【考察】エクシーズ召喚は失敗だったのか
皆さん初めましての方は初めまして、そうでない方は前回までの記事を読んでいただきありがとうございます。その辺の決闘者の衣玖(いく)と申します。
今回はエクシーズ召喚について、歴史を振り返ると共にそのシステムの是非について考察していく記事となります。
ごちゃごちゃした前置きはせずに早速本題に入りましょう。
エクシーズ召喚の歴史
1.エクシーズ始動‼︎
アニメ『遊戯王5D's』の放送も終わり、新たなテレビシリーズとして『遊戯王ZEXAL』が誕生すると共に実装されたのが、このエクシーズ召喚です。
シンクロモンスターとは異なり「STARTER DECK 2011」で登場した3枚のカードが史上初のエクシーズモンスターとなりました。
同じレベルを揃えるというわかりやすい召喚条件でしたが、当時は特別強力なエクシーズモンスターがいたわけではなく【TG代行】や【代償ガジェット】などのデッキが相性の良いエクシーズモンスターを活用して環境に居座ったような形でした。
中でも当時際立って強力だったのが《インヴェルズ・ローチ》です。
環境の主役もシンクロモンスターからエクシーズモンスターへ切り替えたいという公式の思いを背負い、ついでに《サイバー・ドラゴン》なども潰せるデザインとしてあらゆるデッキにとりあえず採用される存在となりました。
その採用率は、このカードの収録されていた「遊戯王ZEXAL デュエルターミナル オーバーレイガイド」が発売から7ヶ月の間に8回も増刷されるという異常な事態になるほどの高さです。
2.エクシーズ黎明期
シンクロモンスターはDUEL TERMINAL出身でも通常弾出身でも汎用性が高く規制を受けるようなカードを黎明期から多く刷っていました。
そのことを重く受け止めたのか、エクシーズモンスターはアニメ出身であってもテキストが変更されたり謎のデメリットが追加されたり、OCGオリジナルでも評価に困るような微妙なカードが多く刷られました。
顕著なのは「No.」でしょう。
アニメの《No.39 希望皇ホープ》は「No.」以外のモンスターとの戦闘では破壊されない効果を持ちその効果で持ち堪えるシーンが散見されました。
一方OCGの《No.39 希望皇ホープ》からは「No.」以外との戦闘では破壊されない効果が剥奪され、さらにエクシーズ素材がない場合に攻撃対象にされると自壊するという謎デメリットが足されています。
耐えるどころか攻撃宣言時に自壊するためそのまま相手の攻撃がプレイヤーに飛んでくることになります。
「No.」の持っていたこの戦闘破壊耐性はOCG化に際して全ての「No.」から剥奪されています。
またエクシーズ素材が1体分多いのに手札交換しかできず攻撃力で《No.39 希望皇ホープ》に劣る《No.10 白輝士イルミネーター》や、アニメの効果を剥奪され地味なバーン効果を与えられた《潜航母艦エアロ・シャーク》など、カードプールの増えた現在でも扱いに手間取るカードはそれなりの数に上ります。
ただし少し間を置くと非常に汎用性の高いエクシーズモンスターが登場するようになりました。
あらゆるデッキでお世話になった《ラヴァルバル・チェイン》や現在でも幅広い活躍を見せる《ダイガスタ・エメラル》、終身名誉禁止カードの《No.16 色の支配者ショック・ルーラー》などはこの時期のカードです。
ただしレベル4を大量展開できるデッキは当時としてはさほど多くなく、あまり脅威としては認知されていませんでした。
3.カオスエクシーズチェンジの登場
現代に至るまで誕生した多くの「重ねてエクシーズ召喚」の始祖となったカオスエクシーズチェンジが登場します。
エクシーズ召喚の登場から約半年という速さで登場しましたが、当時のカードプールであれば許容できる存在だったと思います。
その初出はアニメ『遊戯王ZEXAL』における「九十九遊馬vsジン」戦です。
天城カイトの信奉者でありナンバーズハンターでもあると自称するジンは《No.16 色の支配者ショック・ルーラー》《No.11 ビッグ・アイ》を駆り遊馬とアストラルを追い詰めます。
絶体絶命の危機に陥った遊馬とアストラルでしたが、2人がオーバーレイすることで伝説の戦士「ZEXAL」に合体し、その手で進化させ呼び出した新たなる切り札が《CNo.39 希望皇ホープレイ》です。
