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ニャンニャンファイトクラブ


好きな人から貰ったアロマキャンドルが良い匂い過ぎて顔の横に置いて寝たら右袖が全部燃えた友達が消えた。何ヶ月かに一度、文学フリマ出店のために装丁についての連絡を取るくらいで、会わなすぎて毎回危うく他人になりかけるけど、私に短歌を教えてくれた人だった。




まだ短歌が今ほど流行る前に、その人はわたしに色んな歌人を教えてくれた。木下龍也さんや穂村弘さん、岡野大嗣さんはもちろん、SNSでフォロワーが10人くらいのとんがりコーン歌人まで幅広く。

色々教えてくれるのは有り難かったし、自分でも素敵な歌集をたくさん見つけた。でもその人が作った短歌集が一番素晴らしかった。何回言ってもあんまりピント来てない感じだったけど、ピント来たらきたでこの人はたぶん創作の全てを辞めるだろうから、それで良いんだと思う


毎週火曜だったか木曜になるとクリームソーダ屋になる高円寺の喫茶店なのか本屋なのかアコ箱なのかよく分かんない場所で働いていて、そこには色んなレコードや詩集、短歌集が置かれていた。

猫に餌をやったらオーナーから1万円もらえるんだ、と言ってて桐生一馬かよと思った。



ある日、その人からオーナーと喧嘩して店を辞めること、しかも好きな人の親に突然押しかけられてボコボコにされたという連絡がきた。なんだそれ

そんな流れでSNSやLINEのアカウントを削除して正体を消すのはいつもの事だったから、面倒くさいなと思って『それいつまでやるん?』と言ってしまった。あ、心が病んでる人に一番言ってはいけない言葉。だけどお前は友達だから言ったんだけど。とも思いつつ、気づいた時にはLINEが削除されていてまた神出鬼没の伝説ポケモンになってしまったのであった


友達の人生に口出しして、ましてや変えてやろうなんてつもりは毛頭ない。それでもそれが自分にできる精一杯だと思った。親に反対されても好きなら会いにいけ!まけるなよ



“本なんか捨ててぼくも街へ出たい きみを1ページめくってみたい”


“しあわせになってねなんて言えるほどあなたのことを見下してます”



もうすぐ文学フリマがある


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