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【1人or2人用声劇台本】世迷言

この作品は、声劇用の台本です。
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「SNSが発展すると、寺の参拝者が減る」
これは、そんな論理を展開するお話。

【上演時間】
約5分

【配役】
・A(♂)……論理を語る人。
 ※性別変更可

・B(♂)……論理を聞く人。
 ※性別変更可


A:「SNSが発展すると、寺の参拝者が減る」

B:「急に何を言い出すんですか」
B: 客がいないので、よほど暇だったらしい。そんなことを話し始めた。

A:「ほら、風が吹けば桶屋がもうかるってことわざがあるだろ? あれと同じ構造の理論だよ」

B:「ほう、ではその理論とやらをご高説願いましょうか」
B:私がそう言うと、もう片方は大げさに咳払いをする。

A:「おっほん。そもそもだ。寺や神社、教会に人が足を運ぶのは何故だと思う?」

B:「それは、冠婚葬祭を行うためではないでしょうか」

A:「では、冠婚葬祭を行う目的とはなんだ?」

B:学校の授業で当てられているような気分になりながら、考えて答える。
B:「共通する目的となると……祈りでしょうか」

A:「そう、祈りだ。冠婚葬祭だけじゃない。人が参拝する理由の根本には祈りがある。神仏に救ってもらいたいと願っているのさ」

B:「人は万能ではありません。救いを求めるのは当然でしょう」

A:「ああ、私もそう思う。祈り、救いを求めることにとやかく言いたいわけじゃあない。」
A:「私が言いたいのは、祈りの裏には不平や不満が隠れているってことさ」

B:またわけの分からないことを言い出したな、と思ったが口には出さない。
B:「不平や不満ですか?」

A:「何かを祈るということは、変えたい現実や将来がある、つまり現状に不平不満があるということだろう?」

B:「少々強引なように感じますが……たしかにまあ心当たりがなくはないですね。祈りとは欲求であり、不平不満の裏返しなのかもしれません」

A:「そうだろう?」

B:偉ぶった声で言ってくる。簡単に同意するべきではなかったかもしれない。

A:「そんなところへ持ってくる不平や不満、そして祈りなんて、本人はいたって真剣なんだろうがね。端から見れば世迷言に過ぎないのさ」

B:冷たいことを言うな。けれども、誰かの祈りを見たときにどこか他人事だと思ってしまう気持ちには共感できる。

A:「他人の不平不満ほど聞いていてつまらないものはない。だから、祈りや不平不満を周りの人間に話すには限度がある。」
A:「そこで古代から人間は寺社や教会へ行き、神仏にその祈り、世迷言を聞いてもらっていたわけだ」

B:「それで心の平静を保てるのなら、良いではありませんか」

A:「ああ、私は神仏に頼ることに文句を言いたいわけでもない」

B:「では、何が言いたいのですか?」
B:なかなかに長くて立派な論になりそうだ。

A:「近頃はSNSというものが発展しているらしいじゃないか。匿名で不特定多数に向けてメッセージを発信できる。誰がそれを拾ってくれるかも分からないのにな。」
A:「だからこそ、SNSは直接会っての対話よりも気軽に祈りや不平不満を流せる。意味のない馬鹿馬鹿しい話や不平不満の多いこと多いこと。それらはすべて世迷言じゃないか。」
A:「さらに始末の悪いことに、他人のそれに対してろくすっぽ何も考えずにいいねやらリツイートやらしたりする」

B:何だかだんだん説教臭くなってきた。私が怒られているようだ。
B:「なるほど、SNSで世迷言を垂れ流すようになったので、寺やら神社やら教会やらに通ってまで世迷言を吐き出す必要がなくなったと」

A:「そういうことだ」

B:暇潰しになる程度には面白い論だと思う。そしてここに来てようやく、この話のオチが見えた。

A:「あーあ、もうちっと昔みたいに頼られたいもんだなあ。世迷言だとしても、なかったらなかったで寂しいもんだ。あんたもそう思うだろ?」

B:「仏であるあなたがそんな不満を言うなんて、まさに……」

A:「世迷言ってわけさ」

B:境内にポツンと二体並んだ仏像は、少し笑ったような気がした。

《終》

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