シンクロモンスターの強化体がシンクロモンスター同士のシンクロ召喚やシンクロモンスターを素材としたシンクロ召喚であることから、エクシーズモンスターの強化体もエクシーズモンスター同士のエクシーズ召喚かエクシーズモンスターを素材としたエクシーズ召喚のどちらかだろうとは思っていました。
それが後者が正解という形で実現したわけですね。
なお前者も《CX 冀望皇バリアン》(アニメ版)や《FNo.0 未来皇ホープ》で実装していますが、これらは強化体と呼ぶような姿ではなかったです。
さて、この《CNo.39 希望皇ホープレイ》ですが、登場当初は何の音沙汰もありませんでした。
《No.39 希望皇ホープ》の自壊デメリットを回避するために採用している例があった程度です。
それも当然のことで、アニメの効果をほぼそのまま流用したことから発動条件にライフポイント1000以下という厳しいものがついており、初期ライフポイントが8000のOCGでは1ターンキルしにくいという難点があったためです。
後発の《CNo.32 海咬龍シャーク・ドレイク・バイス》に至っては、その進化前の《No.32 海咬龍シャーク・ドレイク》が出しづらいこともあり、採用しているデッキがほとんど無いという状態でした。
KONAMIはこの《CNo.39 希望皇ホープレイ》の状況を見て成功だと感じたのか、次弾である「GALACTIC OVERLORD」で《迅雷の騎士ガイアドラグーン》を実装します。
なんとこのカードにはエクシーズ素材とするエクシーズモンスターにカード名の制限がありません。
ランクさえ正しければ何に乗せても大丈夫です。
同弾で登場した《聖刻龍王-アトゥムス》は効果の使用後に攻撃できなくなるデメリットを持ちますが、このカードを乗せればそれを踏み倒せます。
また《No.61 ヴォルカザウルス》も効果の使用後は直接攻撃できなくなるという唯一の欠点がありましたが、それも同じようにこのカードを乗せるだけで踏み倒せます。
これによって羽目を外したKONAMIは、次々に重ねてエクシーズ召喚できるエクシーズモンスターを生み出すことになります。
4.シンクロモンスターが駆逐される
《CNo.39 希望皇ホープレイ》の登場と同時に「甲虫装機」も登場しました。
展開のついでに相手フィールドを荒らし、相手フィールドが更地になれば自分のカードを破壊しながら展開を繰り返す【甲虫装機】はエクシーズ召喚主体のデザイナーズデッキとしては初めての環境トップとなりました。
この時のトーナメントシーンではシンクロモンスターはほとんど見られず、右も左も目の前も【甲虫装機】であったことから「ムシキング環境」などと揶揄されることもあります。
ちょこちょこ【ジャンクドッペル】や【ラヴァル】はいたんですけどね。決勝なんかまでいくと大体【甲虫装機】のミラーマッチでした。
結局シンクロモンスター同様に真っ黒な環境となったわけですが、こちらはエクシーズモンスターの登場から約半年経過しており、黎明期のカードパワーを相当抑えていたことがよくわかります。
5.「RUM」の登場
その後もエクシーズモンスターが環境を支配し、【甲虫装機】に並び【聖刻】や【兎ラギア】が活躍していましたが、そんなことをしているうちにアニメ『遊戯王ZEXAL』は放送を終えます。
新番組『遊戯王ZEXALⅡ』では敵対する勢力の「バリアン」が人間に「RUM」を与えることで「No.」を回収しようと試みます。
また「バリアン」の面々も「RUM」を所持しており主人公の九十九遊馬もバリアン警察を名乗る真月零から「RUM」を受け取り使用することになります。
端的に言えば対象のエクシーズモンスターよりもランクの高いエクシーズモンスターへとランクアップさせるカード群であり、ランクアップすると強くなる!をわかりやすく表現した存在であると言えるでしょう。
ランクアップ形態である「CX」や「CNo.」には重ねてエクシーズ召喚する旨のテキストが存在しないにも関わらず、エクシーズ素材にエクシーズモンスターが存在する場合に発動できる効果が記されています。
例えば《CNo.39 希望皇ホープレイV》ならばレベル5モンスター×3でエクシーズ召喚できますが、エクシーズ素材に《No.39 希望皇ホープ》があることを発動条件とする効果を持ちます。
