マガジンのカバー画像

短篇小説(連載)憐情(れんじょう)

16
人間と動物(狸)の関わりを通じて、希薄になった現在の人間関係に警告を鳴らす物語です。憐情(れんじょう)
運営しているクリエイター

2024年4月の記事一覧

【連載小説】憐情(1)

 三日間休暇をとり、私は日本から離れ、南の島に休暇に出かけた。    砂浜に寝そべり、抜け…

杜江 馬龍
10か月前
50

【連載小説】憐情(2)

 次の日から仕事で汗を流した。会社の総務に席を置く私は、朝からバタバタと走り回った。  …

杜江 馬龍
10か月前
38

【連載小説】憐情(3)

 ある金曜日の午後、携帯電話が鳴った。思いがけずお袋からだった。  お袋は田舎で独り住い…

杜江 馬龍
10か月前
38

【連載小説】憐情(4)

 妹と息子はありあわせの食材を冷蔵庫から見つけ、ご飯を炊いて食べた。  妹は旦那に今日は…

杜江 馬龍
10か月前
31

【連載小説】憐情(5)

・・・・朝が来た。  妹は、階下の物音で目が覚めた。横で息子はまだぐっすり寝ている。  着…

杜江 馬龍
10か月前
32

【連載小説】憐情(6)

 その夜、妹から私に連絡があった。  実家での出来事を事細かに、電話で話してくれた。  …

杜江 馬龍
10か月前
32

【連載小説】憐情(7)

 年が明けて、私は会社の上司に郷里に帰ることを相談した。  一旦は留保してくれたが私の意思が固いことに反論は難しいと判断し、退職願いを受理してくれた。  住んでいるマンションを他人に貸すため、駅前の不動産屋に行き入居募集の手続きをお願いした。  荷物は粗方処分したので、実家に持っていくものは、身の回りのものだけにした。ただ、本など意外と重いものは残った。  区役所で移転手続きを済ませ、羽田空港に向かった。  空港は混み合っていた。大きな荷物を抱えた家族連れや、ビジネス出張