバンス召喚したモンスターが《ダーク・シムルグ》と化します。
ただしアドバンス召喚したモンスターが存在しなければこの効果は適用されないため、《サンダー・ボルト》などによる雑な対処で解決してしまう点には注意しましょう。
効果もセットも許さない、まさしく帝王の重圧と呼べるカードです。
考察
概ね普通の【帝】ですが、有り余ったアドバンテージをハンデスへと変換しています。
一般的な【帝】との差異としては《連撃の帝王》が採用されていない点と《ラーの翼神竜-球体形》が採用されている点でしょうか。
《連撃の帝王》については《帝王の重圧》が似たような役割を兼ねていることから採用されていないと考えられます。
また最上級モンスターでは対処できないカードに対する除去要員として、《帝王の重圧》とのシナジーを考慮した結果《ラーの翼神竜-球体形》が採用されています。
《帝王の重圧》とのシナジーが無かったために、《威光魔人》や《虚無魔人》は採用されていません。
関連カードのカードプールがほとんど増えていないため、ここから構築を変えることも難しいでしょう。
リリース要員兼除去要員として「クシャトリラ」カードを採用することで戦略の幅は広がるかもしれませんが、それでは最終的に【クシャトリラ】になりそうです。
12期以降では最上級モンスター同士が合体した新たなモンスターが登場する可能性が示唆されているため、今後のカードプールの増加に期待しましょう。
「リチュア」
《リチュアに伝わりし神判の予言》
儀式魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
①デッキから「リチュアに伝わりし神判の予言」以外の「リチュア」カード1枚を手札に加える。
②このカードを発動したターンのエンドフェイズに以下の効果を適用する。
●このカードの発動後に自分または相手が発動した儀式魔法カードの数まで、デッキから「リチュアに伝わりし神判の予言」以外の「リチュア」カードを手札に加える。その後、レベルの合計が儀式召喚するモンスターと同じになるように、自分の手札・フィールドのモンスターをリリース、またはデッキの「リチュア」モンスター1体を墓地へ送り、デッキから水属性の儀式モンスター1体を儀式召喚する事ができる。
《グリモの魔導書》と《魔導書の神判》が合体したカードです。
まず①の効果ですが、「リチュア」の万能サーチです。
儀式魔法でありながら発動時には儀式召喚に関する挙動を一切しません。
②の効果は《遺言状》のような残存効果となっています。
やっていることは《魔導書の神判》とほぼ同じですが、儀式召喚するモンスターは水属性の儀式モンスターであり「リチュア」に限定されていません。
「影霊衣」儀式モンスターや《クラブ・タートル》なども出すことができます。
強いカード同士を掛け合わせているので強いことは強いのですが、儀式魔法という微妙に発動しにくいカードをカウントするため手札があまり増えないという微妙なカードになってしまいました。
一方で儀式召喚するモンスターにレベルの制限は無いため、《イビリチュア・ガストクラーケ》でハンデスしたり《イビリチュア・ネーレイマナス》や《アラドヴァルの影霊衣》で妨害を構えたりやりたいことができます。
考察
【帝】とは正反対で、ハンデスするためにアドバンテージを稼ぐデッキです。
古き良きハンデス軸の【リチュア】ですが、《リチュアに伝わりし神判の予言》との兼ね合いで「聖刻」要素は丸ごと抜けています。
良くも悪くもハンデスすることに全力を注いでいるので、一度着地した脅威への対抗策がほとんど無いことに加えて《増殖するG》があらゆるデッキよりも刺さります。
一般的な手札を捨てるタイプのハンデスならともかく、【リチュア】はデッキに戻すハンデスのため手札を入れ替えるだけの行為にしかならないのです。
ハンデスに特化することは悪いことではありませんが、それ以外の勝ち筋を捨てているため後攻のプランが全く見えません。
カードプールの増えた現在では《イビリチュア・ネーレイマナス》で妨害を構えて《イビリチュア・ジールギガス》をランク10の素材として1ターンキルを狙う構築にした方が勝率は上がりそうです。
一方でハンデスという強みを捨てることにはなりますが、妨害を構えられない状態で全ハンデスしてもトップ解決される可能性がある以上は万全の戦法ではありません。
加えて平均的な打点も低く、場合によっては返しのターンで相手のLPを削り切ることも難しいでしょう。
【シンクロダーク】のハンデスが強かったのは、《シューティング・クェーサー・ドラゴン》で万能カウンターを構えられ、返しのターンでしっかりとLPを削り切れたためです。
《リチュアに伝わりし神判の予言》は《魔導書の神判》で代用しています。
ハンデス特化ではなく、妨害を構えつつ1ターンキルを狙える構築になりました。
「PHOTON HYPERNOVA」の発売によってちらほらと環境で姿を見せていた【リチュア】に近い形となっていますが、《リチュアに伝わりし神判の予言》の存在によってより安定性を増しました。
また妨害も《イビリチュア・ネーレイマナス》だけでなく《リチュアに伝わりし神判の予言》から《アラドヴァルの影霊衣》を立てることで、2回分のモンスター効果無効を確保しています。
採用する儀式モンスターを《イビリチュア・ガストクラーケ》に変えるだけでハンデスもできるため、好みの「リチュア」儀式モンスターを入れて改造しても面白いでしょう。
最近強化が来たおかげで現実的なデッキパワーが確保できています。
環境クラスには及ばずとも、カジュアルではやや過剰気味の強さはあるんじゃないでしょうか。
「カオス」
《混沌》
フィールド魔法
デュエル開始時にこのカードの持ち主は以下の処理を行う。または行わずにこのカードを破壊する。