特に《RUM-リミテッド・バリアンズ・フォース》はあらゆるランク4のエクシーズモンスターをランク5の「CNo.」へランクアップできたことから、効果を使った《ラヴァルバル・チェイン》や《ダイガスタ・エメラル》などの優秀なもののステータスが低めなランク4を《CNo.105 BK 彗星のカエストス》や《CNo.104 仮面魔踏士アンブラル》などのベースに専用の「No.」を有さずとも機能する「CNo.」へとランクアップさせる動きがちらほらと見られました。
中でも《CNo.69 紋章死神カオス・オブ・アームズ》は攻撃力4000に加えて、相手の攻撃宣言時に相手フィールドのカードを一掃する効果を持っていたことから、この用途での採用には必須カードと化しました。
しかしこの「RUM」というシステムは、ほとんど大会環境では見られませんでした。
理由はすぐに考えればわかることですが、このカード単体を引くだけでは何の役にも立たず、そのくせエクストラデッキを圧迫することからランクアップ前の採用カードを吟味する必要があったためです。
さらに《RUM-リミテッド・バリアンズ・フォース》の立場がさらに弱くなるほどカードプールが広がっていきます。
6.環境を牛耳った伝説の【ランク7】
「RUM」の登場は、あのカード群の登場を意味していました。
暗黒期の再来とも呼ばれた「征竜」です。
本来は属性サポートをするために生まれたはずのカード群でしたが、「征竜」でデッキを固めても強いことが判明してからはその圧倒的な物量にものを言わせる【征竜】が環境を支配しました。
対するは同弾で登場した《魔導書の神判》を擁する【魔導書】であり、それぞれのデッキに対して微不利くらいの健闘ができる【ヴェルズ】がそれらに追走するといった環境でした。
【征竜】の基本パーツとなるいわゆる「親征竜」は全てレベル7であり、容易に特殊召喚できることからランク7を並べることに長けていました。
また【魔導書】も採用例は少なかったものの、《魔導法士ジュノン》2体でランク7を出すことができたためお互いにランク7のモンスターを投げ合う光景もよく見られました。
それまで出しにくいからと許されていた《No.11 ビッグ・アイ》がお互いの場に現れて、目玉キャッチボールをする光景はザラであり、それを新たな目玉で奪い返すという地獄みたいなデュエルがよく行われました。
流石に大会上位者同士のデュエルでは《No.11 ビッグ・アイ》を出させない、使わせない、という次元での戦いが繰り広げられていましたが、制限カードまで規制されたのは妥当でしょう。
また同弾で登場した《幻獣機ドラゴサック》が《幻獣機トークン》を2体生成することに着目され、対象を取る除去が多かったこの環境に刺さる《オベリスクの巨神兵》が採用され始め、それを正面から突破でき追加効果も期待できる《No.7 ラッキー・ストライプ》も採用されるようになりました。
ほとんど【征竜】時々【魔導書】という環境であるにもかかわらずメタが回るのはカードプールの広い遊戯王ならではの光景だと思います。
【ティアラメンツ】が台頭するまでの【スプライト】もそんな感じでしたね。
7.万能ランク帯と化したランク4
既に《ラヴァルバル・チェイン》を筆頭に粒揃いのランク帯となっていたランク4ですが、その種類はさらに増えていきます。
現代でも活躍する《深淵に潜む者》が一足早く海外より来日していましたが、本格的に「遊戯王ランク4モンスターズ」と呼ばれるようになるのは「LEGACY OF THE VALIANT」の発売以降になります。
前代未聞の「エクシーズ素材化」という除去能力を持つ《No.101 S・H・Ark Knight》と劣勢時の巻き返しに強い全体除去効果を持つ《励輝士 ヴェルズビュート》、現代では下敷きの役割を担っている《ダウナード・マジシャン》に加え【アーティファクト先史遺産】で活躍する《No.36 先史遺産-超機関フォーク=ヒューク》などが収録されたパックです。
特に前者2枚は当時の環境に大きな影響を与え、攻守共に2100を超えるモンスターは守備表示で出す、仕留めきれないならばハンドアドバンテージ・ボードアドバンテージを稼ぎすぎない、といったプレイを意識せざるを得ないカードとなりました。
