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【2人用声劇台本】正直飴
この作品は、声劇用台本です。
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幼馴染みに告白できないでいる男子高校生、照屋。
そんな照屋の前に、キューピッドと名乗る少女が現れて……。
これは、気持ちを伝えるまでの物語。
【上演時間】
約25分
【配役】
・照屋(てるや)(♂)……男子高校生。幼馴染に告白できずにいる。
※性別変更不可(演者の性別不問)
・キューピッド(♀)……恋のキューピッド。照屋をサポートしようとするが、ドジで上手くいかない。
※性別変更不可(演者の性別不問)
※スペシャルサンクス:マヨ様 (表紙作成)
【キューピッド】
照屋:「ん、じゃあまたな。」
照屋:「………はあー。いつになったら言えるんだろうな。」
照屋:「高校生にもなってこんなことで悩んでるなんて、笑われるぞ、まったく…。」
照屋:「ん?あれは…」
キューピッド:「いたたたたっ!ちょっと、羽を引っ張らないでください!」
照屋:「子どもが子どもに絡まれてる…。これは助けた方がいいのか?」
キューピッド:「まあボクは神様ですしィ?この只者ではないオーラに惹き寄せられてしまうのも無理はないですけどォ?」
照屋:「なんかヤベーこと言ってる。あとムカつくからドヤ顔やめろよ。」
キューピッド:「子どもの相手をしているほど暇じゃないんですよねェ。だから子どもは大人しく家に帰ってもらえますか?あ、子どもだから大人しくするなんてできないですよねェ?すみませーん、気がつかなくって。」
照屋:「うわあ、絶対友達にしたくないタイプだわ。つーかお前も子どもだろ。」
キューピッド:「困りましたねェ…。あなたたちが喜びそうなものは何も持っていないんですよォ。」
キューピッド:「え?この背中に生えている羽根をくれ?イヤですよォ。あなたたち、他人から髪の毛をくれって言われて喜んであげたりします?抵抗ありますよねェ?それと同じなんですっ…ていたたたたたっ!痛い痛い痛いっ!!」
照屋:「あーなるほど…って感心してる場合じゃあねえっ。おいガキども、そのへんにしとけっ!」
キューピッド:「いや、ボクはガキじゃないんですけど。」
照屋:「自分がされて嫌なことを他の人にしちゃいけませんって学校で習わなかったか?」
キューピッド:「ボクは人じゃないですけどね。」
照屋:「自分たちだって、他の人から羽を引っ張られたら嫌だろ?」
キューピッド:「その子たちには羽はありませんけどね。」
照屋:「お前は黙ってろっ……とにかく、何本か羽抜けたろ?それで満足したらどっかいけ。聞き分けの悪いガキは嫌いなんだ。俺の言ってる意味、分かるよなあ?あ?」
キューピッド:「わー、すごい、子どもたちが一目散(いちもくさん)に逃げていきますよォ。」
照屋:「生まれつき目つきが悪いんでな。こういうときだけは役に立つんだよ。」
照屋:「というより、お前にも問題あるぞ。そんな派手な格好して挑発するようなことばっか言ってたらいじめられるに決まってるだろ。天使のコスプレかなにかか?背中に羽の飾りなんかつけやがって。」
キューピッド:「失礼ですねェ、天使じゃありません。ボクはキューピッドですっ。よく天使と間違えられますけど、全く別の存在なんですよォ。」
照屋:「はいはい、キューピッドのコスプレね。ガキの間ではそういう遊びが流行ってんのか?」
キューピッド:「だからコスプレじゃありませんってば。れっきとした愛の神、キューピッドですぅ~。」
照屋:「悪いけど、ガキの遊びに付き合うつもりはねえから。そういうのはお友達作ってガキ同士でやるんだな。」
キューピッド:「しれっとボクが友達いない前提で話を進めるのやめてもらえます?それにボクはガキじゃありません。本物のキューピッドなんですよォ。」
照屋:「ふーん、なら証拠見せてみろよ。」
キューピッド:「そうですね…じゃあ、この翼で飛んでみせましょう。よく見ててくださいよォ?それっ!」
照屋:「わー、すげー飛んでるー……三センチだけ。」
キューピッド:「おかしいですねっ…ふんっ…近頃引きこもっていたので…ふぬっ…体が…よいしょっ…鈍って…きてっ…ます、ねっ…」
照屋:「あーもう分かった分かった、もういいから。じゃ、またな。自称キューピッドさん。」
キューピッド:「ちょっと待ってくださいよォ、照屋さん。」
照屋:「…俺、名乗ってないよな?」
キューピッド:「細かいことは気にしないでくださーい。そんなことより、なにか困っていることはありませんか?」
照屋:「ねーよ、そんなの。」
キューピッド:「特に恋愛関係とか。」
