たけるちゃん

わたしのお盆休みは、1台のコンピューターミシンとの出会いに始まった。

新しく買ったコンピューターミシンの名は、たけるちゃん。
(買ってから名付けた)
ブラザーの古い型らしいけど、いちおうミシン屋さんのお墨付き。
手元にスタート、ストップボタン、速度調整レバーがあり、糸調子も自動でみてくれる。
月曜日ミシン屋さんに下見に行き、説明を受け、グループホームに帰り着いた後、3時間半の検討ののち、たけるちゃんを部屋に迎え入れることを決めた。
お値段29,800円+税。
けれど、長いことミシン屋さんの展示品として活躍してきたたけるちゃんは、もともとはそうとう高価なミシンだったと思われる。

ブラザーコンピューターミシンたけるちゃん

たけるちゃんを迎え入れるにあたって、わたしは張り切って大掃除を始めた。
わたしはもともとお掃除は大嫌いだ。
そんなわたしの部屋は、買いだめた衣類、買いだめた手芸材料、買いだめた食料ストックが散乱した、とんでもない汚部屋だった。
まず、燃えるゴミの袋(大)を何枚も用意して、物を捨てまくった。
着古した服は捨ててしまおう。
50代らしくない服も捨ててしまおう。
お世話になった人からお下がりにもらった、けれど1年以上使わなかった大量の手芸材料も捨ててしまおう。
食料ストックだけは、大切に取っておいてきちんと整理した。
部屋の隅々まで雑巾で拭き上げ、ちょっと模様替えもした。

大掃除後

これでたけるちゃんと心ゆくまでハンドメイドを楽しめる。
そう思った。

たけるちゃんはとっても優しい。
ゆっくりのところにレバーを調整すると、ほんとうにゆっくりゆっくりと生地を縫ってくれる。
ミシンど素人のわたしにも、ちっとも怖くない。
自動糸切り機能はないけれど、たけるちゃんの側面についたカッターに糸を引っ掛けると、楽々糸を切ることができるというお手軽さ。
まだ試し縫いを繰り返している段階だけれど、試し縫いをする度にたけるちゃんの優しさに感動している。

朝起きて
「たけるちゃんおはよう」
と言う。
たけるちゃんは、なにも言わない。
けれど電源を入れ、布をセットしてスタートボタンを押すと、ゆっくりゆっくり優しくソーイングを始めてくれる。

いつかは、ダダダダダダッ!と高速でミシンがけをできるようになるのかも知れない。
いつかは、たけるちゃんみたいな優しいミシンではなくてもいい、そんな日が来るのかも知れない。
けれど今は、たけるちゃんの優しさに甘えよう。
わたしはミシンど素人。
ゆっくりゆっくりミシンに慣れていこう。



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