ランク4の勢いは止まることを知らず、《No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング》《暗遷士 カンゴルゴーム》《No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク》といったカードが登場しました。
9期になっても《鳥銃士カステル》《ガガガザムライ》《星守の騎士 プトレマイオス》などのカードが登場し、エクストラデッキはどのランク4を入れれば良いか、で多くの決闘者が頭を抱えることになりました。
さらには《星守の騎士 プトレマイオス》のエクシーズ素材にする《星輝士 デルタテロス》や重ねて出すエクシーズモンスター、お手軽戦闘破壊マシーンである《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》といったエクストラデッキを圧迫するものの突破力や制圧力の高いモンスターを出せるようなカードプールになったことも【ランク4】の強化に拍車をかけました。
8.【征竜】最期の輝き
ランク4が隆盛していたと同時に、ジャンプフェスタで先行販売された「PREMIUM PACK 17」では漫画『遊戯王ZEXAL』で天城カイトが使用した《No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン》が登場しました。
「ギャラクシーアイズ」エクシーズモンスターに重ねて出せる他、コストでデッキのドラゴン族を3枚墓地へ落とすことで相手のデッキのモンスターを3枚除外する効果とモンスターに2回攻撃できる効果を持ちます。
度重なる規制を受け「親征竜」が各種制限カード、「子征竜」が各種禁止カードとなり細々と戦っていた【征竜】でしたが、このカードの登場を受けて【ランク8】との混成による【ダークマター征竜】として再び環境に顔を出すようになりました。
流石に全盛期ほどの安定性こそありませんでしたが、初動次第では《エフェクト・ヴェーラー》すらガン無視して1ターンキルを仕掛けてくるデッキとなりました。
しばらくして《真紅眼の鋼炎竜》の情報が流れさらなる【征竜】の強化がされるという予想もありましたが、結局その登場より前に「親征竜」が全て禁止カードとなったため夢の共演はできませんでした。
9.9期を象徴するKONAMIの過ち
【ダークマター征竜】が構築不能となった直後、環境を支配したのは【EMEm】です。
当時プレイしていなかった決闘者でも名前くらいは聞いたことのあるデッキだと思います。
物量で押すというコンセプト自体は【征竜】と同じですが【EMEm】はそこに制圧を加えてきます。
具体的には《No.16 色の支配者ショック・ルーラー》の横に《星守の騎士 プトレマイオス》から《セイクリッド・プレアデス》や《サイバー・ドラゴン・ノヴァ》を経由した《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》などを置く感じです。
さらに《フレシアの蟲惑魔》による除去と《ナチュル・ビースト》による魔法封じも添えられるため、後攻でこれを正面から突破するのは無理でした。
その狂った展開力の基盤を支えていたカードこそ《Emヒグルミ》であり、《竜剣士ラスターP》や《EMペンデュラム・マジシャン》によって破壊することで「Em」モンスターをリクルートし異次元のアドバンテージを生み出していました。
《星守の騎士 プトレマイオス》と《旧神ノーデン》が禁止カードに指定されてからは《外神アザトート》の採用が目立ち始めた他、対抗馬になり得る【HERO】や【影霊衣】への規制が強化されたため事実上の強化がされました。
ちょうどこの時期に来日した【彼岸】および「ストラクチャーデッキR-真帝王降臨-」で新規カードを獲得した【帝王】がナンバー2の座を狙って争っていましたが【EMEm】は相変わらず首位についていました。
それどころかサイドデッキから彼らへの対策を投入するなどより突き放すような状況でした。
そしてこのカードが登場します。
これでもアニメ効果より弱体化している《EMモンキーボード》です。
これによりおよそ何を引いても展開が可能となり、非常に高い安定性と制圧力を兼ね備えた【EMEm】が誕生します。
《フレシアの蟲惑魔》では盤面強度が足りないということで《解放のアリアドネ》を採用したカウンター罠で相手を潰すタイプも誕生するようになりました。