照屋:「……今なんて言った?恋愛関係?」
キューピッド:「はい。ボクはキューピッドですからね。恋だの愛だのは専門分野なんですよォ。それでピンときましたよ。あなた恋愛関係で困ってること、ありますよねェ?よかったらボクがお手伝いを…」
照屋:「断る。」
キューピッド:「お願いしますよォ~天界から与えられた今月のノルマ、まだ終わってないんですってェ。このままじゃボク、キューピッドの資格剥奪されちゃうんですよォ―。」
照屋:「天界ってそんなブラック企業なのかよ…。さっき引き込もってたとか言ってたけど、ノルマ終わってないのはそれが原因なんじゃねーの?」
キューピッド:「いやあ、ネット配信サービスってすごいですねーあっという間に時間が経ってましたよォ~。」
照屋:「自業自得じゃねーか!少しは反省しろよ!」
キューピッド:「お願いですよォーきっと役に立ちますからあ…。」
照屋:「はあ……で、何をしてくれるんだ?」
キューピッド:「え、お手伝いしてもいいんですかァ?」
照屋:「気まぐれだよ。一人で悩んでてもしかたねーし。」
キューピッド:「ありがとうございます!頑張りますから、安心していてくださいね!」
照屋:「とてつもなく不安だ…。」
【弓矢とハープ】
キューピッド:「あそこにいるのが照屋さんの想い人ですか。きれいな人ですねェー。あなたにはもったいない気もしますが…。」
照屋:「余計なお世話だ。それで、どうするつもりだ?」
キューピッド:「両思いになれればいいんですよね?そんなのこの弓矢を使えば簡単ですよォ。この弓矢で射られた人はもうメロメロになっちゃうんですから。」
照屋:「たしかにキューピッドって弓矢を持ってるイメージはあるけど…本当に大丈夫なのか?」
キューピッド:「大丈夫ですって。例えばあそこいる女子高生に弓矢を使う、とっ…!ほら、ボクのことカワイイーって言って写真とってくるでしょ?弓矢でボクにメロメロですよォ。」
照屋:「弓矢がなくてもしそうな反応だけどな…まあ実害はないみたいだし、いいか。」
キューピッド:「じゃあ早速いきますよー。照屋さんのことを好きになーれっ!」
照屋:「おい、お隣のおばさんが話しかけに行ったぞっ!」
キューピッド:「えっ?」
照屋:「今絶対おばさんに当たったよな…。」
キューピッド:「き、きっと気のせいですって…」
照屋:「いや、どう見ても当たっただろ…ほらおばさんこっちに向かってくるぞ。…ああ、どうもこんにちは。いい天気ですねー。」
照屋:「あの、どうしました…?最近かっこよくなった?あ、ありがとうございます…。」
キューピッド:「じゃ、落ち着いたらまた合流しましょう。頑張ってくださいねー」
照屋:「おいこら逃げるな…え、いえ、お茶のお誘いはありがたいのですが、これからちょっと用事があって…いえ、本当に結構ですからっ…!」
キューピッド:「いやぁ、もうちょっとだったんですけどねェ。」
照屋:「やっぱりお前に頼むんじゃなかった。もう諦めよう…。」
キューピッド:「前向きに考えましょうよォ。照屋さんは二人の女性から好かれることになるんですよォ?」
照屋:「だからそのうちの片方は望んでねえんだって!」
キューピッド:「いやでも次は大丈夫ですってェ!バーンと任せてください!」
照屋:「…それで、次はどうするんだ?」
キューピッド:「次はコレですっ。」
照屋:「…ただのハープにしか見えないぞ。使い物になるとは思えんが…。」
キューピッド:「チッチッチッ…キューピッドのボクがただのハープを出すわけないじゃないですかぁ。」
キューピッド:「このハープを弾くと、魅力的に見えるようになるんですよ。ボクがこれを弾きさえすれば、照屋さんは今日からモテてモテて仕方なくなりますよっ。」
照屋:「はいはい、分かったよ。とりあえずやってくれ。」
キューピッド:「はい、喜んで!」
キューピッド:「照屋さんはー♪すっごくー♪魅力的ー♪(ハープを弾きながら)」
照屋:「おぉっ…なんかすごく魅了が上がったような気がする…歌詞のセンスは壊滅的だったけど。」
キューピッド:「さあ、これでモテモテになるはずですよォ。愛しの彼女に会いに行きましょうっ。」
照屋:「お、おう。そうだな……。…ところで、さっきからやたら虫が湧いてくる気がするんだが…。」
キューピッド:「え?……あっ…」
照屋:「嫌な予感しかしないが一応聞いてやる。どうした?」
キューピッド:「このハープ、チューニングするの忘れてました~。人じゃなくて虫から好かれるようになっちゃったみたいですねェ。」
照屋:「お前本当にいい加減にしろよっ!」
照屋:「うわああ、虫がうじゃうじゃ湧いてくる…おい、黙って見てないでなんとかしてくれっ。誰かとってくれー!」
