マガジンのカバー画像

短篇小説(連載)憐情(れんじょう)

16
人間と動物(狸)の関わりを通じて、希薄になった現在の人間関係に警告を鳴らす物語です。憐情(れんじょう)
運営しているクリエイター

#短編小説

【連載小説】憐情(1)

 三日間休暇をとり、私は日本から離れ、南の島に休暇に出かけた。    砂浜に寝そべり、抜け…

杜江 馬龍
7か月前
50

【連載小説】憐情(2)

 次の日から仕事で汗を流した。会社の総務に席を置く私は、朝からバタバタと走り回った。  …

杜江 馬龍
7か月前
39

【連載小説】憐情(3)

 ある金曜日の午後、携帯電話が鳴った。思いがけずお袋からだった。  お袋は田舎で独り住い…

杜江 馬龍
7か月前
39

【連載小説】憐情(4)

 妹と息子はありあわせの食材を冷蔵庫から見つけ、ご飯を炊いて食べた。  妹は旦那に今日は…

杜江 馬龍
7か月前
31

【連載小説】憐情(5)

・・・・朝が来た。  妹は、階下の物音で目が覚めた。横で息子はまだぐっすり寝ている。  着…

杜江 馬龍
7か月前
32

【連載小説】憐情(6)

 その夜、妹から私に連絡があった。  実家での出来事を事細かに、電話で話してくれた。  …

杜江 馬龍
7か月前
32

【連載小説】憐情(7)

 年が明けて、私は会社の上司に郷里に帰ることを相談した。  一旦は留保してくれたが私の意思が固いことに反論は難しいと判断し、退職願いを受理してくれた。  住んでいるマンションを他人に貸すため、駅前の不動産屋に行き入居募集の手続きをお願いした。  荷物は粗方処分したので、実家に持っていくものは、身の回りのものだけにした。ただ、本など意外と重いものは残った。  区役所で移転手続きを済ませ、羽田空港に向かった。  空港は混み合っていた。大きな荷物を抱えた家族連れや、ビジネス出張

【連載小説】憐情(8)

 年が明け、春風が吹く季節になったある日、  妹から連絡があった。  「兄貴にいい仕事があ…

杜江 馬龍
7か月前
40

【連載小説】憐情(9)

 面接から二日後、私に連絡が入った。  面接に行った会社からだった。  来週から来てほしい…

杜江 馬龍
7か月前
45

【連載小説】憐情(10)

 お袋の言うことには、近所に犬を数頭飼っているお宅があり、最近会社を定年で退職した主人が…

杜江 馬龍
7か月前
40

【連載小説】憐情(11)

 その年の秋、大型台風によって、私の住んでいる一帯は、甚大な被害を受けてしまった。  風…

杜江 馬龍
7か月前
35

【連載小説】憐情(12)

 台風が去ったある日、今度の土曜日に妹家族が一泊で家族で遊びに来ると、電話があった。  …

杜江 馬龍
7か月前
36

【連載小説】憐情(13)

 犬を飼っているお宅のご主人は、最近、会社を定年で辞めて毎日犬を連れて散歩していた。  …

杜江 馬龍
6か月前
38

【連載小説】憐情(14)

 お袋は朝が早いので、夜は早めに床に付く。  両瞼が閉じだしたら既にスリープモードである。  裏庭の狸御殿から狸一家が遊びに来る時刻には、すでにお袋は寝ていることが多いのだ。もっぱら狸の話し相手は私に相場が決まっている。狸と様々なことを話し合う。  例えば、生物はどうして、人間や狸や馬や牛や他の動物、また小さな虫などに差別化されてこの世に生まれてくるのかとか、同じ人間に生まれてきても裕福な家庭に生まれる人など貧富の差がどうしてあるのかとか、日本に生まれたりアメリカに生まれた