《EMモンキーボード》と《竜剣士ラスターP》しか引けていなくても《永遠の淑女 ベアトリーチェ》を使えば最低限の動きができるなど新たな手札事故ケア手段も確保したため、恐れるものはほとんど無くなりました。
さらに《竜呼相打つ》の登場によって【EM竜剣士】の雛形も生まれました。
しかし当然というかなんというか、《Emヒグルミ》《Emダメージ・ジャグラー》《No.16 色の支配者ショック・ルーラー》が禁止カードとなることで【EMEm】は終焉を迎えます。
しかし【EM竜剣士】の雛形をブラッシュアップした、ちゃんとした【EM竜剣士】が登場し、相変わらず環境を席巻しました。
強力な制圧力を誇るランク4はいなくなり盤面強度は弱くなりましたが《爆竜剣士イグニスターP》と《剛竜剣士ダイナスターP》によって《No.38 希望魁竜タイタニック・ギャラクシー》を呼び出し、その横に《解放のアリアドネ》によるカウンター罠のサーチや《フレシアの蟲惑魔》による《狡猾な落とし穴》を適用するといった制圧力は健在でした。
結局この長きに渡る「EM」を中心としたランク4環境は多くの「EM」カードの規制によって終焉を迎えます。
10.終わらなかったランク4環境
終わりませんでした。
【EM竜剣士】がくたばると、【青眼の白龍】【ABC】【SR幻影彼岸】【堕天使】【Kozmo】【HERO】といったデッキがひしめき合う群雄割拠の環境になりました。
中でも【ABC】は《武神帝-ツクヨミ》を、【HERO】は《バハムート・シャーク》から《餅カエル》を呼び出すという戦術を取っていたため、環境からランク4そのものが消滅することはありませんでした。
また【青眼の白龍】における《No.38 希望魁竜タイタニック・ギャラクシー》や【SR幻影彼岸】における各種ランク3も健在であり、真っ黒とは言わずともエクシーズモンスターは未だ環境の中心にいたと言える環境でした。
11.万能調味料の如き環境の破壊者
皆で仲良く覇権を争っていた時代は突如として終わりを迎えます。
もはやランクがいくつとかそういう次元の話ではありません。
エクシーズモンスターですらないモンスター単体でエクシーズ召喚をし始めます。
元々このようなことは《ファントム・オブ・カオス》で《No.39 希望皇ホープ》などをコピーすることでできていましたが、そのような操作無しで成し遂げたのは史上初です。
さらに効果を使った後の《十二獣モルモラット》をエクシーズ素材としているモンスターを素材にエクシーズ召喚すると、もう一度《十二獣モルモラット》の効果を使えるという裁定を得たことで爆発的な展開力を得ることに成功、瞬く間に環境を埋め尽くしました。
《十二獣モルモラット》がフィールドに出ればいいので、《炎舞-「天璣」》によるサーチだけでなく《十二獣の会局》や《SRベイゴマックス》から《SRタケトンボーグ》をサーチして《M.X-セイバー インヴォーカー》をエクシーズ召喚してリクルートするという手段も取られました。
脅威の12枚初動により見事《SRベイゴマックス》と《炎舞-「天璣」》は規制を受けました。そこじゃないよね。
また出張性能も高く、ほとんどのデッキに出張することでフリーチェーン除去のできる《十二獣ドランシア》を横に置き妨害数を+1できた点も非常に困った点です。
一応、対象を取られず火力で押し切れる《ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン》を擁する【青眼の白龍】や《煉獄の狂宴》《隣の芝刈り》という通れば勝ちの見えるカードを得た【インフェルノイド】などが健闘していましたが、やはり【十二獣】に押されがちな状況でした。
年が明け次の弾が出ると、【十二獣】の強化により環境が一色に染まるかと思いきや、【真竜】と共に環境を二分することになりました。
さらに《真竜皇V.F.D.》を擁する【恐竜族】も台頭したことで9期末は凶悪なエクシーズモンスターを真竜が押し返すような構図となりました。
12.新マスタールールの施行
勢いの止まらないエクシーズ召喚に待ったをかけたのは、他でもないKONAMIでした。
9期の終盤、アニメ『遊戯王ARC-V』の放送終了も迫った頃、新マスタールールの施行が発表されました。
端的に言えば、エクストラデッキからの展開に制限がかかり、新設されるエクストラモンスターゾーンにしか出せなくなるというルールです。
