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短篇小説(連載)憐情(れんじょう)

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人間と動物(狸)の関わりを通じて、希薄になった現在の人間関係に警告を鳴らす物語です。憐情(れんじょう)
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2024年5月の記事一覧

【連載小説】憐情(8)

 年が明け、春風が吹く季節になったある日、  妹から連絡があった。  「兄貴にいい仕事があ…

杜江 馬龍
10か月前
40

【連載小説】憐情(9)

 面接から二日後、私に連絡が入った。  面接に行った会社からだった。  来週から来てほしい…

杜江 馬龍
10か月前
45

【連載小説】憐情(10)

 お袋の言うことには、近所に犬を数頭飼っているお宅があり、最近会社を定年で退職した主人が…

杜江 馬龍
10か月前
40

【連載小説】憐情(11)

 その年の秋、大型台風によって、私の住んでいる一帯は、甚大な被害を受けてしまった。  風…

杜江 馬龍
9か月前
36

【連載小説】憐情(12)

 台風が去ったある日、今度の土曜日に妹家族が一泊で家族で遊びに来ると、電話があった。  …

杜江 馬龍
9か月前
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【連載小説】憐情(13)

 犬を飼っているお宅のご主人は、最近、会社を定年で辞めて毎日犬を連れて散歩していた。  …

杜江 馬龍
9か月前
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【連載小説】憐情(14)

 お袋は朝が早いので、夜は早めに床に付く。  両瞼が閉じだしたら既にスリープモードである。  裏庭の狸御殿から狸一家が遊びに来る時刻には、すでにお袋は寝ていることが多いのだ。もっぱら狸の話し相手は私に相場が決まっている。狸と様々なことを話し合う。  例えば、生物はどうして、人間や狸や馬や牛や他の動物、また小さな虫などに差別化されてこの世に生まれてくるのかとか、同じ人間に生まれてきても裕福な家庭に生まれる人など貧富の差がどうしてあるのかとか、日本に生まれたりアメリカに生まれた

【連載小説】憐情(15)

 その別れは突然やってきた。  我が家の裏庭の狸の家では、雌の子狸がそろそろ独立する時期…

杜江 馬龍
9か月前
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【連載小説】憐情(16完)

 あくる年の秋も深まった時季、お袋は、体調を崩した。  裏庭の狸の夫婦は、心配と見えて、…

杜江 馬龍
9か月前
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