●デッキのこのカードを自分のフィールドゾーンにセットする。その後、セットされているこのカードはフィールドを離れない。さらに、このデュエル中、自分のフィールドゾーンに元々のカード名が「混沌」となるフィールド魔法カードが存在する限り、全てのカードのカード名はルール上「混沌」としてのみ扱われる。
「混沌」はデュエル中に1枚しか発動できない。
①このカードの発動後3回目の相手エンドフェイズに発動する。フィールドゾーンのこのカードを破壊し、自分のLPを4000にする。その後、自分のLPが相手より少ない場合、デッキからカード1枚を選んでデッキの一番上に置く事ができる。
現代遊戯王におけるカテゴリを完全に殺すカードです。
現存する「カオス」には「カオス」儀式モンスターと「カオス」Sモンスターの2種類がありますが、このデッキはそのどちらでもなく、遊戯王OCGにおける暗黒期と称された《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》および《混沌帝龍-終焉の使者-》が現役だった頃のデッキの通称です。
そのためテーマとしての「カオス」については一切考慮しません。
まず効果外テキストとして、デュエル開始時にフィールドゾーンに裏側表示で置かれます。
その状態のこのカードはフィールドを離れないため、《盆回し》などによるリセットも効きません。
そのまま効果外テキストとして、発動後はお互いの全ての領域のカード名がルール上《混沌》になります。
読みが「カオス」であるため、《カオス・フォーム》からあらゆる儀式モンスターを儀式召喚できたり、相手によって《カオス・デーモン-混沌の魔神-》を除去されるとあらゆるSモンスターをEXデッキから特殊召喚できたりと変なところでシナジーを発揮し始めますが、概ね全てのカテゴリは封殺されることになります。
デッキや除外はおろか、X素材にまでその範囲は及ぶためカードの名称を指定するカードは基本的に全て機能不全に陥ります。
なぜかこの効果外テキストは着地前謎空間を通過した時点で適用されるため、発動そのものを無効にしない限り、テーマ専用の除去札などでは除去できなくなります。
しかしそのような効果が長続きするわけもなく、①の効果によって往復3ターン後には自壊します。
その代わりLPを4000に固定し、自分の方がLPが少ない場合にデッキ内の任意のカードをデッキトップに置くことができます。
デスティニードローの再現となりますが、《王宮の勅命》や《マジック・キャンセラー》などでこの効果を無効にすると自壊しなくなるため、効果外テキストのカード名の書き換えを維持することができます。
カード単体のパワーを純粋に足しただけの古の環境へと強制的に退行させる非常に危険なカードであり、カード名を参照しないことの方が少ない現環境のシングル戦においてはゲームバランスを崩壊させかねないカードでしょう。
なお、動画内で既にエラッタされており、エラッタ前はデュエル前からフィールドに表側表示で存在し続け、自壊デメリットもありませんでした。
考察
概ね【禁止カード】とも呼べるデッキです。
《クリッター》と《黒き森のウィッチ》はエラッタ前、その両者とも1度エラッタされた後のカードです。
そのため《混沌帝龍-終焉の使者-》の後に《クリッター》などでサーチは行えますし、《混沌の黒魔術師》は着地した瞬間に魔法カードを回収できますし、《破壊輪》で引き分けを量産することもできます。
エラッタもせず、現在でも使用可能なカードのみを並べるとこのようになります。
《混沌》は《カオス・フォーム》で代用しています。
デッキとして成立しないという次元ですらありません。
このままでは構築の練り直しも何も無いので、《混沌》を活かす方向でデッキを考えていきます。
と言いたいところですが、実は既に「本体」氏が限りなくベストに近い答えを出しています。
カード名が全て《混沌》になることを利用し、《竜剣士ラスターP》や《苦渋の決断》でデッキ内の全カードをサーチ可能にし、《浮幽さくら》や《異次元の指名者》で確実に相手のカードを撃ち抜き、《真実の名》や《デーモンの宣告》でデッキトップを確定で手札に加え、各種バーン効果を起点に《悪夢の拷問部屋》で無限バーンができます。
現在では《禁止令》ではなく《発禁令》を採用することで確実に先攻1ターンキルを成立させることができ、相手にターンを渡すことを前提とするならば《マインドクラッシュ》による全ハンデスや《墓守の罠》によるドローロックも可能となります。
真っ当なデュエルをせずにただ相手に嫌がらせをするつもりであれば、このような形がベストな構築になるでしょう。
総括
各テーマに1枚ずつオリカを与えてトーナメントを行うという試みは面白く、《煉獄の癇魃》や《ナーガの存在》のように今でもほとんど見られない挙動のカードが遊戯王ADSで動くのを見るのは面白かったです。
一方で純粋なデッキパワーだけが全てではなく、【ガエル】や【宣告者】のように手札誘発で相手を転ばせるデッキが勝ち進む姿は現代の遊戯王に近いものを感じました。
【EMEm】や【Kozmo】のようなデッキ全てを用いて展開するデッキは手札誘発を積むことが難しく、手札誘発の無い殴り合いでは優勢になる一方で手札誘発で転ばされて少ない初動で戦える相手との引き勝負に持ち込まれると厳しい戦いを強いられます。
9期中期から10期初頭にかけて作られた動画シリーズでしたが、現代を予言するかのようなシリーズでした。
次の世紀末トーナメントは3000年後らしいので、それまで皆でのんびり今の遊戯王を楽しみましょう。
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