新たに誕生するリンクモンスターの持つリンクマーカーのリンク先にも出すことができるというルールですが、リンクモンスターそのものの総数がこの時はまだ少なかったため、融合・シンクロ・エクシーズ・ペンデュラムは事実上の死亡宣告を受けた形となります。
特に《FNo.0 未来皇ホープ》や《No.93 希望皇ホープ・カイザー》などのエクシーズモンスター同士によるエクシーズ召喚は非常に難しいものとなってしまいました。
シンクロ召喚を主体とするデッキは《PSYフレームロード・Ω》などを利用することでエクストラモンスターゾーンを空け、新たなシンクロモンスターを呼び出そうと考えていました。
しかしエクシーズモンスターはフィールドを離れた瞬間エクシーズ素材が無くなり、エクシーズ素材が無い場合は本領を発揮できないカードが数多く存在しています。
結果としてエクシーズモンスターは環境から淘汰され……ませんでした。
10期初頭の環境ではエクストラデッキを多用しないデッキが台頭し、あろうことか規制を受けた【十二獣】と【真竜】が手を組み【恐竜族】と戦い始めたのです。
【十二獣真竜】は「マキシマム・クライシス」で《十二獣ライカ》を得たことで「真竜」のリリースを確保しやすくなり、《真竜剣皇マスターP》の安定した着地に一役買いました。
一方で【恐竜族】は《真竜皇V.F.D.》や《エヴォルカイザー・ラギア》などの制圧型エクシーズモンスター1体に《究極伝導恐獣》を添えた盤面を築き上げ、両者引かない戦いを繰り広げました。
13.エクシーズの終焉
しかしそんな彼らも多くのデッキパーツの規制と新たなるテーマの登場により姿を消し、環境はリンクモンスターによる紺一色となりました。
エクストラデッキからの展開が不自由であるという点はエクシーズモンスターにとって非常に重くのしかかり、いくつかのテーマがそれぞれ抱えていた新たなエクシーズモンスターが活躍する以外ではほとんどエクシーズモンスターが見られなくなりました。
またデュエルの流れも【EMEm】あたりから流行した「先攻で突破されない盤面を作ることで実質先攻1ターンキル」という展開から「リソースを管理しつつピンポイントで妨害を当てることで相手を転ばせて一気にアドバンテージ差をつけて勝つ」という形へ徐々に変化しました。
環境のインフレが止まったわけではありませんが、少なくとも【EMEm】や【十二獣】のように誰もがそのデッキしか使わない、という世紀末環境ではなくなった点は大きいでしょう。
なお「LINK VRAINS PACK3」で登場しエクシーズモンスターを救済する存在と目された《武神姫-アハシマ》は他の召喚方法の救済者と比べると大して役に立たなかったため、それもあってエクシーズ召喚は影に埋もれることになりました。
14.そして11期へ
11期へ移ると、エクストラデッキからの展開に制限が課せられなくなりました。
既存のエクシーズ召喚主体のデッキが息を吹き返した他、【ヌメロン】が《SNo.0 ホープ・ゼアル》を、【電脳堺】が《真竜皇V.F.D.》を駆り先攻制圧を仕掛けた結果、両者とも禁止カードとなりました。
新規カードとして革命的なのはやはり《天霆號アーゼウス》の登場でしょう。
エクシーズモンスターが戦闘をしたメインフェイズ2にエクシーズモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚できるカードで、フリーチェーンでフィールドのカードを全て墓地へ送る効果を持ちます。
この召喚方法が非常に緩い条件で、エクシーズモンスターのコントローラーが自分に限定されていないだけでなく、エクシーズ素材にするモンスターすらも戦闘を行ったモンスターである必要すらありません。
そのため《十二獣ワイルドボウ》や《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》などによる直接攻撃から他の「十二獣」モンスターを重ねたり《ダウナード・マジシャン》を重ねてその上に出すといった動きが流行しました。
なぜか禁止カードから戻された《十二獣ドランシア》を擁する【十二獣】や新規カードを貰い先攻制圧と後攻1ターンキルの双方を狙えるようになった【LL】、その両方をサブプランとして搭載できた【鉄獣戦線】が環境を支配しました。