【正直飴】
キューピッド:「えーっと、もうちょっと離れてもらえますぅ?念のため。」
照屋:「誰のせいだよっ!俺だっておばさんと虫から好かれたいわけじゃないんだからな。」
キューピッド:「分かってますよー。これまでは相手の心を変えようとか、照屋さんの魅力をあげようとか、一時しのぎで無理矢理印象を変えようとしたのがいけなかったんです。」
キューピッド:「お相手の方が本当に照屋さんのことを好きなら、きちんと気持ちを伝えることで応えてくれますよ!」
照屋:「いや、それはそうかもしれねーけど…それができれば苦労しないんだって。」
キューピッド:「安心してください。そんな照れ屋の照屋さんにピッタリのサポートアイテムがあるんですよォ。これですっ。」
照屋:「これって…ただの飴だろ?」
キューピッド:「ところがそうじゃないんですっ。これは正直飴といって、舐めた人は思っていることを正直になんでも言ってしまうんですよ。」
照屋:「なんか怖いな、それ。余計なこと言ったりしねえだろうな…。」
キューピッド:「大丈夫ですって。本当に好きなら、その気持ちが伝わるだけですから。さ、早く食べてみてくださいよォ。」
照屋:「本当にこれで最後だからな…。(飴を食べる)」
照屋:「…なんか喉がスースーするな…。これが飴の効果か?」
キューピッド:「気持ちが楽になってきたでしょう?じゃあ、ボクは遠くから見守ってますから、頑張ってくださいねェ~!」
照屋:「ちょ、どこに行くんだよっ……ん…あっ、えっと…偶然だな。こんなところで。って、近所なんだからそれくらいあるか。」
照屋:「今いた子ども?ああ。天使なんだってよ。…わけ分かんねーよな。気にしなくていい。」
照屋:「隣のおばさんが探してた?…あー、なんか用事でもあるのかもな。まあ、今は気にしなくていい。」
照屋:「視界の端で黒い物体がカサカサ動いてた?…それも気にしな…いや、気になるけどっ。」
照屋:「…あのさ、そこの公園のベンチで少し話さないか?」
キューピッド:「うんうん。効果は出てるみたいですねェ。頑張ってくださいよ、照屋さん。」
照屋:「…あのさ、小さいとき、よくこの公園で遊んだよな?おままごととかしてさ。」
照屋:「そのとき約束したこと、覚えてるか?…そう、だよな。そんなガキの頃の約束なんて、覚えてるわけねーよな。」
照屋:「『いつか大きくなったら、お嫁さんにしてね』って、笑ってたんだよ。お前は。」
照屋:「……その、なんだ…俺は馬鹿正直にその約束を信じてたって言ったら、さ…笑うか?」
照屋:「つまり、だ…俺は、その…あのときから、ずっと…えっと…お前しか…見て、なかった。…どういうことって……だから…」
照屋:「好きって言ってんだよっ!…お前のこと。」
照屋:「……え?お前も?」
照屋:「……そっか。ありがとう。うん、素直に嬉しい。」
照屋:「今更関係性が変わるのも気恥ずかしいし、今更言うことじゃねーかもしれねーけどよ…これからもよろしく。」
【愛が続く】
キューピッド:「お、やっと終わりました?お疲れ様ですー。」
照屋:「はあぁぁぁーーー緊張したぁぁぁぁあーーー……!」
キューピッド:「やればできるじゃないですかァーよく頑張りましたねっ!」
照屋:「お前に言われるとすごく腹が立つが…お前には感謝してるよ。」
キューピッド:「いやぁ、そんな感謝されるようなことはしてませんよォ。」
照屋:「おいおい、褒めてやってるんだから謙遜することはないだろ。」
キューピッド:「いやあ、謙遜なんててないですよォ…。ま、これで今月のノルマもクリアしましたしぃ、僕も助かりましたよォ。苦労して付き合うことが出来たんですから、大事にしてあげてくださいよォ?」
照屋:「ああ…ありがとうな。じゃあ、また。」
キューピッド:「ええ、お幸せにー。」
キューピッド:「……来ましたね。お疲れ様ですー。」
キューピッド:「無事に彼女になれてよかったですねっ!」
キューピッド:「あなたに頼まれた通りに照屋さんのことをサポートしましたけどォ……」
キューピッド:「最初から両思いだって分かってるのにこんなに回りくどいことをするなんて、本当に人間ってめんどくさい生き物なんですねェ…。」
キューピッド:「それにあなたもイジワルですよ。彼に自力で告白して欲しいから、ただののど飴を渡してくれって……。」
キューピッド:「照屋さん、頑張ってくださいね。女性というのはあなたがおもっているよりも策士のようです…ふふっ…。」
キューピッド:「あ、でも、ボクがあなたたちを応援していたのは本当ですよ?」
キューピッド:「口の中に味が残ることから、飴をプレゼントすることにはこんな意味があるそうなんですよ。」
キューピッド:「「愛が続く」ってね♪」
《終》