さらに《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》と同期であり、当時のルール上出しにくかった《FNo.0 未来龍皇ホープ》も容易にフィールドに出るようになり、エクシーズ召喚主体のデッキでは《天霆號アーゼウス》に次ぐ制圧要員として活躍しました。
そして現在ではリンクモンスターをもエクシーズ素材にできる《ギガンティック・スプライト》を擁する【スプライト】が【ティアラメンツ】と覇権を争っています。
エクシーズ召喚の反省と課題
1.同じレベルのモンスターを揃える
フィールドに同じレベルのモンスターを揃えて重ねるだけです。
モンスター同士を重ねて出すという性質上、カードが存在しないモンスタートークンはエクシーズ素材にできません。
公式がモンスタートークンの表現には攻守が判別できれば何を使ってもいいとルールブックに書いているわけですからおはじきなどの上にカードを乗せるわけにはいかなかったのでしょう。
ただしちゃんとしたカード本体があることから、罠モンスターはエクシーズ素材にできます。
2.カードデザインとパワーバランス
エクシーズモンスターは、レベルを持たない代わりにランクを持つ、という特徴を持ちます。
これは高レベルモンスターであるほど多くのメタカードが刺さりやすかったこれまでの環境を是正すると同時に、同レベルのモンスターを並べるだけで強いという非常にシンプルなゲーム性を提供したものと考えています。
つまるところ、このレベルを持たないモンスターというデザインと同レベルのモンスターを重ねるというシステムは成功であるという考えです。
またエクシーズ素材となったモンスターは即座に墓地へは送られず、エクシーズモンスターを補助する存在となってフィールドに漂います。
このエクシーズ素材は墓地へ送られた際に、フィールドから墓地へ送られた扱いになりません。
これにより《オイスターマイスター》や《クリッター》などのモンスター効果の発動を抑制したのです。
海外では登場当初こそフィールドから墓地へ送られる扱いだったため《魔界発現世行きデスガイド》で《クリッター》をリクルートし《No.17 リバイス・ドラゴン》のコストで墓地へ送る動きが見られましたが、それも早い段階で裁定変更されたことで消滅しました。
加えてエクシーズモンスターの強化形態がベースとなるエクシーズモンスターを素材に出すというデザインもシンプルで良かったと考えています。
《CNo.39 希望皇ホープレイ》および《CNo.32 海咬龍シャーク・ドレイク・バイス》はアニメ『遊戯王ZEXAL』に登場した「CNo.」で、純粋な強化形態として登場しました。
『遊戯王ZEXALⅡ』における「RUM」による「CX」や「CNo.」の登場も外部の力による強制的な強化ということですんなり受け入れられる存在だったと感じます。
一方で《迅雷の騎士ガイアドラグーン》を始めとするエクシーズモンスターに重ねて出すことができ、特別何かの強化形態であるわけでもないカード群には否定的な意見を持ちます。
2枚以上のカードを重ねて出すというエクシーズ召喚の原則を破っており、デッキの多様化を奪いかねない存在だからですね。
実際に「十二獣」はあらゆるデッキに入り込み、「マキシマム・クライシス」の発売前は「十二獣」の入っていないデッキの方が珍しいほどでした。
極め付けは《天霆號アーゼウス》でしょう。
エクシーズ召喚できるあらゆるデッキに入り込み、フリーチェーンでお互いのフィールドのカードを全て墓地へ送るという最強クラスの全体除去を仕掛けてきます。
相手のエクシーズモンスターへ攻撃を仕掛けた後に適当なエクシーズモンスターを出して重ねることもできるという召喚条件の緩さに対して持っている効果が強力すぎます。
エクシーズ素材が即座に墓地へ送られないことが事実上の欠点であり効果の発動回数が制限されていることからシンクロモンスターよりも自重したとは言えますが、それにしても召喚条件が緩いことやゲームスピードの高速化によって登場以降常に環境の主役であり続けました。
3.立ちはだかるライバル
やはり最大のライバルと呼べるのはリンクモンスターでしょう。
モンスタートークンも素材に使用でき、条件さえ合えばレベルを揃える必要すらありません。
10期ではルールが向かい風となった点や強力なリンクモンスターが多数登場した点からリンクモンスターには押されていましたが、現在では対等に戦えるだけの力を持っていると考えています。
それどころかレベルが等しいモンスターが揃った場合はエクシーズ召喚とリンク召喚を使い分けられることから、肩を並べて戦えるパートナーと呼ぶこともできるでしょう。
【十二獣鉄獣戦線】や【スプライト】はエクシーズモンスターとリンクモンスターを併用し、大会環境で活躍した例です。
その性質上、シンクロモンスターや融合モンスターでは余程のパワーがないと太刀打ちできないと考えていましたが、【ティアラメンツ】が後攻0ターン目に《エルシャドール・ミドラーシュ》を出すなどして環境トップにいる現状を鑑みると、思っている以上にカードパワーの差は大きくないのかもしれません。
総括
エクシーズ召喚はシンクロ召喚に次ぐ新たな召喚方法でした。
シンクロ召喚の反省を活かして最初こそパワーを抑えて作られましたが、黎明期に近い頃のカードが現代でも最前線で活躍し続けている現状を考えると、やはり必要だったのは1ターンに1度の誓約の方だったのではないでしょうか。
とはいえ《No.39 希望皇ホープ》を軸に強化して殴るだけの【希望皇ホープ】などはやることが単純明快で初心者にも触りやすいデッキでしょう。
やはり同じレベルのモンスターを揃えるだけというのは目標がわかりやすくデュエルの入門には便利な存在です。
対してエクシーズモンスターに重ねて出すエクシーズ召喚は際限無いインフレを起こす元凶であり、《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》や《天霆號アーゼウス》があらゆるデッキから出てくるというのはデッキの多様性を損なうデザインと言わざるを得ません。
特に後者はベースとなるエクシーズモンスターのランクすら問わない点でその異質さが際立ちます。
そのため、エクシーズ召喚自体は成功だが重ねて出すエクシーズ召喚は存在そのものが失敗である、という結論を出します。
創始者である《CNo.39 希望皇ホープレイ》くらいはその性能の低さから別枠扱いしてあげたかったのですが、《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》まで擁護することになりそうだったので無理でした。
アニメでの演出が好きだったのでこのような結論を出すととなり非常に残念です。
なお「RUM」による特殊召喚はこれといって問題が無いと考えています。
むしろサーチのしにくいカードによる純粋な強化という点で、出すために手間がかかり妨害を受けやすい反面、出せれば強いという強化形態のお手本のような存在なので成功の部類ではないでしょうか。
「RUM」の使用を前提とすれば《No.99 希望皇ホープドラグナー》の存在も許容できるでしょう。ダメなのはこっちではなく《No.39 希望皇ホープ・ダブル》の方です。
ついでにレベルを無視してエクシーズ召喚するタイプもありますが、これについてはあらゆるモンスターのレベルを無視するわけではなく、テーマの特徴を利用しながらエクシーズ召喚するための効果外テキストであるため許容してもいいと考えます。
尤も《交血鬼-ヴァンパイア・シェリダン》や《真血公ヴァンパイア》の場合は相手のモンスターのみでレベルを無視してエクシーズ召喚できるためそれはそれでどうかと思いますが。
そしてエクシーズモンスター同士によるエクシーズ召喚は現存する実例が少なすぎると考えるくらいには正統な強化だと考えているのでもう少し増えてもいいと考えています。
【インフェルニティ】使いはフィールドを埋めるエクシーズモンスターの処理方法として《FNo.0 未来皇ホープ》を出して破壊していた歴史がありますが、現在ではリンクモンスターが存在するためそのような手順を踏む必要性はほとんど無く、純粋な戦力としての活躍が期待できるでしょう。
今後は重ねて出すエクシーズ召喚を登場させず、元のルールに則って同レベルモンスター同士によるエクシーズ召喚で様々なカードが環境を彩ってくれることを期待しましょう。
決してリンクモンスターをエクシーズ素材にしないようにしてください。
拙い文章でしたが、以上で簡単な考察もとい感想文を締め括りたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。